万華鏡の詩





信号が、青になってころころと転がる無数の影に、心臓を絡めとられ動けない僕を、彼女は赤に染まった瞳で見つめている。


間違っていると言えないのは、きっと心臓を撫でているナイフのせいで、

間違っていくことを許したのは、廻転していく快感と、酩酊。彼女につけた傷口の赤は容易に僕を飲み込んで、それは麻酔薬だった。



ねぇ、わたし、


「あなたの、毒がほしい」



それは、麻酔薬。



陶酔、マニキュアの下にあるはずの色を思い出すことはなく、耽溺、チョコレートが溶け出すように、何も考えていないふりをして、これが、あいだ、と、ひたすらに残像が叫んでいる。













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