第10話
莉菜さんの妹・七緒ちゃんの話は私にはなんと言ったら良いのか判らないことだった。
・2018年6月24日(日曜日)
夜9時22分に浮本莉菜さんからLINEが3つ来て、午後9時35分に返信したが既読が付かない。
その日の夜に自室で自殺。発見者は妹。私のところにLINEで数字を送ってきてくれた。
『11104』と『1056194』意味はそれぞれ『逢いたいよ』と『今から行くよ』
予想として数字が送られてきても、莉菜さんは読むことは出来なかったと思っている。自殺の動機は不明。
これが今まで私の掴んでいた情報を基に書き込んでいったノートだったが、七緒ちゃんの話とは全く違っていたのだった。
七緒ちゃんが莉菜さんの事件について語ってくれたことを思い出していた。
事件の一週間くらい前から家族は莉菜さんの様子がおかしい事に気が付いていた。メール着信が有るといつも怖がっていて、すぐにメールを読んでから、なにかスマホを操作していたと言うのだった。誰からのメールなのか知らない。しかし茉莉さんの身に何か悪い事が起きていると家族は感じていた。学校で虐めにあっているのではないかとも考えたと言っている。しかし莉菜さんは何も話をしてくれなかった。そして事件当日の6月24日の日曜日、気分転換に家族で遊びに行こうと企画をして日帰り旅行をしていたのだった。行き先は、長島スパーランドでアトラクションを家族で楽しんだと言う、そして帰りに外食をして午後10時半過ぎに家に帰り、莉菜さんは妹・七緒ちゃんと一緒にお風呂に入って、妹と一緒に楽しかったねという思い出話をしていた。そして莉菜さんはお風呂から出てからも両親に凄く楽しかった、また行きたいと心の奥から喜んでいることがわかるような笑顔で話をしていた。それから莉菜さんは二階にある自分の部屋に行った。お父さんが莉菜さんが元気になってよかったと思い、一緒に二階に上がって行った。お父さんは莉菜さんに『学校で虐めとかされてないか?』『なにか悩み事があるのか?』などの話をしてから一階に降りたと言っている。そして七緒ちゃんはお風呂から出ると、両親と莉菜さんの事の話をしてから莉菜さんの部屋の隣にある自分の部屋に行くと、急に莉菜さんの部屋で大きな音がして莉菜さんに何かあったと思い、莉菜さんの部屋に急いで行くと、もうすでに首を吊っていたと言う。莉菜さんの身体は揺れていなかった。そして遺書などは見つかっていなくスマホが足元に落ちていたと言う。大きな音の原因もまだ判っていない。これが七緒ちゃんから聞いた一連の流れだが、とても奇妙な事を七緒ちゃんは話したのだった。
家族と一緒に旅行に行っていたときはスマホは弄っていなかったと言う。莉菜さんの隣にはずっと七緒ちゃんが居たので、スマホを弄っていたら気が付くというのだ。特に莉菜さんはスマホを見ては怖がっていて顔色が変わる。だから七緒ちゃんは莉菜さんがスマホを弄ることには特に気にして、注意深く見ていたと話した。そして旅行中は確実にスマホを弄っていなかったと断言をしていた。七緒ちゃんの言う事を信じると莉菜さんは午後10時半過ぎまでスマホは弄っていないことになるのだが、しかし現実には私のスマホには午後9時22分にLINEを送ってきていた。そんなことがありえるのだろうか?
