第161話 なんだ、こいつ?
はぁ? 違う世界からだと?
異世界転移って意味か?
冗談は休み休み言え。
確かに異世界が存在している事は知っているがそんなこと全盛期の俺はおろか母さんが本気を出したとしても不可能だ。
それを目の前にいる2人のどちらかが行ったと?
はは、面白い冗談だ。
「で、本当は?」
「いえ、ですから私達は異世界からやってきたのです。レナザード様の天翅の始祖魔法【異界転移門】を使って」
まるで真実を語る様に話すクロナにアルジールではないが俺もそろそろ我慢の限界に達しそうだ。
ここで「知らない女の子に無理やり飛ばされて来たんですぅ~」とでも涙ながらに言えばまだ俺も納得できたかもしれない。
なぜなら俺はそれをやれそうな人物に唯一心当たりがあったからだ。
それをそこの偉そうなだけで覇気も何もない男がやったって?
試しに俺は意識してレナザードと呼ばれる男の魔力感知を行ってみるが、やはり男の魔力は0とは言わないが、並のF級冒険者にすら劣る程度のもしか持ってはいなかった。
恐らくシステアが普段使っている通常の転移門どころかファイヤーボールすらまともに撃てないだろう。
ていうか【天使の始祖魔法】?
そんなものは聞いた事がない。
始祖魔法というのもよく分からんが天使ってのはユリウスんとこに襲撃した時に何体か出てきた白い羽を生やしたアレらの事だろうか?
(そういや母さんは始祖竜とか言われてるな)
そう考えたら始祖天使やら始祖悪魔やら始祖エルフやらがいてもおかしくはないが、まぁ少なくても目の前のクロナとレナザードとは関係のないことだろう。
魔力うんぬん以前にレナザードの容姿はユリウスの所で見た天使とは似ても似つかないのだから。
「まぁとりあえずそこはいいわ。——で俺に聞きたい事って?」
そうは言ったが、別にどうでもいいという意味ではない。
あとでしっかりと聞き出すつもりだが、まずは話を先に進めようという意味で俺はクロナに先を促した。
するとクロナは驚くべき言葉を口にする。
「始祖竜フィーリーア様を知っていますか?」
「……は? なんて?」
俺としたことがどうやら聞き間違えたらしい。
何やら聞きなれた名を口走った気がするが恐らく気のせいだろう。
だが、俺の再度の問いかけにクロナははっきりとその名を口にした。
「始祖竜フィーリーア様です。所在をご存知でしたら教えて頂きたいのです」
どうやら気のせいではなかったようだ。
(こいつなんで母さんの名前を知ってる?)
人間界はもちろんだが、魔界でもフィーリーアという名を知る者は少ない。——というか多分いない。
人間界では主に聖竜様と呼ばれているし、魔界での呼び名は始祖竜か単に巨竜などと呼ばれる事が大半だ。
フィーリーア自身別に名を隠しているわけではないのだろうが、単に実際に目にする者が少ない上に名を名乗る事がほぼないのでそういうことになっている。
ここはどう答えるべきだろうか。
シラを切るのは簡単だが……。
俺は思わず周囲を確認する。
魔力感知によって既に俺達の会話が聞こえる位置に人がいない事は確認済みだが念のためにだ。
「なんでお前らがかあ——フィーリーアさんの名前を知っている? 何が目的だ?」
「フィーリーア様を知っているのですか?」
俺の言葉にクロナが驚いたように目を見開き、レナザードという男はクロナ以上の驚きの表情で俺を見ている。
「……まさか本当に知っていたか。クロナの慎重さも馬鹿にはできないな」
なぜかこれまでクロナに任せきりだったレナザードがクロナの前に出る。
「さぁ教えてもらおうかリアが今どこにいるのかをな」
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