朝靄の詩




冬の朝、吐く息の白さにかすかに感じた死の気配が、場違いな日の光に透かされて、色をうばわれていた。なんとかなるから、いきて、という暴力にあてられて真夜中、電灯の無機質な光さえ、わたしをうつすことはない。だれかが携帯を開くたび、夜空から、星がひとつ消えていく。「世界はまるで透明な花のようだ」と君がいった日、みんなは、落ちていく花びらには目もくれず、雲をちぎっては食べていたからきっと、この世に世界平和なんてものはない。


水の致死量がどれほどか知らず、君もわたしも一滴の水に溺れていてそれでも、彼は早起きして見た朝焼けが綺麗だったということだけでは死ねないらしいね。どうでもいいことをどうでもいいように語る君が羨ましくて、今日も誰かの真似をして綺麗な空の写真を撮る自分が気持ち悪いような、春、きっと世界破滅を望んでいる。








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