第6話
「それで明理。まず何処から調べていこうと持ってる?」
何処からと
「まず西守さんの事件を調べて行きたいかな。私には西守さんにも数字メールが来ていたと思っているの」
「一連の事件・事故が数字メールで繋がっているって考えたわけだね。でもどうやって調べるの?」
「西守さんって確かお姉さんが居るって言ってたよね?お姉さんは何処の学校なの?」
「城北女子第三高校の三年生だったかな。とても位の高いお嬢様学校と言う感じでちょっと近寄り難い学校だと思うんだけど、どのようにして逢いに行くの?」
「城北女子第三高校の三年生って言ったら私のお姉ちゃんと同じだから、お姉ちゃんに聞いてみようかな」
学校が終わり完全下校となったため、私は百希と一緒に家に帰った。しばらくしてお姉さんが帰ってきたので、聞いてみることにした。
「お姉ちゃん、ちょっと聞いて欲しいことが有るんだけど良い?」
お姉ちゃんは私の顔を見てから、横に居る百希を見た。
「今、完全下校中でしょ?横に居る人は誰なの?」
私が百希の事をお姉ちゃんに話そうとすると、百希が挨拶を始めた。
「いきなり来てしまって本当にすいません。私は中沢明理さんのクラスメートの
そして百希は深々とお辞儀をした。
「西守采佳さんか……私も采佳のことは良く知ってるの。お姉さんの
身内が亡くなったんだからとても辛く落ち込んでいるのは当たり前のことだった。やっぱりメールのことだとしても聞くのは間違っているのかな……。
「お姉ちゃん、私が知りたいのは事件のことじゃないの。采佳さんに数字のメールが送られて来たとか聞いたことが無いかな?」
「数字メール?5桁とか7桁の数字のこと?」
お姉ちゃんにその事を話したことってあったかな?お母さんが私のノートに書かれていた数字を見たから、その事を言っているのかな?
「お姉ちゃん、その数字メールのことを何で知ってるの?」
「前に采佳から相談されたことがあるの。変なメールが送られてきて困っているって言っていた。メールはもう消去していて何の数字かは覚えていないけど、5桁とか7桁の数字が書かれているメールが何通も来ていたって言ってたよ」
私と百希さんはお互いに顔を合わせ、そして二人して
「他に特徴のことは言ってなかった?」
「特徴? 数字以外に言っていたことというと、最初は消せれないとか言っていたような気がする。他には気持ちが悪い嫌がらせのメールとか言ってたかな。私の事を嫌っている子が居て、その子の嫌がらせに決まってるとか言っていたかな」
私の事を嫌っている子が居て、その子の嫌がらせ?つまり采佳さんには、確定ではないにしても誰がこのような嫌がらせをしたのかが判っていたということになるのだった。
「お姉ちゃん、その子の名前とかなにか聞いてない?」
「名前とかまでは何も言って居なかったよ」
「お姉ちゃんが采佳さんから相談を受けたのはいつ頃なの?」
「采佳が亡くなる二日前くらいだったかな。今思うともっと色々と話を聞いてあげるべきだったかなって後悔してる」
私も采佳さんと莉菜さんの二人ともクラスメートだった。もっと仲良くしておくべきだったなって今になって後悔している。
「私も采佳ともっと仲良くするべきだったと思ってます」横で話を聞いていた百希が話し始めた。
「采佳とは明理さんと同じくクラスメートで私の親友でした。実は采佳が亡くなる三日前に些細なことで喧嘩をしたんです。結局、仲直りも出来ないままになってしまいました。何であんなことで喧嘩しちゃったんだろうって今となっては後悔しかないです。まさか突然に居なくなって、もう二度と逢えなくなるなんて普通は思わないじゃないですか。だからもう二度と後悔はしたくないです」
私は泣くまいとしている百希を見た。百希と采佳さんは親友だった。そして喧嘩をして、もう二度と仲直りが出来なくなった。たった一言、「ごめんね」と言えば仲直りが出来たかもしれない。しかしもう『ごめんね』と言っても二度と相手から返って来る言葉が聞けない。
