現実なんてこんなもん

ひさよし はじめ

第1話学校の七不思議

 私が通っていた小学校は戦前から尋常小学校として存在していた。

 製鉄の町であった為、戦時中は空襲も多く焼夷弾がばら撒かれ、当時は悲惨だったらしい。

 防空壕跡や防空壕で亡くなった方々の慰霊碑も普通に近所にあったくらい。

 その為、俗にいう「学校の七不思議」というものも変わった話だった。


 ① 低学年用校舎の一階の廊下には、身元のわからないご遺体が並べられ遺族が探しにきていた。だが、ご遺族も亡くなられている場合もあり多くのご遺体が無縁仏として葬られた。その為、その廊下では夜な夜な無縁仏となった霊が家族を探してうろつく。

 ② 校舎内のどこかに隠し部屋があり、その隠し部屋から地下の防空壕に避難出来るようになっていて今でもそこはそのまま残っている。

 ③ 一年生用のトイレには焼夷弾で焼かれた女の子の霊が出る。

 ④ 子供を亡くした母親が高学年用トイレに現れ、我が子と間違えられたらあの世に連れて行かれる。

 ⑤ 教室の床が板張りだったんだが、床板の節穴を覗いてはいけない。なぜなら向こうからもこちらを覗き込んでいる目が見えるから。

 ⑥ 夜中の理科実験室に入ると人体模型が爆弾で体が半分吹き飛んだ子供になっている。

 ⑦ 夜中の校舎を防空頭巾をかぶった男の子が走り回る。その子の名前は「哀 飢男(あいうえお)くん」


 とまぁこんな感じだったんだが、一番怖いのはうちの小学校の「七不思議」が実は「八つ」あることなんだ。

 しかも八つ目はこうだ。


 ⑧ 夜中の音楽室でベートーベンの肖像画が笑う。


 ……

 ……

 八つ目……必要か……?八つ目だけベタすぎないか?

 そしてまさかのうちの小学校の音楽室には、ベートーベンどころか誰の肖像画も飾ってなかったという事実。


 どうして八つ目があるのかが最大の七不思議。

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