第4話こっくりさん
小学六年の頃だったと思う。
当時、女子の中で『こっくりさん』が一大ブームだった。
不思議なことにオカルト的なことに興味なさそうなイメージの男子顔負けな活発女子の方が夢中になっていた。
毎日昼休みといわず放課後といわずいくつものグループに別れて『こっくりさん』をやっている光景が日常なくらいだった。
ちなみに私は興味無し……というか、終わった後の後始末の手順等が面倒くさいのでやらない子だった。
もうすぐ夏休みという時期に『こっくりさん』にハマっている女子グループから全員に通達があった。
「暗くなってからやろう! どうせだから皆で!」ということらしい。
私のクラスは女子男子共に十五人ずつ。
そして今回ハマっている女子グループはクラスの中でもボスグループ。
興味ないグループもなるべく揉め事はおこしたくなくて「見ているだけなら」と承諾した。
まぁこれは仕方ない。子供の少ない地域だったので、中学も皆同じ学校に通うのが決定している。露骨ないじめはなかったとはいえ、ボスグループを敵にまわすのは何かと面倒なのだ。
そして迎えた放課後。
夕日が教室を照らし出した時間から『こっくりさん』が始まる。
私も初めてマジマジと見たが、十円玉が動くことよりも『こっくりさん』に対する質問の内容のレベルの低さの方に驚いていた。
おそらく私の考え方が子供らしくないのだろうが、とにかく質問がしょーもない。正直心の中で「私がこっくりさんなら相手にしたくないな」と思った程だ。だが、『こっくりさん』はまじめに答えてくれている。なんて優しいんだ『こっくりさん』!!
そうこうしている内に外は真っ暗。雰囲気だけは抜群。盛り上がっているハマってる子達。
私は窓際の席に座って、「早く帰りたいなぁ」なんて思っていた。
その時、ふと教室内に違和感を感じた。背中がゾワゾワする。
以前も書いたが、私は霊感はない。だが直感だけには自信を持っている。
その直感が私に言う。
「上だ! 廊下側の上段の窓ガラスだ!」
直感に従い廊下側上段の窓ガラスを見ると、教室の蛍光灯がユラユラと揺れているのが映っていた。もちろん蛍光灯自体は動いていないのにだ。
元々早く帰りたいと思っていた私は、状況を整理し穏便に後に禍根を残さない帰宅方法を考えた。考えがまとまった。後は実行に移すのみ!
「なぁ、蛍光灯は揺れてないのに窓ガラスに映っている蛍光灯が揺れてるのはなぜだろう?」
この一言だ。この一言を聞いて皆が私の指差した窓ガラスを見た。これで「怖いから帰ろう」の流れになるはずだ。……と思ったのは甘かった。
「ぎゃああああああああああああ!!」
教室内は混乱、飛び交う悲鳴、我先にと教室を飛び出すクラスメイト。なんと、私一人がポツンと残されてしまったのだ。
相変わらず窓ガラスに映っている蛍光灯は揺れている。
ああ、そうか。クラスメイトの取ったリアクションが正しいのか。
揺れてるだけで特に問題ないと思っていた私は、仕方なく途中で放り出された儀式用の紙やらなんやらを片付けて、戸締りをして、鍵を用務員室に返しに行って、用務員さんに怒られて、やっと帰路につけた。
幽霊の立場からしたら驚いてくれた方が嬉しいだろうし、なんか悪いことしたなと思った。
……
……
あれ? うちの学校の七不思議もしかしてまた増えたのか?
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