第160話 異世界からの来訪者
「面倒な事になったな」
俺の宣言を聞いたレナザードが煩わしそうにそう呟いてるが、それはこっちのセリフである。
そんなレナザードの横では俺の力を測っているのかクロナという女が俺を観察するような視線を向けている。
「初めまして、勇者クドウ。私の名はクロナ。私達は貴方に聞きたい事があってここまでやってきました。すいませんが剣を収めてくれませんか?」
「は? 俺に? ならなんでアリアスさん達やアールを攻撃したんだ?」
この期に及んでなめた事を抜かすクロナに俺はすぐさま聞き返す。
こっちは既に3人やられている。
俺相手に分が悪いと悟って下手に出てきたというのなら俺は容赦する気など毛頭ない。
そんな俺の思いを他所にクロナは更に弁明を続ける。
「誤解です。勇者アリアスは私の事をミッキーという魔人と人違いをしていて私達の話に聞く耳を持ちませんでした。仕方なく私が勇者アリアスの意識を絶った所で勇者アールがやってきてそれで仕方なく……」
確かにシステアとアリアスはミッキーの事を見たことがないはずなので強い魔人がやってきたら、ミッキーと勘違いしてしまうのはありえそうだし、アルジールに至っては大した理由がなくても喧嘩を吹っ掛けそうなのは理解できる。
「あぁ、確かにアンタはミッキーじゃない」
そんなものは一目で分かる。
俺はアルジールのように名前も顔も覚えないポンコツではないからな。
そもそもブリガンティスやアルレイラならともかくとして会議すら平気で欠席するあのミッキーがわざわざこんな所までやってくるわけがないし。
「じゃあアンタは誰なんだ?」
もちろん目の前の女の名がクロナだという事は知っている。
俺が聞きたいのはどこからやってきたどこの誰かという話である。
少なくても俺の魔王だった時の配下にクロナとレナザードという者はいない。
末端の名まで全てを覚えているわけではないが、力を制限されているとはいえアルジールを倒す程の魔人の名を覚えていないわけがない。
つまり目の前にいるクロナという女は正体不明の未知の強者であり、本当の事を言っているとも定かではないやつに仲間をやられて黙っているほど俺は大人ではない。
「いえ、ですからクロナと——」
「あー、分からないやつだな。アンタの名前なんてどうだっていいんだ。俺が聞きたいのはアンタらがどこからやってきたかって事だ。あとアンタら結局魔人ってことでいいんだよな? フードで特徴が掴みつらいが見た事ない種族なんだけど」
正確に言えばこの世界では見た事がないというのが正しい。
俺の知識に当てはめればクロナとレナザードの身体的特徴を持つ種族は存在することは存在する。
だが、その種族はこの世界には存在はずの種族なのだ。
俺がこの世界に転生するよりも前にその種族はこの世界から姿を消してしまったのだから。
すると俺の質問にすぐに答えず、クロナはなにやらレナザードと相談をし始めた。
本当の事を言うか主であるレナザードに確認を取っているのだろう。
この期に及んでよくそんな態度に出れるなと俺はある意味感心しつつ、仕方ないのでそのまま少し待つことにした。
1分もしない内に結論が出たのかクロナは再度俺に向き直る。
「他言無用でお願いできますか?」
「あぁ」
俺がそう答えると、次に出てきたクロナの言葉は予想だにしないものだった。
「私達はこことは違う世界からやってきました」
「は?」
思わぬ言葉に俺の頭が一瞬フリーズするが、すぐに俺は確信した。
——あぁ、なめてんなコイツと。
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