第2話 75点じゃ美形勇者は名乗れない

「いってぇ」


頭が痛い。転生の副作用だろうか?


少しの間、眠っていたみたいだ。



「どこだ? ここ」



知らない森の中だった。だが、強力な魔獣の気配はない。少なくても魔界ではなさそうだ。



「うーん、体縮んでるな。何歳くらいだろ?」



神からは転生アイテムと聞いていたが、必ずしも赤ん坊として生まれるわけではないと聞いて不思議に思ったものだが、神が自分に都合よく作ったものだろうし、そんなものか。


俺は異次元空間に手を突っ込む。どうやら人間でも異次元空間には手を突っ込めるようだ。


魔人だった頃は子供の時でも突っ込めていたので、それほどおかしくもない。


まぁ他で使ってるやつは見たことないが。


俺は手鏡を引っ張り出すと、自分の顔を写した。



「うーん、75点」



年齢ではなく顔の自己評価である。ちなみに年齢は15歳くらいに見える。


とまぁ、自分の事はそれくらいにしておいて——



「おーい、起きろー。 朝だぞー」



俺は横にうつむけに倒れていたアルジールらしき人物を揺する。



「う、うーん」



アルジールらしき人物は唸るがまだ起きない。俺でも副作用で頭痛がするくらいだ。


もしかして、死んだ?


そうか、悪いことをしてしまった。



「アルジールよ、君の事は忘れない。さらばだ」



そういって、俺はその場から去ろうとすると



「はっ!」



アルジールが息を吹き返した。


っていうか、お前その顔……。



「おはようございます。魔王様」



「やはりお前を連れてくるべきではなかったんだ、見てみろ」



そう言って俺は持っていた手鏡を手渡すとアルジールは自分の顔を覗き込むと、顔をしかめた。



「覚悟はしておりましたが、醜いものですね」



アルジールは覚悟していたが、自身が今まで見下していた醜い人間の顔に変わっていてショックを受けていた。



「何がショックを受けていた。だ! 超美形じゃねぇか!」



そう、超がつく美形なのだ。98点である。ほぼほぼ99点寄りの。


ちなみに俺が100点をつけることなどあらゆる分野でそうそうない。



「美しい? この少し殴ったくらいで折れてしまいそうなスッとした顎に弱点だらけのこの大きな瞳がですか? それに髪は漆黒に限ります。こんなキラキラとした金色では……」



わざとか? わざとなのか?



元とはいえ魔王の中の魔王であった俺が75点で四天王が98点では納得がいかない。


そもそも転生前はそこまでの差はなかったはずだ。


神のやつ、負けた仕返しにこんな仕打ちをしやがったんだ。そうに違いない。



「はぁー、美形勇者計画早くも潰えたか……」



そもそも不細工ではないが75点では美形とは言いづらい。かっこよく見えなくもないがまぁ普通。それが75点なのだ。



「……さて、いくか」



立ち上がる俺にアルジールは尋ねた。



「どこにですか? 魔王様」



これだから素人は。決まっている。



「始まりの街だよ!」



名も知らない始まりの街に向かう前にやる事がある。


装備の変更である。


今、俺とアルジールがつけている装備はそんじょそこらの装備ではない。勇者パーティー顔負け所か勇者パーティー装備が初心者装備にすら見える超ど級の1級品揃いなのだ。


あ、アルジールのはそうでもないか。


とはいえ勇者パーティー装備顔負けな事には違いはない。


そんな装備のまま始まりの街なんぞに向かえば、目立って仕方がない。


というわけで俺はまた異次元空間に手を突っ込む。



「ここらへんのやつは魔法の効果ついてないからサイズ調整利かないんだよなっと」



俺は初心者感丸出しの装備一式を2組取り出した。あらかじめしょぼい装備をこの時の為に数種類サイズ毎に用意しておいたのだ。



「さーて、着替えるぞ」



アルジールは少し不可解そうだが、俺の指示ということで大人しく応じた。


数分で着替え終わり、元々の装備が異次元空間に放り込んだ。



「うん、様になってるじゃないか」



本当は少しでも点数を下げようとダサい装備をアルジールに与えようかとも思ったが、75点の俺が普通初心者装備で、98点アルジールがキモダサ初心者装備だとかなり目立ちそうなのでやめておいた。


準備も済んだので俺たちは始まりの街に向かうことにした。


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