第3話青白い腕
あれは確か私が小学2年生だった頃。
当時の家は狭くて寝室は家族全員一緒。私が窓際のベッドで寝て、ベッド側を枕にして母と妹。
その日は月明かりが眩しくてとても寝辛かった。母と妹の寝ている布団には丁度月明かりが当たらない。
さてそろそろ寝ますよと母が電気を消して各々布団に入る。すると妹が手を伸ばしてきた。
「おやすみの握手して!」
伸ばされた手だけが月明かりに照らされてハッキリ見えた。「はいはい」と返事をしながら握手してやると妹の隣に寝た母まで「私も!」と言い出した。
いちいち突っ込むのも面倒だったので「はいはい」と同じように握手した。そうすると妹が「私も! もう一回!」と手を伸ばす。同様に母もだ。
これいつまで続ければいいんだ?と思っていると暗がりの中スッと腕が伸びてきた。
手の大きさからいって妹ではなかったので、きっと母だろうと思い手を握った。
その瞬間ゾワッとした。
異様に手が冷たい。そしてやたら青白い。何より細くか細い女性の手だった。
私は心の中で思った。
「うわー……知らない人の手だったよ……」
そう思った時、急にその青白く冷たい手が私の手を握り締め強い力で引っ張った。
私は霊感はない。だが、直感なら人一倍だ。その直感が私に言う。「これは挑戦状だ」と「負けてはならん」と。
私は発育がよかった。小学二年生にして六年生の体格を持っていた。こんな青白くか細い腕に力で負けるはずはない。そう考えた私は直感に従い、引っ張り返した。
『このまま本体を月明かりの元に晒してくれるわぁぁぁぁ!!』
心の中でそう叫んだ私が渾身の力で引っ張ると相手の握る力がスッと抜けて私の手の中からスルリと逃げていった。
そして暗闇の中からこれまたか細い声が……。
「……ごめんなさい……」
「え、あっ……こちらこそ、あの……ごめん……」
思わず謝り返してしまった。
なんかすごく気まずい夜だった。
妹と母は寝ていた。
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