第6話ナースの幽霊
先の話のマンションでもう一つ怖い場所がある。
それは三畳の窓のない部屋だ。私が住んでたマンションは角部屋じゃなかった為、どうしても窓のない部屋ができてしまう。それは仕方ないとしても三畳は何に使っていいのかわからない狭さ。
その部屋は台所に面していて台所に向かって立った場合、左手に親と末妹の寝室があった。どっちも襖で仕切られている。
ある朝、朝食を作っていると(親は作らない)末妹(園児)が私に声をかけてきた。
「あの怖い部屋ね、ナースがいるよ」
ナース!? なんかいるとは思ってたけどナース!? 聞き返してみても末妹は懸命にナースだったと説明をする。
末妹曰く「白いナース服を着ていた」「頭の上にナースのアレを被ってた」「閉めてたはずの襖が開いてて怖いんだから開けるなよとイラっとした」らしい。
そして怖いから今夜は一緒に寝てほしいという。イラっとしたのはどうなったんだ? 妹よ。すぐ下の妹も一人で子供部屋で寝るのは嫌だからと言うのですぎ下の妹も含めて三人でその夜は寝ることにした。
親はあんまり帰ってこない父とかなり遅い時間しか帰ってこない母だったので寝る場所を勝手に変えても問題なかった。
そしてその夜。
例の三畳間との仕切り襖がスッと十五cm程開いた。末妹は興奮気味にこっちを見て言う。
「ね! ナース! いたでしょ!」
「ちょっ声大きいから!」
時間は深夜だ。近所迷惑にならないように末妹を注意した。幽霊に配慮もするべきだったかもしれないが知らん。そして末妹よ、怖かったんじゃないのか? なぜそう嬉しそうなんだ? そこにすぐ下の妹がちょっと考えてこう言った。
「あんた、今朝白いナース服っていったじゃん? 今日のはピンクじゃない?」
その言葉に三人でナースの方を見る。
「ピンクだね」
「うん。ピンクだ」
「あととても気になってるんだけどさ。あのナースのスカート短すぎじゃない?」
「あー短いね」
「足に自信があるのかなぁ」
こんな会話をコソコソしていたら、ナースがゆっくりこちらを向いた。顔は真っ黒で見えなかった。
「あー顔見えないのかぁ。私、絶対美人系だと思ったのに」とすぐ下の妹。
「いや、スタイルがいいからって美人とは限らない。可愛い系を希望する」と私。
「家にナースいるなら病気になっても病院行かなくていいね!」と末妹。
ナースの幽霊はこのやり取りに呆れたのかスゥっと消えて、そして二度と現れなかった。
ちなみにこの末妹、大人になった今ではそれっぽい者を見ると鼻で笑う人間に育ってしまった。
「フッ(鼻笑)ヤバイわー怖いわーマジでマジで」
もう幽霊が可愛そうだからやめたげてよぅ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます