第140話 破壊の跡とフィーリーアの所在

レナザードとクロナは遠くに見える街に向けて歩いていた。


まだ数キロほどはありそうだったが、このペースで歩けば10数分もあれば町につくはずだ。


クロナは歩きながらふと街道の脇を見てレナザードに聞こえる声で呟いた。



「やはりこちらで正解だったようですね」



レナザードはクロナの見ている視線の先を見るとクロナの言葉の意図をすぐ理解した。



「確かにリアがいたようだ」



レナザードとクロナの視線の先には魔法によるものだと思われる凄まじいまでの破壊の跡が直線状に遥か彼方へと続いていた。



「竜星砲か。こんな町スレスレであんな規格外な魔法を放つとは。かなり手加減して放ったようだが、このような人間の町で何があったというのだ」



破壊の痕跡からレナザードはすぐにフィーリーアが戦闘時に好んで使用している第一級魔法竜星砲によるものだと断定する。


好んで使用するとは言ってもあくまで戦闘時の話だ。


そもそもフィーリーアに正面から挑んで戦闘らしき戦闘ができる者などほとんどいない。


つまり遠くに見えるあの町でフィーリーアに竜星砲を使わせるほどの何かがあったということになる。



「ザラス様と喧嘩でもしたのでは?」



「バカを言うな。あの2人がぶつかればあの町どころではなくこの周囲一帯更地になっている」



実際やろうと思えばフィーリーア1人でもこの周囲を更地にするには1分もかからないだろう。


それ程までにあの2人の攻撃力は途轍もなく、喧嘩をするにも場所を選ばないといけない程だった。



「まぁ行けば分かるだろう。話を聞ける者が残っていればいいが」



レナザードとクロナはそんな会話をしながら更に歩くと、町の様子が見える位置までやってきた。


外から見える範囲でも民家の屋根が吹き飛んだり、ガラスが散乱している様子が見て取れる。



「嵐の後のようですね。まぁこの程度の被害で済んでいることが奇跡と言ってもいいくらいですが」



仮にフィーリーアの攻撃の直撃を一発でも受けていたらこの程度では済むはずがない。


恐らくは竜形態のフィーリーアが少し暴れた際の風圧などによる被害だとレナザードは考えた。


直接町を攻撃していないのだとしたらフィーリーアの目的が分からない。



「リアは何のために町にやってきたのだ?」



そんなレナザードのふと呟いた疑問にクロナは疑問で返す。



「そもそもフィーリーア様はどこに住んでいるのでしょうか? この近くでしょうか?」



「それだと助かるが、リアに距離などあまり関係ないからな。魔界という可能性もある」



「魔界ですか……。それはここから遠いのでしょうか?」



「さぁな。まぁそれを含めて聞き込みをしろ。私は絶対にやらんからな」



人任せなレナザードの言葉にクロナは溜息を吐きながら、2人はシラルークへと入って行くのだった。 

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