第11話

 次の日、私は担任の先生と話をして、校長室にいる警察の人と話がしたいとお願いをした。先生はすぐに連絡をしてくれて会うことができた。

「明理、校長室に行くんでしょ。私も行きたいから一緒に行こ」と百希から言われて一緒に校長室に行く事になった。百希が何故一緒に校長室に行きたいと言ったのかはすぐに判ることとなった。

 校長室に入るといつものように、スーツ姿の人が二人と警察にジャンバーを着ている人が一人居た。この人たちは毎日毎日この校長室で何をしているのだろうか?本当に不思議だった。

「中沢明理さんと兼房百希さんですね。なにかお話したいと言うことですが、どんなことでしょうか?」

 スーツ姿の一人が話しかけてきた。この人もいつも同じで話し役となっている。もう一人のスーツの人は聞き役だ。

「家に不気味な手紙が送られて来たのです」私は封筒から便箋を取り出して、警察の人たちの前の机の上に置いた。ジャンバーの人は手紙を取り読み始めていて、スーツ姿の人たちと話を始めた。よく質問をしてくるスーツ姿の警察の人が私に質問を始めた。

「これを送ってきた送り主について何か判りましたか?」

「全然知らない人だと思います。この字も見たことが無いような字なので誰が送ってきたのかは判っていません」

 警察は手紙を机の上に置いた。そして百希がその手紙を手に取り読んでいた。

「入っていた便箋を見せていただけますか?」とスーツ姿の人に言われ、私は便箋を机の上に置いた。すぐにジャンバーの人が封筒を手に取り何か調べていた。

「消印が全く読めないな……」と残念そうに話して他のスーツ姿に見せていた。

 百希が私のところに来た手紙を机の上に置くと、百希は口を開いた。

「実は昨日、家に帰ると私のところにも封書が来ていました」そう言って封筒から便箋を取り出して机の上に置いた。

「ちょっと拝見」と言ってスーツ姿の人が手に取り文章を読み、他の人にも見せていた。

「内容が内容ですので、明理にも読ませてあげてくれませんか」と百希が言うと警察の人が私に手紙を渡してくれた。私がその手紙を手に取ると「明理、読んでみて」と言われ、私は百希に送られて来た手紙を読むことにした。


『百希さん、この手紙を手にしたと言うことはあなたの周りで事件や事故が起きて問題になっていることでしょう。そして明理さんの身に悪いことが起きるかもしれないと思っていることでしょう。それはあなたの思っている通りになります。百希さん、あなたは明理さんを守ってあげなくてはいけません。もうすぐこれから起きるだろうとされる問題に、あなたは明理さんと一緒に解決していかなくてはいけません。問題の解決のためには絶対に明理さんが必要なのです。だからあなたは明理さんを守っていくことが必要なのです。明理さんの身に大変なことがこれから起きていきます。あなたは絶対に明理さんを助けてあげてください。お願いします』


 手紙の内容を簡単にまとめると、『これから私の身になにか悪いことが起きる。事件解決のためには私が必要だから百希は私を助けること』

 どのような問題が起きるのか?それはいつに起きるのか?は何も書かれていない。悪いことが起きるということだけが書かれていた。

 この百希の手紙を読んでみての私の率直な感想なのだけど、いつ何が起きるのか。何処で起きるのかが全く判らないので、どのように助けたら良いのか全く判らない。ただ助けてあげなさいと言うだけでは助けようの無いように思う。

 私の手紙には『危険が来るから逃げろ』の一言だ。これも何が起きるのか判らないし、何処が安全なのか判らないし、安全な場所なんて無い様に思うのだから、逃げようにも逃げようが無い。

 百希の封筒の消印を見てもまったく読めなくなっていた。一つの手掛かりと言うか不思議なこととして、私と百希の封筒を見ると郵便番号が三桁になっている。普通の封筒の郵便番号のところには大きい四角が3つ並んでから小さい四角が4つ並んでいるはず、それなのに送られて来た封筒は大きい四角が3つで横棒があって、そして横棒の横に2つの四角がある。郵便番号のところに三桁二桁の合計五桁しか書くことが出来ないのだった。送られて来た手紙にはその大きな3つの四角に郵便番号が三桁書かれているだけだった。四角の印刷ミスの封筒?でも横棒で区切ってあるし、もしかしてどこかの国の封筒を使った?ということはこれって海外から送られて来た郵便?