「采佳はちょっと見た目が怖い感じになっていて付き合い難いかもしれないけど、本当は凄く優しくて心が綺麗な子なのね。だけどちょっと頑固なところがあるから、お互いに謝りたくても意地になってしまって、謝れなくなっていたのかもしれないね。でも采佳ならもう許していると思うよ。だから百希さんも気に病まずに居て良いと思うよ」お姉さんの言葉を聞いて百希はちょっと涙目になっていた。
「明理さんのお姉さん、ありがとうございます」
「私の名前は中沢
「お姉ちゃん、どこかに出かけるの?」
「一緒に百希さんを家まで送っていくのよ。百希さんと明理の二人で行ったら、明理が一人で帰ってくることになるでしょ」
なるほど、お姉ちゃんと三人で行けば、帰りはお姉ちゃんと私の二人で帰宅となるわけね。
「友咲お姉さん、実は明理にもその数字メールが来ていたんです。だから明理に何も起きないようにしっかりと見ていて下さいませんか」
突然、大きな声で百希が話したので私とお姉ちゃんは驚いてしまった。百希の言葉を聞いて、お姉ちゃんは私をじっと見つめた。
「明理、百希さんを家に送って家に戻ったら、じっくりとその事を聞かせてもらおうかな」お姉さんがちょっと怒っている感じで私に話した。
☆ミ
百希さんの家は私の家から自転車で30分くらいのところに住んでいた。近いと言えば近いが遠いと言えばちょっと遠い感じの微妙なところだった。
「あれ?この家って……。百希さんの苗字って
百希さんを家まで送ると、百希の家の前でお姉ちゃんが突然話し出した。
「高笠原由望さんですか?たぶん聞いたことが無いと思います。この家は私が高校入学をしたときに引越しをしたんです」
「前は何処に住んでいたの?」
「前は中区のアパートに住んでいて、それでこの家を買ってここに住んだんです」
「お姉ちゃん、高笠原さんって言う人はお姉ちゃんの友達の人?」私が聞くとお姉ちゃんが私の顔を見て答えた。
「私の中学校のときの担任の先生だよ。凄い知識があって、とっても優しくて、私の人生を変えたというくらい私が尊敬する先生だよ」
お姉ちゃんとは一つ違いなのに、私が中学校のときに高笠原という人は居なかった気がする。
「私の中学一年のときの担任で二年生に進級するとき、つまり明理が中学に入ったときには別の学校に行ったから明理は知らないのかもね」
お姉ちゃんの人生を変えたという先生か。一度でも良いから逢って見たかったな。
百希さんを家まで送り、そしてお姉ちゃんと私は家に帰った。家に帰るとすぐにお姉ちゃんは私に数字メールの事を聞かれた。私は正直に自分に起きた出来事や莉菜さんのことも話をした。私が何故ここまでに数字メールに
「数字メールの繋がりか……。被害者の外見、性格などの一致することが無くて共通の友人も無し。唯一繋がっていることと言うと数字メールを三人は受け取っていたということなのね」
「そう。最初は国房さんと浮本さんだけ数字メールが来ていたことが判っていて、西守さんには数字メールの話は無かったの。でもお姉ちゃんの話しで西守さんにも数字メールが来ていた事を知ったわけ。それで亡くなった三人の共通点は数字メールが来ていたということですべてが繋がったの」
「でも明理のところにも来たんでしょ?明理はどうなの?誰かに後を付けられているとか、怪しい人物が居るとかある?」お姉さんはとても心配そうな顔をしていた。
「何も無いよ。だから事件とメールとの関係は良く判らなかったんだよね。でもこれで確信に変わったような気がする」私は自信を持って話したがお姉さんに怒られてしまう。
「明理、そういう問題じゃないでしょ?亡くなった人達の共通点が数字メールなら明理も危険が迫ってるって言うことじゃないの」
私には自分にそういう不幸が来ないような気がしていた。何故そのような自信があったのかというのは判らない。しかしこの時は自分の身に降りかかる可能性を軽く感じていたことも事実だった。自分にはそのようなことは起きない。よく自分は交通事故なんて絶対に起こさないというような、全く根拠の無い自信と言うものと同じような感覚だったと思う。メールが来ていた三人は亡くなっているという確実な証拠があるにも関わらず、自分にはそういうことが起きないという根拠の無い自信のようなもの、私は自信家ではないし予言者でもないが、何故かこの時にはそのような自信が私にはあった。
