第134話 システアの秘密3
「それでなぜ今頃になってこの話をするつもりになったのですか?」
システアがこれまでこの話をニアとガランに説明してこなかった理由は簡単に想像がついた。
1つは情報の漏洩。
いくら同じパーティーの仲間とはいえ、どこから情報が洩れるかなど分からないのだ。
一度システアが半魔人のハーフエルフだという事が露見してしまえば人間界での活動が著しく困難となるのは必至であった。
そして2つ目はパーティーと組んだ初期の段階でシステアがハーフエルフの半魔人なのだとニアとガランに説明したとしてもそれを受け入れてくれなかった可能性が高かったからである。
人間と魔人はこれまで長きに渡って争い続けてきた歴史がある。
しかも、今では普通に暮らしている人類だがこれまでの歴史の大半は圧倒的な力を持つ魔人達に虐げられてきたという事実があった。
それがあって人間の魔人に対する嫌悪感と警戒心は尋常ではないものがあるのだ。
そのためたとえ勇者であるアリアスがどれだけ丁寧に説明したとしてもシステアの血に半分魔人の血が入っていると知れば仲間として認める事はなかっただろう。
だが、2年近くもの間パーティーを組み、システアの人となりを知った今ならば——。
「今ならば、真実を知ってもわしを仲間だと受け入れてくれると思ったのじゃ。……どうじゃ? 話を聞いてわしを軽蔑したか?」
システアがガランとニアを見渡したが、2人に表情には一切の軽蔑も恐れもなかった。
「私達はもう仲間です。システアさんが魔人だろうとハーフエルフだろうと関係ありません! ねっ! ガラン!」
「えっ? まぁそうっすね。ていうか今システアさんに抜けられると戦闘の負担が凄い事になりそ……って嘘っす嘘。システアさんは大事な仲間っす。うん」
ニアから凄い視線を向けられ、ガランはそう言いなおす。
捉え方は違っても、2人にとってシステアがハーフエルフということが仲間として受け入れられないということがないと分かりアリアスとシステアは安堵した。
「それはよかった。それでな、今になってこの話をお前達に話したのは他にも理由があるのじゃ」
「『魔王』……。クドウさん達が出てきたからですね?」
「察しがいいの。そうじゃ。クドウさんがいる今の人間界の戦力ならばわしの目的が達成できると思ったからなのじゃ」
その目的のためにシステアは森の奥に籠り、たった一人で魔法の研究を続けてきた。
そして2年程前、パーティー勧誘の為にシステアが住む森の奥地に来たアリアスと出会った。
それまでは全ての勧誘を断っていたシステアだったが、アリアスならば魔界の四天王にも対抗しうる第一級魔法を習得できる可能性があると感じ、長年過ごした森を出る事を決意して、アリアスと共に勇者パーティー『光の剣』を作った。
そして、更に2年経った昨日、システアはクドウと出会ったのだ。
魔王が死に魔人が侵攻してきたと知らされ、特に期待もせずやってきたこのシラルークの冒険者協会支部での衝撃はアリアスと出会った時以上のものだった。
だが、クドウの活躍はその時の衝撃すらも遥かに超えるものだった。
侵攻してきた魔人ゾデュス率いる20もの魔人の半数をいとも簡単に撃破し、シラルークに帰還したその足で3神ユリウスを助ける為に伝説に謳われる聖竜に戦いを挑んだ。
クドウ本人は説得していただけと言っていたが、荒ぶる聖竜から一度も攻撃を受けることなく説得する事など不可能に近いはずである。
それでもクドウは聖竜との戦いを終えてもなお大きな傷を負う事すらなく帰還を果たした。
あの時のクドウの笑顔を見た時にシステアは確信したのである。
——『魔王』と『光の剣』の力を合わせれば、母シルベリアの仇を討てる。と
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