第42話 魔王が欲した物
兄ゾデュスの発言にガデュスは固まっていた。
そんな馬鹿な、と思いつつももしかしたら……。そんな心境だ。
「言ったろ、俺の情報網を舐めるなよと」
ゾデュスはそう言うが、ガデュスは未だ納得しきれていなかった。
「いやいやいや、あんなのがどうやったら同時に死ぬんだよ。第一級魔法でもピンピンしてる化け物だぜぇ~?」
魔王ギラスマティアどころか魔人アルジールを殺す存在すら魔界にはほとんど存在しない。
可能性があるとしたら魔人ブリガンティスくらいのものだが、いくら魔人ブリガンティスでも魔王に勝つことなど不可能である。絶対にだ。
自然災害、事故。それもない。
あの二人は雷に打たれようが、崖から自然落下しようがケガ一つ負うことはない。
病気? 何それ? おいしいの?
そもそもある程度上位の魔人は病気にかからない。そんなものにかかるような存在が1000年以上も生きるわけがないのだから当然と言えば当然である。
ガデュスですら風邪一つ引いたことすらないのだからありえない。
「ふふふ、知ってるか? ガデュス。魔王は生前あるものをしきりに欲していたらしい」
「えっ、聞いたことないけどぉ~?」
ガデュスがそう言うとゾデュスは溜めに溜めた後、自慢げに言った。
「それはな、ガデュス。——神ユリウスの命だ!」
「えっ、まじぃ~?」
魔王ギラスマティアはキチガイだったのだろうか。いくら化け物じみた力を持っているとはいえ、わざわざ3神の一人である神ユリウスの命を狙う意味が分からない。
魔王軍に積極的に敵対していたのならばまだ分かるが、神ユリウスが魔人に敵対行動を取ったことをガデュスは聞いたことがなかった。
だが、確かに3神の1人神ユリウスならば魔王ギラスマティアを殺すことも可能かもしれない。
「聞いたところによるとだな、ここ最近の魔王ギラスマティアは古参の魔人に「神ってどこ行ったら会えんの?」とよく尋ねていたらしい。やつは自分の力に驕って遂には神に手を出した。そして敗けたんだ。側近である魔人アルジールと共にな!」
「えっ、アホじゃん」
ガデュスは既にゾデュスの話を完全に信じ切っていた。そうでなければ、いくら周りに気配がないとしてもアホなどという発言は決してしない。
仮に聞かれているような事があればガデュスの命など魔王ギラスマティアの気まぐれ一つで簡単に消し飛ぶのだ。
「そうだ、あいつはアホだ。脳筋だった歴代の軍団長達と同じだったというわけだ。それと今回既にブリガンティス様から既に指令が下っている。——人間界を蹂躙しろとな!」
「えっ、マジ? ブリガンティス様、本気の本気ぃ~?」
「そうだ! 本気の本気だ! ちなみにブリガンティス様が魔王になった暁には今回の人間界侵攻の立役者として俺を魔王軍四天王に昇格させてくれるとの事だ。お前は軍団長だ」
魔王ともなれば四天王の任命など自由自在である。仮に実力が伴っていなかったとしても魔王に口を出せる者などいるはずもない。
「マジかよ! すげぇ~! あ、できれば俺も四天王がいいかもぉ?」
「お前は欲深い奴だな! まぁいい。成功したら俺からブリガンティス様に話してやる! なんせ俺は魔王軍四天王ゾデュスだからな?」
2人は今後の未来を予想し、大いに笑い声を上げたのだった。
少しして笑い止んだゾデュスが思い出したようにガデュスに言った。
「あ、そういや、お前の事を散々馬鹿にしていたアルメイヤも消えたらしいぞ?」
「え、マジィ~? 結構いい女だったんだけどなぁ~」
「……お前の趣味が分からん。あんな凶暴なトカゲ女のどこがいいんだ?」
ゾデュスはアルメイヤの事を思い出しつつ、弟ガデュスの女の趣味の悪さにちょっと心配になるが、所詮もういない女かと考えることを止めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます