春琴の詩





自分の欠陥を愛してくれる人が怖かった。近づくな、関わるな、俺はお前とは違う存在だ、とはっきり言われて傷つきたい。君の弾く三味線の音に憎しみがひとつも感じられないから、わたしは君の目を抉りたくなる。春の匂いが唯一わたしを溶かしてくれた。


闇のなかにいれば、永遠に少しだけ触れられる気がしたのに。ただあなたさえいればいいと、いや、もうあなたさえいらないと言われている。気配の感じない空だけが救いで、君が必死に美術品を愛でていたのを許すことはきっと愛でもなんでもない。雲雀の声は遠いままだった。









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る