第9話

「ねえ百希。例えばだけど、城北第二高校への恨みって言う線はないのかな?4人全員が城北第二高校だし」私は一つの可能性を百希に話してみた。

「ありえるかもね。警察の人もこの学校にずっと居るし、この学校の周りも警察の人が巡回していて怪しい人が居ないかを見て回っているし、それに中学校とか他の学校ではこの学校のように常に誰かと一緒に居ろとか、完全下校時刻とか、部活動の禁止とか、うるさく言われなくなってるって聞いたよ」私は百希の言葉に驚いた。私はお姉さんからは、そのような事は何も聞いていないからだった。

「私、お姉ちゃんからそんな話は何も聞いてないよ?」と私が話すと、百希が答えた。

友咲ゆらお姉さんは城北女子第三高校じゃん。第一高、第二高、第三女子は校長先生が同じで校則とかも同じらしいから、第二高と同じようにしているのかもね。それ以外の中学校や高校では、事件や事故が起きているのは第二高だけだから、この学校には関係は無いとして部活動とか始まってるみたいだし、完全下校状態はもう無いみたいだよ。小学校は保護者から子供に何か起きてはいけないからと言うことで集団登下校をずっと行なっているらしいけどね。子供に何かあったらいけないと言うのなら、中学生以上は問題ないと思っているのは、どういうことなのか聞いてみたいと思うんだけどね」

「なにか根拠と言うものが有るのかな?警察の調査によると第二高の二年生の生徒だけがこのような事件事故の被害者になっているからとか、他の学校の生徒には危害は無いという確実な証拠のようなものが報告されたとか、そういう通達が警察から学校に報告されたっていうことなのかな?」私は百希に聞いてみた。

「根拠は何一つ無いんじゃないかな。事実だけで言ったら第二高の、それも二年生のみが被害者で、実際には根拠は無いけど他の学校の生徒は大丈夫って言う感じ。事故は自分は起こさないし絶対に巻き込まれないと言う根拠の無い自信みたいなもので動いているのじゃないかな」

 確かに被害者すべては城北第二高校の二年生だけとなっている。何故このようなことになっているのかと言うと全く判っていない。私はこのまとめた事件ノートをお姉ちゃんにも見せて意見を聞きたいとも思っていた。その意見は百希も賛成してくれた。そして今日も百希と一緒に私の家に行き、お姉ちゃんの帰りを待っていた。そして30分位したらお姉ちゃんが帰ってきたので、私はノートを見せて意見を聞こうとした。

「この4人の共通点のことだけど、第二高の二年生だけが被害者だと言うのは今日になって消えたよ」お姉ちゃんの言葉に、私と百希は顔を合わせて首をお互いにかしげた。

「あんた達今日、学校から何も話を聞いていないの?市立松浜中学校一年生の女の子が一人亡くなったと言っていたわよ」お姉ちゃんから詳しく聞いてみると、怪しげなメールが来ていて担任の先生に相談していたと言う。

「怪しげなメールってあの数字メールのことかな?」私が聞いてみると、そのことは何も聞いていないと話した。しかしここ最近に数字メールが頻繁に来ている事を考えると十分にありえることではないかなと話していた。

「その女の子はなんで亡くなったの?」百希がお姉ちゃんに聞いた。

「天龍川の河川敷で発見されて、遺体にはかなりの損傷があって、国房美樹さんの事件と繋がりがあるって警察は考えたらしいの」

 国房美樹さんの事件は私は今回の事故との繋がりは無さそうに思っていた。私との繋がりは何も無かったからだった。しかしその国房さんと同じような事件が起きた。まるで私達にすべての事件は繋がっているんだよと言っているかのような感じだった。

「お姉ちゃん、その子の名前とか判る?」と私が聞くと、お姉ちゃんはテレビを付けた。そして番組をニュースに合わせた。

『今日未明、天龍川河川敷で女の子の遺体が発見されました。被害者は市立松浜中学校一年生の仲屋芽衣さん。警察は殺人事件として……』

 仲屋芽衣さん、松浜中学校一年生。私との繋がりが全く無い子だった。そして今までは城北第二高校の二年生だけの事件や事故とされていたのだが、今回中学生が被害者になったと言うことも私達には衝撃的なことだった。

「私の学校でも大変な騒ぎになってたわよ。第二高の問題だと思っていたら、実はそうじゃないということで学校の措置がまた厳しくなったの。すべての幼稚園は保護者が必ず付き添うこと、小学校の登下校は集団登下校で保護者が学校まで付き添うこと。中学校でも同じ方向の生徒は集まって登下校すること。すべての高校ではまた部活動禁止。完全下校時刻で寄り道禁止。家に帰ったら外出禁止。これが犯人が捕まるまで継続すると言うことになったよ」

 今までよりさらに厳しい処置が取られているようにも思えてきた。寄り道や外出までもが禁止というのは、かなり息が詰まりそうに思えた。

「それならここに百希が居るのはマズイって事?」

「今回の学校措置としては、ここに百希さんが居るのは非常にマズイ事になっちゃうね」

 そしてお姉ちゃんと一緒に百希を家まで送り届けることにした。送り届けてから私はお姉ちゃんと話をしながら帰った。

「お姉ちゃん、今回の事件や事故って私に何らかの接点がある人だと思っていたの。接点が無い人は国房美樹さんだけでその人だけ殺人事件なのよね。今回の仲屋芽衣さんも私は聞いたことが無い名前で同じように殺人事件なの。これってどう思う?」

