第5話
自分で色々と調べては見たものの、結局のところ何の進展も無かった。
一人ではなかなか解くことのできなかった数字の意味も、お母さんにあっさりと解かれてしまったのは良かったと言うべきことなのだけれども、実際には事件の参考にもならない感じだった。
(
友達が言っているように私のスマホにも怪しい数字メールが来ていたのだが、私には事件に巻き込まれたり悪いことが起きていないことを考えると、事件と数字メールとの因果関係も怪しい感じにもなっていた。
国房美樹さん、西守采佳さん、浮本莉菜さんの共通点を考えているが、同じ城北第二高校の二年生で女性ということしか思い浮かばないのでした。
・国房さんは運動部でショートカットの黒髪でボーイッシュな感じ。156センチの51キロ、一人っ子で三人家族。殺人事件の被害者。
・西守さんは文化部で胸くらいまである茶髪でちょっと怖そうな感じ。158センチの53キロ、姉が一人いて四人家族。溺死。
・浮本さんは文化部で耳元くらいの長さの黒髪で大人しく常に本を読んでいる。152センチの48キロ、妹が一人いて四人家族。自殺。
見た目も家族構成も違っている。さらに言うと国房さんと浮本さんは数字メールが来ているけど、西守さんにはそういう話しは無し。
数字メール繋がりで言うと、私は胸くらいまである黒髪ロングのストレートで耳を常に隠しているけど、前髪は眉の辺りで揃えていて顔立ちが常に見えるようにしている。156センチ51キロで国房さんと同じくらい、姉が一人いて四人家族。
全員の見た目の共通点と言ったら何だろう……。全員マスク着用と言う感じかな?マスクと言ったらクラスだけで見てもマスク着用率はとても多いので全く参考にもならない。被害者三人と私の共通点と言うものは無いに等しいと感じていた。
私がノートに書き込んで考えていると隣の友人が覗き込んできた。
「明理。まだ事件のことを調べてるの?」
「うん、私のところにも数字メールが来てたんだもん。やっぱり気になるじゃん」
「マジで止めときなって。文字メールが来ていて気になるのは判るけどさ。そういうメールが来てる人ってすごい不幸になってるじゃん。だから逆に気にしないようにして不幸を遠ざけるほうが良いと思わない?」
友達の言っていることは
「やっぱり気になるよ。何でこのようなメールを送りつけてきたのかだけでも知りたいと思う」
私の言葉に友人は呆れた顔をした。
「判った。私も明理と一緒に調べていいかな?一人で調べるより二人なら判ってくる事も有るんじゃない?一人で行動するのはとても危ないと思うし、特に明理は数字メールを送られてきた被害者だから、余計に気を付けた方が良いから二人で行動したほうが絶対に良いでしょ」
友達の言っていることも良く判るけど、私と居たら自分自身も危険になってしまうのじゃないかな?自らを危険に晒すって何かありそう。
「それで
「本当の目的?オカルト研究部の部長の私として、こんな不可思議な事件を放っておく訳が無いでしょ」
オカルト研究部・一応、『部』と名前がついているが同好会の位置付けになっていて正式な部として認められていない。この学校ではミステリー同好会とオカルト研究部というものが存在していて、時々であるけど会報という印刷物を配布している。ミステリー同好会はこの世のミステリアスなものを書いたり、ミステリー小説の書評などを行っており、オカルト研究部はオカルト話や超常現象の話題がメインになっていて一応は住み分けが出来ている。
「百希ってオカルト研究部の部長になってるの?」
「そうだよん♪だから今回の事件もちょっとは興味があるわけよ。そこで明理の情報も教えてくれたら嬉しいなって思ってたりするの」
「でもさ、人が亡くなっているのにちょっと不謹慎なような気がしない?」
「だから私は怪しい数字メールの話題だけを調べているわけよ。事件については警察にすべて任せちゃえば良い訳だからね」
確かに数字メールに関して言えば奇妙な点が有り過ぎていた。そして私もこの奇妙な数字メールについて調べて行きたいと思っていた。
「百希さん、そういうことなら一緒に調べて行こうね。危ないことはしない。危険だと判断したら調査は終了するって事でどう?」
「明理は数字メールが事件と何かしら関係が有るって思っているわけね。でも危険なのは明理のほうでしょ?気を付けてよね。それなら仲間ということで」
百希さんが右手を差し出してきた。私はその手を握って百希さんと強く握手した。
「それで明理の今まで判ったこととか教えてくれる?」早速、仕事開始!という意気込みが感じられる言葉だった。
「私の調べたことと言ったらほとんど百希から聞いたことだよ。警察に話したことと言ったら@(アットマーク)の後ろがido.ne.jpだと言うことで、それを話すと信じられない感じで何回も本当に?って聞いてきたことかな。国房さんの事件の前に私に所に来たメールは、普通に消去が出来なくてメールを開いて内容を見るとそこで消去が可能になるという不思議なメールだった。あとはメルアド拒否をしても拒否が出来なくて送り続けられることと、拒否したのに拒否メールにアドレスが入っていなかったということだけだよ」私は自分の知っていることを百希さんに話した。百希さんは私の話したことがすべて信じられないと言う顔をした。
「ido.ne.jp? それは絶対に本当なの?って聞くと思うよ。だってもう使われてないもん」
「使われていないってどういうこと?」
「移動通信っていう会社が昔に有って、その携帯のキャリアに割り当てられたアドレスだよ。もうその会社は社名変更されてるよ」
使われていない昔のメルアドで送られてきたメールそんなことってある?