「郵便番号が三桁だけっておかしいと思わない?」私がそう言うと百希は昔の封筒だろうと答えてくれた。「私達の産まれる前の両親の時代の封筒だと思う」昭和時代の封筒?何でそんなに古い封筒が送られてくるの?

「1998年2月2日に七桁の郵便番号が導入開始になって、七桁の郵便番号になってからはずっと私達の知っている七桁郵便番号になっているね。三桁や五桁番号はもう廃止されていてどこも使われていないよ。はがきも封筒も今のように四角が7つのものに変わったんだよ。だから五桁の封筒は何処にも売ってないと思うよ」

 それから百希の後を続けるように、ジャンバー姿が話をしてくれた。

「昔は郵便局ごとに番号があったんだよ。大手の郵便局なら三桁、小さい郵便局では三桁にもう二桁付け足して五桁になっていて、封筒やはがきに郵便局番号、つまり郵便番号を書く。郵便番号で区分けされその郵便局に届けられた郵便物は、さらにそこから送り先の住所を見て、その住所に郵便物を送って居たんだよ。それから改定され送り先の住所の町名に二桁の番号割り当てをして郵便番号を7桁にして、その郵便番号を見るだけで、どこの都道府県の何市の何町というところまで判るようにして、送り先の住所に郵便物を送れるようになった。スピーディーで正確にそして確実に郵便物が送れるようになって行ったんだよ。それから郵便物の電子管理が出来るようになっていったんだよね。判りやすく言うと郵便バーコードというものが出来たね」


 郵便物は本当に早く送ることが出来ると思う。今日送ったらもう明日には届いていることがある。七桁番号や電子管理とか、郵便のホームページを見ると郵便物が今現在、何処にあるのか追跡が出来るようにもなっていて、郵便の人たちの努力がとても便利な世の中にしてくれた。しかしそのようなものが出来る前の三桁郵便番号の封書が私と百希の家に届いていた。昔の封筒が残っていたからそれを使ったのだろうか?でも不思議なことがある。百希はもともと中区に住んでいて今の家は高校に入学したときに家を買って引越しをしたと言っていた。つまり今の住所は去年から使っていると言うことになる。古い手紙が確実に新しい住所に送られてきたのはとても不思議だ。そして書いてある内容は、これから起きるであろう未来のことが書かれている。そのことについて一体どういうことなのだろうか?

「警察で調べたいので封筒と便箋は預かっても良いかな?」と言われ、私と百希は持っている封筒や便箋を警察の人に渡した。ジャンバーの人がそれらを大切そうに手に取り、それらを別々にビニール袋に入れると、かばんの中に入れた。

「明理の身に何か悪いことが起きると書かれているので、明理の警備もお願いして良いですか」と百希は話した。警察の人達は「もう二度と悪いことが起きないよう十分に対処していくよ。だから安心してね」とだけ答えていた。そしてスーツ姿の人が名刺を私達に渡してくれた。警察の人の言う対処というのはどういう事をするのかは判らないが、私自身もこれから十分に気を付けて行かないといけないと思っていくことにした。何が起きるのか。私の身にこれから何が起きていくのか全く予想が付かない。どのように気をつけていけば良いのか全く判らない。そのような状況の中で私を24時間監視していくということは絶対に無理なことでもあった。そして私と百希は校長室から出て教室に戻った。


