第2話渡り廊下の幽霊

 私の母は地区のママさんバレーに参加していた。

 練習は夜七時から九時。場所はうちの小学校の体育館。

 あの七不思議が八つあるあの小学校。もちろん子供達も連れて行かれる。家で留守番させるより連れて行って皆で遊ばせておく方が安心だからだ。

 ちなみに私は体格が大きかったせいか、人数が足りない時はママさんバレーに参加させられていた。


 その日も遅れてくるメンバーの代わりにチームに入って一汗流した。やっとメンバーのおばちゃんがきて交代。疲れたので体育館の外に出てボケーっと座っていた。


 体育館を背にして座っている私から見て右手側に低学年校舎。左手側に高学年校舎。そして二つの校舎を繋ぐ渡り廊下が真正面。何しろ古い校舎なので渡り廊下の明かりなんて裸電球だった。

 その裸電球がふいに点灯した。


 あれ? 用務員さんの見回り時間かな?


 それくらいの気持ちで見ていると渡り廊下の右からスーっと移動する人影。

 でも、なんかおかしい。用務員さんはおじさんだったはずなのにどうも女性に見える。よくよく見てみると日本髪を結って和服を着た女性だった。その影がスーッと滑るように右から左へ移動している。思わず固まって見ていたら渡り廊下の中央付近であちらも私に気がついたようだ。

 ゆっくりと黒い影がこちらに顔を向けた。そして私はなんとなく会釈をした。そうしたらあちらもなんとなく会釈をした。

 微妙な間の後、その女性の影は左の高学年校舎へと消えていった。


 ……

 ……


 七不思議、八つどころか九つ目があったことの方が幽霊を見たことより衝撃だった。

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