第4話 新入生テスト

「結局俺らなんも入らなかったなー」


「みんなやる気満々だったね。委員会って入ってるとなんかいいことあるっけ」


「とくになんもなくねー? てか、次の時間からテストらしいじゃん、藍斗は勉強してきた?」


「え、テスト?なんの?」


詳しく聞くと次の時間から新入生テストをするらしい。

国数英の3教科らしいのだが、僕はそんなの初めて聞いた。

「……それ、悪い点数でも退学とかないよね?」


「さすがにそれはないだろ。とりあえずがんばろーぜ!」と励ましてくれたが、僕は不安でいっぱいになっていた。




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「起立、気をつけ、礼、 着席」


低く落ち着いた声で発された「礼」という言葉に合わせて僕たちは「お願いします」と挨拶をした。この学校では始まるときに委員長が、終わるときに副委員長が号令をかけることになっているので、今のは村上君の声だ。



「では今からテスト用紙を配ります。えーまた、今回のテストの結果によっては、課題を課す可能性もありますので、あまり手を抜かないように頑張ってください」


……僕の悪い予感は当たった。

退学にならないのは良かったけど、課題が増えるのは嫌だ。せっかく高校に入って楽しもうとしている時にそんなことやりたくない!


と言っても今更なす術もないので、ケアレスミスだけは無くすように頑張ろうと思う。


---


「きりーつ! 気をつけ! さようなら!」


今日は4限授業なので、最後の科目の数学を終えた後、ホームルームで次の日の予定などを説明されて下校となった。


「終わった…」


「おつかれ、どうだった?」


「だから、終わった。二次関数?おうぎ形の面積?なにそれ高校の内容なの? そんなの予習してなきゃ無理だよ……」


英語と国語は手応えがあったが、数学だけは全くできなかった。僕は予習なんてしてないしできなくて当たり前だ などと豪語していた。


「いやいや、ちゃんと中学の時習った範囲だよ。もしかして全く覚えてないの?」


…単純な言葉ほど心にグサッとくるものは無いと思う。


「え、そうだっけ…全然覚えてない…」


「まじかっ。まぁ、人それぞれ得意不得意あるって。どんまい!」


どんまいと言われても…。

あぁ、数学なんて生きてく上でいらないじゃん。足し算とか掛け算とか、そのくらいの計算ができれば生活困らないよ…。


「終わったこと悔やんでてもしゃーないよ、今日これから部活見学できるらしいんだけど一緒に見に行かね?」


「あ、そっか!

高校って部活の数多いから色々見てみたいんだよね」


「じゃあ行こうぜ!」


と、僕はさっきのテストのことなんてすぐ記憶の外へ放り出して部活動の見学に行くことにした。

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