「今まで明理と同じ第二高の生徒で同じ二年生だったでしょ。だから無関係と言い切るのはどうだろうって思う。でも今回の被害者は中学一年生で明理と接点がまったく無い人なのよね。これはもう一度、最初から考え直したほうが良いのかもしれないね。5人の共通点は怪しい数字メールということだから、数字メールを調べていくほうが良いかもね。今回の被害者の友達とかに逢って話を聞くことが出来たら良いのだけれど、さすがに中学生の知り合いは私には居ないかな」

 今までは私と同じ学校の二年生の人が被害者の事件や事故だった。しかし今回は中学生が被害者の事件だった。

 家に帰るとすぐに私は百希のスマホにLINEを送った。「百希の知り合いで松浜中学校の生徒って居ないかな。話を聞いてみたい」すぐに既読が付き、そして返信が来た。

「莉菜さんって妹さんが居なかった?莉菜さんのお通夜に行ったけど、あの場所って松浜中学校の学区じゃないかな?他にも美帆さんも妹さんが居たと思う」

 百希から言われるまで気が付かなかったが、美帆の妹も松浜中学校だったように思った。(たしか美帆の妹とLINEで繋がっていたような……)

 私はすぐさまLINEを調べてみた。そして美帆の妹・和里あいりの名前を見つけた。

『和里ちゃん、久しぶり。お姉ちゃんのこと聞いたよ。和里ちゃん今はどう?』LINEを送るとすぐに既読が付き返信が来た。

『明理さん、お姉さんが居なくなってから、家は電気が付いていてもとても部屋が暗い感じです』

『美帆の事を聞きたいと思うのと、芽衣さんのことも聞きたいと思ってるけど大丈夫かな?』

 そして明日の完全下校時に私の家で話しを聞く事にした。すぐに百希にも連絡して百希も話しを聞くことになった。

「お姉ちゃんはどうする?」と聞いたら「私?一緒に話を聞くに決まっているでしょ」と普通に答えが返ってきた。


          ☆ミ


 次の日の完全下校時間に私と百希は松浜中学校に急いで行く事にした。松浜中学校の前で美帆の妹である和里ともう一人知らない女の子が一緒に立っていた。私と百希が自己紹介をするとその女の子も自己紹介をしてくれた。

「私の名前は浮本七緒ななおと言います。浮本莉菜まりなの妹です。和里ちゃんと亡くなった芽衣ちゃんと同じクラスで友達でした」

 莉菜さんの事件や美帆の事件、そして芽衣さんの事件は妹と言う形で繋がっていたと言う事を知ることとなった。しかも三人とも同じクラスということも私には何かあるような気がしていた。そしてすぐに私たちは私の家に集まった。家に着くとお姉ちゃんが今か今かと私達が来る事を待っていた。そしてすぐに七緒ちゃんと和里ちゃんの話を聞いていた。そこで判ったのは莉菜さんの自殺には多くの不審な点があること。美帆の交通事故にも不審な点が多くあること。今回の事件の被害者である芽衣さんは、事件当日に七緒ちゃんと和里ちゃんと3人で遊んでいたことが判った。私達はお互いに連絡がすぐに取れるように教え合った。そして私達はみんなでご飯を食べた。なぜか私達はもうすっかり友達になったような気がした。

「もうかなり遅くなっちゃったね」お姉ちゃんが言ったので時計を見ると、もうすでに午後8時を回っていた。お父さんに車を出してもらうように頼んで、みんなを家まで送り届けることにした。5人乗りなのでお父さん運転手、私、百希、七緒ちゃん、和里ちゃんと車に乗り込み。お姉ちゃんはお留守番。

 まず七緒ちゃんを家まで送り届けて家に入るところまでしっかりと確認し、次に和里ちゃんを送り届け、次に百希を家まで送り届けた。全員を無事に送り届けて家に帰るときにお父さんが私に話しかけてきた。

「明理、危ない事をしてないな。絶対に危険なことはしないで欲しい。お父さんと約束出来るか」などと色々と心配してくれていた。私は「大丈夫だよ。危険なことは絶対にしないよ。約束する」と答えた。しかしこれから何が起きるのか予想が出来ずに、私は少し怖くなっているのも事実だった。

 家に帰るとお母さんがすごく心配そうな顔をしていた。お姉ちゃんが色々と話をしたのだろうと予想が付いていた。お母さんからも危険なことはしないでね。何かあったらすぐに話しをするのよ。などと言われた。

 そしてお母さんは私宛に手紙が来ている事を言うと一枚の封筒を渡してくれた、私はその手紙を受け取った。本当に中身が入っているのかな?と言うくらいにペラペラで手紙の表側には住所と私の名前が書かれている。裏を見ると何も書かれて居なくて誰から送られて来たのか判らなかった。そして家族が心配して私のほうを見ているのを感じながら私は手紙の封を開けた。中には一枚の便箋があり、一言だけ書かれていた。


『危険が迫っている。すぐに逃げろ』


 私はすぐに手紙を読み終わると、横に居るお姉ちゃんに手紙を渡した。お姉ちゃんはその手紙を受け取ると、すぐに読み始め私の顔を見た。お母さんは私とお姉ちゃんを様子を見て、お姉ちゃんの手にある手紙を取り、お父さんと一緒に読んでいた。

「明理、どうするの?」お姉ちゃんが震えながら私に聞いてきた。

「どうするって言っても、危険が迫っているって言われても逃げようがないし、家に居るほうが安全にように思うんだよね」私は思った事をそのまま答えた。

友咲ゆら、これから明理と一緒に寝て頂戴。明理の身に何も起きないように家族で見守っていかないといけないからね」

 お母さんがそう言うものの、何も出来ないように思う。なぜなら私達は莉菜さんの事を聞いているからだった。



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