          ☆ミ


「百希のところにも手紙が来ていたんだね」そう言って百希を見ると、百希はなにか考え事をしていた。

「昨日、明理の家から帰ってきたら、机の上に私宛の手紙が置いてあったんだよ」とだけ百希は答えた。

 私達二人にだけ同じ日に封書が届いていた。ということは同じ人が書いたものなのだろうか?しかし私の書かれていた文章と百希のところに書かれていた文章の内容を考えていくと違う人のように思えた。そして文字の書き方、筆跡も違っているように思う。私のところに届いた文章はなぜか男性が書いたように思うのだが、百希のところの来た手紙は女性が書いたように思うのだった。違う人からの手紙が私と百希のところに同じ日に来た。同じ日に投函したとすると、私のところに封書を送った男性と、百希のところに封書を送った女性は繋がっているように思う。二人は夫婦?だとしたら別々の人が手紙を書く必要は無い。夫婦で話をして似たような内容のものが私達のところに送られてくると思う。としたら偶然に同じ日に投函した?なぜ?私に起きるであろう問題の日の事を二人は知っているから、そこから逆算して偶然に封書を同じ日に投函をし、そして私と百希のところに同じ日に届いた。

 ここで単純な質問、しかし何故、百希のところに封書が届いた?常に私と一緒に居るのが百希だから?家だったら家族が居る。学校に行けば常に百希と一緒に居るから百希に封書を送ったのか?百希の手紙には私の事を守るように書かれていた。解決には私が必要?私達は数字メールの事を調べている。数字メールと事件や事故の因果関係を調べている。そして今まで不幸に見舞われている人たちにはすべて数字メールが送られてきていることが判っている。しかし私の所には経った一日だけ送られてきているだけだった。不幸に見舞われた人たちは私の調査して知る限り、何日もかけて何度も送りつけられてきている。この前に亡くなった松浜中学校一年生の仲屋芽衣さんも、何日も送りつけられて気味悪がり怖くなって、担任の先生に相談するくらい送りつけられて来ている。

 莉菜さんの妹七緒ちゃんの話でも莉菜さんは一週間くらいメールが来ていたらしいし、国房美樹さんも『メールが送られてくるたびに』顔が青ざめてきて怖がっていた。たった一日だけ送りつけられて来ているのではなく、何日もかけて何回も送りつけられてきていることは、今までの調査で判っているのだった。それなら逆に私には何故、数字メールが一日だけで終わったのだろう?他の人たちと同じように何日も送られ続けなかったのだろうか?

 もしかしたらこの怪しい数字メールを送りつけている犯人は、私になにかを調べさせようとしているのではないか?私に犯人を見つけて欲しがっているのではないだろうか?そう考えると数字メールの犯人と警告の手紙の犯人(男性と女性?)は、別の人だと考えた方が良いように思う。しかし何かこの犯人同士は知り合いのように思う。何故?と言われたら、それはただの私の勘としか言えない。

 これから私はどのように調査していくのかまだ方向性は見えていない。しかし、美樹さんの交友関係を知って天龍区に入った後の足取りを調査していきたい。采佳さんの家から湖まで実際に行ってみたい。莉菜さんの部屋を見てみたい。美帆の事故現場に行ってみたい。仲屋芽衣さんのことをもっと詳しく聞きたい。この数字メールが送られて来た人が他に居ないか調べて行きたい。そしてもっと数字を集めないといけないと思っている。やることは沢山あるのに、これを実際にやることで数字メールの核心に触れることが出来るのかというと全く判らない。しかし一つ一つ手掛かりを見つけていくしか、今の私達に出来ることが無いように思えてくる。私は百希に今私が考えている事を話した。百希は少し渋い顔をしたが受け入れてくれた。

「明理の言う通り一歩一歩進むしかないね。もう後戻りは出来ないから。でも危険なことは絶対にしないし、絶対にさせないからね」私は百希の手を握り締め、一緒に頑張って行こうねと確かめ合っていた。



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私の中にあるもの。 福田 有季 @Yuuki_Fukuda

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