「いつの時代のメルアドなの?」
「私達が産まれるずっと前の会社じゃないかな?」
そんな昔のメルアドが今現在も使われているって考えられるのだろうか?むしろ逆にそのような昔のメルアドを使っていたら、今の会社に聞いて調べてもらえばすぐにでも送ってきた人を特定出来て身元がすぐに判って、警察も重要参考人と出来るのではないだろうか?でもそのような話を聞かないところを見ると警察の人も私の話をしっかりと調べてないような気がする。
「そんな昔のメルアドを使ってたらすぐにでも身元が判ってしまうよね。でも警察がそのような人を捕まえたっていう話は聞かないね」
「調べてみたけど該当者が居なかったのかもね。あと、消去が出来ないってどういう意味?」
私は自分に送られて来たメールのことを細かく話した。百希さんはまたしても信じられないという顔で聞いていた。
「そのようなメールが存在するって言う報告は無いし、そのようなメールがあったら大問題になってネットでも大騒ぎになってるはずなんだけどな」
確かに百希さんの言う通りでそのようなメールが有ったら、SNSとかネットで大騒ぎになっていることだろう。しかし全く騒がれていないところを見ると、私達だけにそのようなメールが送られて来たということになってしまう。何故、私達だけにそのようなメールを送ったのか?という疑問も出てくる。
「そういえば数字のことも何か判ったんだよね?この前みんなに5桁の数字を見せ回って聞いてたもんね?」
百希さんから数字の事を聞かれたので、昔のポケットベル時代に使われていた数字メッセージだったということを伝えた。
「昔使われていたメルアドに、昔使われていたメッセージか……」百希さんは何かそこに突破口がありそうな様子で考え出していた。私達に送られて来たメールは過去に使われていたものだった。私達が産まれるずっと前の昭和と呼ばれていた時代。YOUTUBEで昭和という時代の動画を見ることが出来るけど、私達にとってはもうすでに映像として、そしてお父さんやお母さんやお爺さんやお婆さんに聞く以外に昭和という時代について私達には知ることが出来ない。歴史の教科書には昭和時代のことは出てくるかな。
私達にとっては、もうすでに過去の歴史となっている時代なのだった。
「百希さん、昭和時代についてなにか知っていることは無い?」
「昭和時代っていうと、第二次世界大戦と高度経済成長期?後はなんだろうね?」
「第二次世界大戦って昭和時代だったっけ?第一次世界大戦はいつ?」
「第一次は昭和時代の前の大正時代じゃなかったっけ」
日本の歴史が苦手な私にとって昭和時代とか大正時代とか言われても良く判らない。とにかく私達の産まれる過去の時代のことだということは知っている。
「大正時代で明治時代で昭和時代の順番だよね?」
「明理、いくら歴史が苦手だと言っても、自分の国の時代の順番くらいはちゃんと覚えておきなよ。明治時代で大正時代で昭和時代の順番だよ」
「よくお父さんがバブルの時代は良かったって言ってたけど、バブルの時代って昭和時代?」
「たぶんだけど昭和時代から平成時代の初め頃かな?それについては私もよくわかんない」
ポケットベル、昭和時代。私達の全く知らない過去の世界が私達の身近な事件として私の目の前に来ている。
お父さんやお母さんの小さいときの世界。学生だった世界。もしかしたら両親が私達くらいのときにポケットベルというものが流行っていたのかもしれない。時代というものを通り過ぎて今の私達に向けたメッセージなのかな?『11104』と『1056194』という数字メッセージ、『逢いたいよ』と『今から行くよ』というメッセージ。過去に送られていた迷子メールが今現在の私達の時代になって顔を出してきているような気がした。この数字メールがなぜ今になって現れてきたのかまだ全然判らないけど、これからしっかりと調べていったら判る気がする。百希と一緒に調べて行ったら、すべてが判るような気がする。
私は百希の顔を見た。百希は私を見て笑顔を見せてくれた。私も百希に笑顔で答えた。
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