第5話 部活動

大江君についていくと体育館に着いた。ここはバスケットボール部が使う体育館らしく、ボールをついたときのダムダム音が外に響いていた。


「大江君ってバスケやってたりした?」


迷わずここにきていたので興味があるのだろうと思って軽く聞いたのだが、

どこか寂しそうな表情を浮かべながら、

「中二までやってたけど、つまんなくてやめた。」

と言われた。


「そうなんだ…。でも見にきたってことはまたやろうと思った?」


ちなみに僕も中学生のころ3年間頑張っていたが、万年補欠を頂くほどの下手くそなので、高校ではやるつもりはなかった。


「んー、や、ほか見に行こうぜ」


今度は悲しそうな表情を浮かべている大江君のことを、今は気に止めることはなかった。






---


「高校って部活多いよな」


それから僕たちは卓球、バレー、サッカー、テニスなど、球技の部活を見て回っているが、どうもこれがやりたい、と思うものに出会えないでいる。


さっきから運動部ばっかみてるからさ、次は文化部行く? とのことなので、次は軽音部に行くことにした。


---


『ようこそ!軽音部へ!』


音楽室に着くと、大きな字でそう書かれた看板が置いてあったのでわかりやすかった。


「なんか、部屋に入るのって緊張するよな」


「そうだね。運動場とか体育館と違ってドキドキする……」


緊張しながらも扉を開けると、、

ウィイィイーン!と、身体の芯に響くような音が鳴っていた。


「あ、新入生?今から演奏始まるからよかったら聴いていってね」と入り口付近にいた一人の先輩が椅子を2つ用意してくれた。

僕たちが座って少ししたら、

「では今から新入生歓迎会を始めたいと思います!今日は3曲、1.2曲目はカバーで、3曲目は軽音部オリジナルの"Everyone is Friends"を弾くので最後まで聴いていってください!」


ギターを肩にかけた女の先輩がそう言い終わると同時に演奏が始まった——


---



「みーんなーありがとうー!!」


演奏が終わる頃には全員が立ち上がって盛り上がっていた。


1.2曲目のカバー曲を弾いてる時はここまでではなかったのだが、3曲目の途中からここまでの盛り上がりになっていた。

僕もここまで感動したのは初めてかもしれない。

高校生でもこんなにすごい演奏ができるんだ と心を打たれた。


それは大江君も同じらしく、

「俺軽音部に入るわ」と言っている。



——そうして僕たちは軽音部に入ることを決心した。


---


片付けが終わった後に先輩たちがそれぞれの楽器のことを軽く教えてくれるらしいので、僕と大江君は残っていた。


演奏を聞いていた一年は20人ほどいたのだが、今残っている人数は8人ほどだ。


ん、この人って……

片付けている間は外で待っててーと言われたので、音楽室の外に出ると見覚えのある人が視界に入った。


「あの、今朝電車で——」

「あ!!」

「わっ!!すみません!!」


大にな声をだされてしまったので、

いきなり声かけたのはまずかったかな。ナンパだと思われたかな。と不安になりつい謝ってしまった。

大江君もちょっと驚いてる。


「あっ。すみません!でもこんなとこで会うとは思わなくてびっくりしちゃって…」


「僕も驚きました、あ、今朝すみませんでした本当に」


「全然!人多かったし仕方ないですよ」


そう。この人は今朝電車で会った人だ。

改めて見てもやはり髪がすごく綺麗だなーと思う。


僕がその人に見惚れていると

隣から「友達?」という声がして我に帰った。


「ごめんごめん、この人とは朝電車で会ったんだ。それでまたこんなところで 再会 できたから驚いた!」

と説明すると、

大江君は「あ、そうなんだ。こんにちはー」と、軽く挨拶した後、俺トイレ行ってくるわーと言い、この場を離れていった。


「あ、自己紹介まだでしたね!私は雪平優梨ですっ!よろしくおねがいしますね」

ペコってしながらよろしくと言われてまた僕は見惚れてしまうが、

「あ、えっと僕は神代藍斗です。よろしくおねがいします」とできるだけ冷静を装って返事をした。


そのようなやりとりをしていると先輩方の片付けが終わったらしく、待たせてごめんねー!入ってー!と言いながら扉を開けた。


「あ、僕は友達戻ってくるの待ってから行きますね」


「あ、わかりました〜!じゃあ先行ってますねっ」


みんな中に入っていったが、僕は流石に一緒に来た大江君を置いて説明を受けるのはダメだと思い、待つことにした。


それにしても、ほんと驚いた。軽音部に入るのかな。

だったらこれからもっと話せるよね…あ、LIME聞くのとかありかな、など考えていると


「あれ、もう入っていい感じ?」


「あ、きたきた。もうみんな先中入ってるよー」



「そうなのか。え、なら藍斗も先に聞いてればよかったのに」


「いやいや、後からって入りづらいじゃん?さっきも緊張したしさ」


「そんなこと気にしてくれてたのか…藍斗は優しいんだな」


なんて会話をしながら僕らは再び音楽室に入った。

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