第146話 襲撃者の正体

 夜襲の後、ミリネ、キャン、セリナ、俺はラディクたちが使っている部屋に押しこめられた。

 ルークたちも同じ部屋にいるから、さすがに狭い。


「グレン! 襲われたんでしょ! 四人もやっつけたって? 無事でよかった!」


 リンダが、俺の両手を掴んでブンブン振る。


「えっ!? グレン、ホントに四人もやっつけたの? ……凄いね」


 ルークは、かなり驚いてるようだ。


「うん、ピュウが教えてくれなかったら、危なかった。そっちは大丈夫だった?」


「うん、危なかったけど、コルテスが気づいてくれてね。それに、こっちは襲われたというより、さらわれかけたって方が正しいね」


 コルテスの方を向くと、彼は魔術少女イニスの耳元でなにか囁いているようだった。


「え?! 誰が狙われたの?」


「今はまだ秘密。ラディクさんから話があると思うよ」


 その時、部屋の扉が開いて、ルシルが顔を出した。


「話があるから、みな食堂に集まれ」

  

 彼女は不愛想な声でそう言うと、バタンと扉を閉まめた。

 いつも愛想のないルシルだけど、なんかそれにもまして不愛想な気がする。



 ◇


 食堂のテーブルに着いたみんなの前で、一人立ちあがったラディクが話しはじめた。

 人払いしてあるのか、宿の人は姿を見せない。

 襲撃があるまで部屋にこもったままだった、ガオゥンの大きな背中もあった。


「みんな集まったね。何があったか説明するよ。さっき襲ってきたのは、教会の実行部隊『夜明けの光』だ」


 やっぱりね。白ローブは着てなかったけど、そうだと思ったよ。


「彼らが狙ったのは、恐らく三人。ミリネとグレン、そしてイニスだ」


 えっ!?

 ミリネだけじゃなくて、俺も狙われたの?

 それになんでイニスが狙われたんだろう? 


「イニス、いいかな?」


 ラディクがイニスにそう尋ねると、彼女は小さく頷いた。


「イニスは、『森の国』つまり、エルフ王国の第三王女だ」


「「ええっ!?」


 ラディクの説明を聞いて声を上げたのは、ミリネと俺だけだった。

 イニス、例の悪辣あくらつ女王の娘だったの?

 もしかして、みんなってそのこと知ってた?


「『絆』のみんな、ダマしていてごめんね。今回の依頼、グレンのフクロウを運ぶっていうのは擬装でね。本当の目的は、イニスを連れてきてほしかったんだ」


 ルークは、やっと納得できたという表情でこう言った。


「じゃあ、『剣と杖』のコレチャンさんが、ボクたちに依頼を譲ってくれたのも?」


「そう、彼らには、前もってそう頼んであったんだ」


 さすがというかなんというか、帝都にいた時から準備してたんだね。

 しかも、直接『絆』に依頼を出すんじゃなくて、間にコレチャンさんたちを挟んでる。芸が細かいなあ。


「ここからは、本当に命がけの旅になる。実際、先ほどの襲撃で、グレンが命を狙われた」


 そうか。アイツら、俺を殺してミリネをさらおうとしたんだな。

 となると、俺の能力について、もしかすると知っているのかもしれない。

 

「ルーク君とリンダさんは、コレンティンに引きかえすことをお勧めするよ」


 あれ? コルテスは?


「コルテスは、引きつづきイニス姫殿下の護衛を頼む」


「ああ、分かってるよ、ラディクにい


 えっ!? どういうこと? コルテスってラディクの知りあい?

 

「『剣と盾』は、カフネが帰ってきたらすぐここをたつよ。グレンとミリネは私たちに同行するんだ。グレン、キャンとセリナの面倒は、最後まで君が見てくれよ」


 そんなことだろうと思いましたよ、やれやれ。

 

「では、いつ出発することになるかわからないから、各自しっかり体を休めておくように。そして、再び襲撃がないとも限らないから油断しないようにね」


 そんなの、ゆっくり休めるはずないじゃんか!



 

 

 

 

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