「明理、学校から帰ったら私とずっと一緒に居てほしい。学校では百希さんと一緒に居てくれないかな。明理は何も起きないという自信が有ると思うけど、私は明理のことがとても心配だよ。お母さんが知ったらどんなに心配するかも判んないよ。本当に穂夏も妹を亡くして毎日のように泣いているんだよ。同じように明理が居なくなったらと思うとやっぱり私も凄く辛いよ。だからお姉さんのお願いを聞いてくれる?私に何でも話して欲しい。危ないことが起きないように私に明理を見守らせて欲しい。後、私もその数字メールのことを明理達と一緒に調べさせて欲しい」
私のお姉ちゃんであり、そして亡くなった采佳さんのお姉さんである穂夏さんの親友ということは、お姉ちゃんも数字メールの関係者ということになる。
「うん判った。学校以外では絶対にお姉ちゃんと一緒に居る。そして何でもお姉ちゃんに話をする。でも数字メールは私が知りたいから調べているの。だからお姉ちゃんが関わるというのはどうかなって思うの」私はお姉ちゃんにはこの問題に関わらせるべきじゃないと思っていた。もし本当にこの数字メールが不幸を運んでくるとしたら、危険な目に合うのは私一人で十分だと思う。そしてその私には絶対に不幸は来ないという自信がある。そこで、もしもお姉ちゃんを関わらせることになったら、お姉ちゃんはとても思い悩む性格で、感情を自分の中に押し込めるような性格だから、私がこのメールに何も起きないと自信が有っても、お姉ちゃんはメールが来ていなくても、私の代わりに辛いと感じてしまうことだろう。私に降りかかってくる火の粉を、お姉ちゃんが私を
「明理が関わるなと言っても無駄だよ。私は常に明理と居るから明理が聞いた事を私も聞くことになるんだよ。それともお母さんに相談してみる?」
お母さんを使うとは卑怯な……。お母さんにこのことを詳しく話したらどうなるのか予想が付く。とても心配のあまりお父さんに相談をして、常にお姉ちゃんと一緒に居るように言われる。それだけでなく絶対にすぐに学校から帰るように言われて、そこからの外出が出来なくされることが判っている。
「お姉ちゃん、判った。でも百希にも言ったことだけど、危険と判断したらすぐに調査は終わりだからね。絶対に深追いはしないようにって決めてるの」
「それならその数字メールはとても危なくて、危険が付き
要するにお姉ちゃんの言うことは保護者のような存在も絶対に必要でお姉ちゃんがその役を買って出ると言う訳だろうな。
そしてお姉ちゃんと話をしていると私のスマホが鳴る。LINEが来たという着信音だった。友達の浅村美帆さんからだった。
『私のところに変な数字だけのメールが来たよ!どうしよう!』
『美帆、落ち着いて。メールを消さないでそのままにして明日になったら先生にそのメールを見せてほしい。それで警察の人に相談して。あとなんて書いてあるか数字を私に教えて。そして出来たらメルアドも教えて欲しい』
私はすぐに返信した。これで既読になってくれたら……。一分……二分……既読が付かない。そう思って見ていると既読になったので私は安心した。
「明理、何だったの?」私の様子を見て心配していたお姉ちゃんが聞いてきた。
「友達からLINEが来たんだけど、数字メールを送られて来たんだって。それで私のところにどうしようって聞いてきたの」
「それでその子は大丈夫なの?」
「既読になったからたぶん大丈夫だと思うけど、今はその子からの返信待ちしてるんだけど返信が来ないの」
それからいつまで経っても返信が来ることが無かった。そして浅村美帆さんとは二度と会うことは出来なくなった。
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