第8話

 私は今まで起きた事を整理するように、時系列毎にノートに書いていくことにした。


 ・2018年5月27日(日曜日)午後8時ころ

 私のスマホに数字メールが来る。数字はポケベル時代のメッセージ。使われていないメルアド。消去できないメール。拒否できないメルアド。

 *一体誰が何の目的でこのようなメールを送りつけてきたのだろう?このメールの正体はなんだろう?


 ・2018年5月28日(月曜日)

 早朝、国房美樹さんの殺人事件のニュース。国房さんはメールにすごく怯えていた。数字メールと予想する。

 *いつ頃からメールが来ていたんだろう?

 *国房美樹さんの休日の行動は?殺害された時刻は?


 ・2018年6月24日(日曜日)

 夜9時頃、西守采佳さんのニュース。25日午後6時頃に釣り客に発見される。死因は溺死。

 三日前位(6月21日木曜日)兼房百希さんと喧嘩する。喧嘩の原因は不明、些細なことだという。

 二日前位(6月22日金曜日)お姉ちゃんに数字メールのことで相談。数字メールは23日よりも前から来ていたということになる。

 采佳さんが家に帰ってから二階の自分の部屋に行ったところを母親が確認している。一階に降りた目撃は無し。

 午後6時頃に食事のため采佳さんを呼ぶがもうすでに二階には居なかった。

 午後3時から5時まで采佳さんの家の近くで近所のおばさん達が井戸端会議をしていて、

 午後5時前には家の外に出てきた人は一人もいないことが確認されている。よって午後5時から6時頃に家を出たとされている。

 采佳さんの家から発見場所の湖まで自動車でも渋滞していて30分以上は掛かるだろうということらしい。

 家に自転車がある。部屋に財布が残っていてお金を持っていない。

 *靴はどうなのだろう?履いていたのかな?

 *湖までどのように行ったのだろう? どのように家から出たのだろう?


 ・2018年6月24日(日曜日)

 夜9時22分に浮本莉菜さんからLINEが3つ来て、午後9時35分に返信したが既読が付かない。

 その日の夜に自室で自殺。発見者は妹。私のところにLINEで数字を送ってきてくれた。

 『11104』と『1056194』意味はそれぞれ『逢いたいよ』と『今から行くよ』

 予想として数字が送られてきても、莉菜さんは読むことは出来なかったと思っている。自殺の動機は不明。


 ・2018年6月28日(木曜日)

 午後4時頃、浅村美帆さん交通事故死。同日午後6時21分に美帆からLINEが来る。

 数字メールが来ていて私に助けを求めているメッセージだった。

 午後6時23分に私は返信をした。その2分後くらいに既読になった事を私は確認している。

 既読になったが返信は来なかった。事故現場には壊れてボロボロになった美帆のスマホが発見されている。

 事故現場は市野ショッピングモール前で学校からも私の家や百希の家からも乗用車を使って40分以上は掛かる場所。

 事故の時刻は午後4時頃で、学校が終わり完全下校時刻が午後3時だった。当日、美帆は学校を休んでなく、早引きもしていない。

 *事故の2時間後にLINEが送られてきている。どういうことなのだろう?

 *どうやって市野に行くことが出来たのだろう?

 *私の目撃証言があり。でも実際に私はその場所には行っていない。私と似た人が居た?見間違え?


 亡くなった人たちの共通点

 1;数字メールが送られてきていること。

 2;城北第二高校の二年生。(クラスはA組一人、B組二人、C組一人)

 3;女性であること。(誕生日は違う)

 4;マスクを着用している。


 さすがにマスク着用はノートに書いても意味が無いか。そう思ってみたけど、共通点があまりにも無さ過ぎるので一応だけど書き込んでみた。物理的に不可能なことと言うと、やっぱり采佳さんがどのように家から出たのか。ということと湖までの移動方法。あとは美帆がどうやって市野まで行ったのかと、事故の時刻だろうな……。今の状態ではまったくと言って良いほど情報が足りないし、何も判っていないことのほうが多すぎる気がした。

 そして私は少しの手掛かりを見つけようと、次に亡くなった人たちの人物像をプロフィールのようにノートに書き込んでみた。


 ・国房くにふさ美樹 (殺人)