長島スパーランドを午後7時頃に出て、車に乗り帰ろうとした。途中、お腹が空いたのでサービスエリアで食事をする。食事をしたのが夜8時頃で食事をしてからお土産を買っていたり、売店を見ていたりと一時間くらい休憩をした。サービスエリアを出発した時刻は午後9時頃ということになる。そして家に帰ったのは夜10時をすでに回っていて午後の10時30分か40分。渋滞はほとんど無くてスムーズに家に帰ることが出来たという。
私のところにLINEが来たという時刻の午後9時22分は、サービスエリアで家族と食事をして休憩を終えてから家に帰る時間で、疲れとご飯を食べてゆったりした頃でとても眠たくなり莉菜さんは車の中でぐっすりと寝てしまっていた時刻になるという。その時は七緒ちゃんは起きていて運転席に居るお父さんや助手席に居るお母さんに莉菜さんが寝てしまったという事を話したという。寝ていたとされるその時間に莉菜さんはスマホを弄っていなかった。というより本当にぐっすりの状態だったらしくスマホを弄ることさえも出来なかった。だから私にLINEを送ることは絶対に不可能だと言っている。しかしそこからがさらに判らないことが続いた。
亡くなる直前まで莉菜さんは笑顔で七緒ちゃんや家族とも話をしていた。自殺をするということはとても考えられないことだった。大きな音がしてすぐに七緒ちゃんが莉菜さんの部屋に行き扉を開けた。もし七緒ちゃんが聞いたという大きな音が、莉菜さんの首を吊ったときの音だとすると、音を聞いてからすぐに部屋に入ったと話しているので、七緒ちゃんが莉菜さんの部屋に入ったときは莉菜さんの身体は揺れていないとおかしい。でも全く揺れていなかったと断言していた。ということは七緒ちゃんが部屋に入ったときは、もうすでに莉菜さんは自殺して亡くなっていたことになる。お風呂から出て二階に行ってから七緒ちゃんがお風呂から出て自分の部屋に行くまで30分くらいの開きがあるというが、直前まで笑顔で話していた子が自殺をするだろうか?あと七緒ちゃんが聞いたという大きな音の正体もまったくもって掴めていない。
もう一人、美帆の事故のことも私達が調査してきたことと妹・和里ちゃんの証言が全く違っているのだった。
・2018年6月28日(木曜日)
午後4時頃、浅村美帆さん、位置のショッピングモール前の道路にて飛び出し事故 交通事故死。事故現場より美帆の壊れたスマホが発見される。
午後6時21分;美帆からLINEが来る。数字メールが来て私に助けを求めているメッセージ。
午後6時23分;私から美帆に返信。その2分後(午後6時25分頃)くらいに既読になった事を確認。既読になったが返信なし。
学校から事故現場まで一時間以上、私の家や百希の家からも乗用車を使って40分以上は掛かる場所。
当日の完全下校時刻は午後3時。当日、美帆は学校を休んでなく、早引きもしていない。
*事故当日、私の目撃証言があり、私は警察に28日の行動を聞かれた。
私は警察から聞いたことや調査していってノートに一つ一つ書いていったことで私や百希はノートに書き込んでいる情報が正しいと思っていた。しかし、美帆の妹・和里ちゃんから聞いたことは全く書き込んだ内容と違っているのだった。
美帆の妹・和里ちゃんの話は美帆が亡くなった一日前からの話になる。
2018年6月27日(水曜日)のこと、美帆がとても元気が無かった。和里ちゃんが美帆に「どうしたの?」と聞いても何も答えてくれなかった。スマホの着信があるたびに怯え初め、顔色が変わったと言う。美帆の事を心配した両親は、学校で虐めにあっているのではないか?と心配するが苛められていなかった。しかし美帆の様子が明らかにおかしいと感じた両親は、今度の休みの日に家族旅行でもして気分転換しよう。行き先は美帆と和里ちゃんで決めて良いということになった。美帆もとても喜んでいて和里ちゃんと一緒に何処に行こう?って大喜びで話していた。
2018年6月28日(木曜日)午後3時30分頃、学校から帰宅途中に和里ちゃんが美帆と会う。今まではお互いに部活があるので帰宅途中に逢うということが無くて、初めて一緒に帰ることになって美帆も和里ちゃんも楽しく話しながら家に帰ったと言う。家に帰った時間は午後3時40分頃。家に帰った後は美帆はすぐに二階の自室に行くために階段を上がって行った事を和里ちゃんは確認している。和里ちゃんはシャワーを浴びたくてお風呂場に行った。和里ちゃんはそれからしばらくシャワー中だったので美帆がどうしていたが判らないが、でも二階から降りてくる音は何も聞こえていなかったと言う。だから和里ちゃんは美帆は二階の自分の部屋に居るものだと思っていた。和里ちゃんはシャワーを浴び終えると着替えて自分の部屋に行き、教科書やノートが入っているリュックを部屋に置いて、すぐに一階の居間に行ってテレビを見ていた。二階に行ったときは美帆の部屋は静かだったという。仮眠を取っているか、本を読んでいるか、勉強をやっているものだと思ってそっとしておいたと言う。午後6時にお母さんが帰宅。すぐに夕ご飯の支度に取り掛かり、和里ちゃんはお母さんのお手伝いをしていた。お母さんから「美帆の様子はどう?」と聞かれたが、今日一緒に帰って楽しく話をしながら帰った事を伝えると、お母さんは「良かった」と言い安心していた。食事の用意が出来たので、午後7時に食事を一緒に食べようと美帆を呼ぶが返事が無い。和里ちゃんが美帆の部屋に行くと、部屋には美帆は居なかった。家中探しても近所を探してみても美帆は見つからない。そして午後7時半頃に警察より電話が掛かってきて、美帆が交通事故をした事を知る。そして急いで病院に行ったが、もうすでに美帆は亡くなっていた。
美帆は身分の判るものを一切、所持していなかった。普通持っているだろうとされる財布やスマホなどすら所持していなかった。警察は着ていた制服から第二高の生徒だと言うことが判り、学校に連絡をし、そこから身元が判明して家に電話を掛けてきたという。警察が事故現場を細かく調べていると、壊れたスマホが発見され美帆のものであると判った。スマホに付いては壊れていて電源すら入らず中身を見ることが出来ないので、美帆の持っていたスマホと色と機種が同じだという家族の証言により、そのスマホが美帆のものだと判明している。
警察の調査で事故の時刻は午後4時。美帆がいきなり道路に飛び出しトラックに撥ねられたということだった。事故現場を警察に聞いても一切教えてくれなかったと言う。今事故原因や現場検証等で調査中のために事故の場所は教えられないということだった。果たしてそんなことがありえるのか?私と百希、和里ちゃんと七緒ちゃんと一緒に話をしていたときに私達から事故現場は市野と話して、和里ちゃんは事故の場所を初めて聞いたと言っていたのだった。
それにしても和里ちゃんの話を聞いてみてさらに謎が深まっていった。まず一緒に家に帰ったという事実があるが、家に帰宅した時刻が和里ちゃんの言葉を信じるならば市野に行くことは確実に不可能だと言うことになっていた。午後3時40分に帰宅。そして午後4時に事故。その間わずか20分しかない。美帆の家から事故現場の市野まで車でも軽く40分は超える。渋滞無しで100キロ以上出したとしても、事故現場まで20分で行くとは思えない。そもそもあの場所はいつも大渋滞をしていて、休日や平日でも時間によっては大渋滞で車は動くことが出来ない。そのような場所なのに20分で行ける筈が無い。大渋滞でほとんど動かない場所なのに、トラックで撥ねられて死亡事故というのはとても矛盾していないか?トラックは何キロで走っていたんだろうか?あとおかしな点は、被害者家族にも事故現場を教えていない。そんなことが本当にありえるのだろうか?交通事故なのだから加害者トラックのほうも自動車保険の手続きなどあるだろう。なのに事故の場所は被害者家族には一切話されていない。それで何故、私達には簡単に市野ショッピングモール横の道路だと教えてくれたのだろうか?他にも私の目撃情報があり、私のアリバイを聞いてきたこともなんか不自然だ。交通事故なのに、交通事故現場に私の目撃証言があり警察が調べてる?なんで?
私達は和里ちゃんの情報から考えるに、本当の事故現場は市野ではないのではないか?警察は何かを隠していると思い始めていた。美帆の家から20分以内の圏内での家からの近場の事故だと思っている。それにしても警察が被害者家族にも言えない情報を、なぜそんなに軽く私に話すだろうか?もっと言ってしまうと校長室に居る人たちは本当に警察の人なの?ということも疑問として上がっていた。しかしあの人たちを警察の人と信じなければ、すべてのことが破綻してしまう事態になっているので、警察の人だという事を信じるしかない。そして和里ちゃんや七緒ちゃんの証言も莉菜さんや美帆と事故当日の生の声のため、事実としてこれも信じるしかない。
このような何が起きてもおかしくない今の状況で、何を信じたらいいのかも判らなくなっているこの状況で、私に手紙で危険が迫っている事を知らせてきていた。そして逃げろという。何処に逃げれば良いのだろうか?私にはとても安全な場所と言うものがあるようには思えないのでした。安全な場所が無いのに何処に逃げればいいと言うのだろう。
私はお母さんが手にしている手紙を取り封筒に戻した。
「明日、学校に居る警察の人にこれを渡して話してみる」私にはそれが一番最善な行動だと信じていたし、それ以外に考えれることが無かったのでした。
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