 城北第二高校二年C組 (誕生日不明)

 身長……155.6センチ

 体重……50.5キロ

 髪型……茶髪・ショートストレート

 部活動…運動部・陸上・中距離走の選手だと聞いている。

 性格……不明

 家族……父親、母親、美樹さんの三人家族

 私との接点は無し。話をしたことも無いと思う。


 ・西守采佳あやか (溺死)

 城北第二高校二年B組 (誕生日不明)

 身長……162.5センチ

 体重……55.0キロ

 髪型……茶髪・胸くらいまである。ストレート

 部活動…文化部・華道部

 性格……見た目キツイ。とても優しい。心が綺麗。

 家族……父親、母親、姉(穂夏)、采佳さんの四人家族

 私のクラスメート。ちょっとは話をしたことがある程度。

 百希の親友。亡くなる前に喧嘩をしている。

 姉の穂夏さんは、お姉ちゃんと同じ城北女子第三高校3年A組。

 

 ・浮本莉菜まりな (自殺)

 城北第二高校二年B組 (誕生日不明)

 身長……152.0センチ

 体重……48.0キロ

 髪型……黒髪、肩に掛かるくらいの長さ。ストレート。

 部活動…文化部・図書部・よく判らないが図書館でよく本を読んでいる部

 性格……人と接するのが苦手。常に本を読んでいる。

 家族……父親、母親、莉菜さん、妹の四人家族

 私のクラスメートだが、あまり話をしたことが無い。

 私のところにLINEを送ってからの行動が不明。


 ・浅村美帆みほ (交通事故)

 城北第二高校二年A組 17歳(5月29日生まれ)

 身長……157.7センチ

 体重……53.0キロ

 髪型……黒髪、肩に掛かるくらいの長さ。ストレート。

 部活動…運動部・バレー部選手

 性格……明るくてとても元気いっぱいの子。

 家族……父親、母親、美帆、妹(和里あいり)の四人家族

 私のとても仲の良い親友。

 

 ここから判るのは全員ストレートの髪だということだけか。黒髪と茶髪の違いや長さの違いが有るけど。家族構成もバラバラで参考になるものが無い。プロフィール毎に書いていったら、見落としている共通点とか他に判るかも知れないと思ったけど、結局は何も得るものが無かったのでした。

 私がノートに書き込んで、書き込んだノートをじっと見ていると横に居る百希が話しかけてきた。

「明理、何してるの?」私は黙って色々と書き込んだノートを百希に見せた。

「今までのことで判ったことだね。本当に明理ってこまめにノートに書き込むよね」そう言いながら百希はノートを見た。

「あ、ここ! 采佳の誕生日は8月20日だよ」そう言って誕生日不明と書いてあるところに二重線を引き、そして誕生日を書き込んでくれた。

「経った二ヶ月の間なのに色々なことが起こり過ぎて、私自身が全然付いて行けてない気がするよ」私がそう言うと百希も私の顔を見て頷いた。

「この二ヶ月の間に4人の友人知人が亡くなって居るんだから無理も無いよ。警察も捜査が進んでいないみたいだし」

「ノートに書いていっても時間がおかしいなって思う。特に美帆の事故の時間が午後4時っていうのが絶対にありえないし、他にも采佳さんのことも変だし、莉菜さんの自殺の原因も判らないし、まとめていってもやっぱりこの事件や事故は時間がおかしいということしか判らなかったよ」頭で考えていてもこんがらがるだけだと思い、ノートに纏めて書いてみたのだが、ノートに書いてみて色々と整理をしてみても全く判る事が無く無駄なことで終わった。下校時刻からたった1時間で遠く離れている市野で交通事故。部屋に居るはずなのに遠く離れた湖で発見。2時間前に交通事故で亡くなっている人からのLINE。どれを取っても現実ではありえないことで不思議なことにしか思えないのだった。

「采佳さん、莉菜さん、美帆さんの3人は明理と何かしらの関係が有るのに、美樹さんとは全く関係が無いというのも引っかかるね」とノートを見ていた百希が話し出す。

「采佳と莉菜さんはクラスメートでしょ。美帆さんは明理の親友だし。采佳のお姉さんは明理のお姉さんとクラスメート。なのに国房美樹さんとの接点は一つも無いって本当なのかな?って言うのが、ノートを見てみての私の率直な感想というのかな」百希がさらに付け加えて話していた。それを聞いて私も自分の思った事を百希に話した。

「美樹さんって一人っ子らしいし、私とは部活も違うし、実際に話をしたことは無いと思う」私は国房美樹さんは隣のクラスということしか知らない。しかしもしも私との接点があったとしたら、亡くなっている人たちの共通点が私と何か繋がりがある人という共通点が一つ増えることになる。しかしいくら私が考えても国房美樹さんと私との繋がりが見つからないのだった。

「小学校や中学校でもクラスメートになったことは無いし、習い事や学習塾にも居なかったし、やっぱり私と国房さんとの共通点は無いと思う」

「でも警察の人はなんか明理の事を疑っているように思うんだよね。明理をすぐに呼び出していたし、何があると思う?」

「私のところにも数字メールが送られて来たのに私は無事だということ。あとは私と同じ学校の人が亡くなっていることとか?」私は自分の思っている事を百希に話した。実際にはそのくらいのことしか思い浮かばなかったというのも事実だった。

「亡くなった4人のうち3人が明理との接点があるからのように思ったんだけど、違っているみたいだね」

「私も国房さんのことは気にしたんだよね。なんで国房さんは亡くなったんだろうって、それで思ったことがあるんだけど、明らかに殺人って決まっている人って国房さんだけじゃない?采佳さんは溺死で莉菜さんは自殺、美帆は交通事故なのよ。他の人は事故なのに国房さんだけ殺人事件なんだよね」私は百希にノートを見せながら話した。

「明理は今回の事件や事故に国房さんは違っていると思ってるの?」

「まだ判らないけど、私の関係者の不幸な事故と言ったら4人の内の3人は該当するけど、国房さんだけ当てまらないと思っただけなの。怪しい数字メール繋がりと言ったら4人全員が当てはまるけど、そうすると私にはそのような不幸が訪れて来て居ないということを考えると、不幸メール繋がりと言えない様にも思う」

「確かに明理の言うことも一理あるのかなって思うかもね。実際に国房さんの事件は誰も目撃者が居なくて捜査は進んでいないけど、家を出て行った土曜日の午後2時から行方がつかめてないみたいなの。友達の所に遊びに行くと言って出かけていて、そこからは行方不明。次の日の日曜日午後5時頃に天龍区の山林で発見されたみたいなのよね。目撃者も無し。しいたけ農家の人が自分の山に入って行ったら女の子が倒れているのを発見したということらしいのよね」百希がそういうと、なんかしいたけには本当に悪いけど、しいたけは当分食べたく無くなってきた。

「バスって監視カメラって付いてるよね?天龍区に行くには、歩きでは絶対に無理だから電車やバスを使ったと思うけど、バスの監視カメラには何も写ってなかったの?」

「国房さんの一人だけが写って居たみたいよ。それでバスと電車の乗り継ぎで土曜日の午後2時頃に天龍区に行ったということは判ったの。でもそこからが不明。足取りが全く判らないみたいなの」

「天龍区に行ったのが判っていて、そこから不明ってどういうこと?」

「発見された場所のしいたけ農家の山までどうやって行ったのかが全く判ってないの。国房さんが降りた駅やバス停から、発見されたしいたけの山に行くのに、バスは通って無し。乗用車でも軽く1時間以上は掛かるのに、到底その山まで歩いていくとは思わないのよね」

 国房さんの言っていた友達と言う人は天龍区の人なんだろうか?友達に逢いに行くと言って天龍区に行った。それは電車やバスの監視カメラで判っている。そこからどうしたのだろうか?友達には逢うことが出来たのだろうか?友達は自動車を持っていて、友人の車でしいたけの山まで行った。と考えるのが普通だろう。そしてもしも友人と逢っていたとしたら、その友達から話を聞くことが出来るんだけど、友人が誰なのかが判っていたら警察がすぐにでも調べて、その人に話を聞いていることだろう。

「結局、何の共通点も見つけられそうに無いね」私と百希ががっくりと肩を落として話し合っていた。


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