第127話 獣王の城(下)

 白い玉座から立ちあがった巨体が、俺たちを見おろしている。

 この人の身長って二メートルどころじゃないよね。

 それより、これって、床に膝を着いたりしなくていいの?

 

「グオゥン君、久しぶり」


 ラディク、なにそれ!?

 いいの、そんな呼び方で?


「あれから、もう三年だのう」


 あれ? おおきな人、ラディクがタメぐちでも怒らないの?


「あの時は、ずいぶんと世話になった。勇者殿は、変わらぬなあ」


 普通にしゃべってるし。


「グオゥン君も元気そうだね。部族が多いから、獣人をまとめるのって大変でしょ」  


「ははは、そのようなこと心配してくれるのは、ラディク殿くらいだよ。あなた方が力添えしてくれるなら、そのような苦労はないのだがな」


「ははは、ボクらはどこの国にも属さないよ。気ままな冒険者だからね」


「相変わらずだのう。それより、そこの三人は、新しい仲間かな?」


 うわー、こっち見ないでよ!

 迫力ありすぎて、チビりそう。


「まあ、そんなとこだよ。それより、そろそろゆっくり休みたいんだ。ワンニャンに寄る予定だったんだけど、いきなりここへ来たからねえ」

 

 ラディクらしくない、歯の奥に物がはさまったような言い方だ。

 王の右側に立つ、白ローブをまとった男が、ピクリと反応するのが見えた。

 頭の上に、くるりと曲がったつのがついてるから、羊の獣人かもね。

 横長の瞳が、なんか気持ち悪い。 

 白いローブには、いい思い出がないから、その先入観があるのかもしれないけど。


 猫っぽい大きな獣人が、やっと玉座に腰を下ろす。

 座っても、迫力はあまり変わらない。

 羊っぽい獣人が、その耳元でなにか囁いた。


「そういえば、メイメイの話では、コレンティン帝国で山が消えたそうではないか」


 ええっ、ここでいきなり、その話ですか!?


「そうなんだよ。アレについては、ボクらも、国王陛下から依頼を受けて調べてたんだけど、結局何も分からずじまい。星が落ちたんじゃないかってことになってる」


 うわ、ラディクが顔色一つ変えず、大ウソついてる。


「ふむ、星降りの伝説か。確かに、そのようなこともあるかもしれんな」


「じゃあ、もうゆっくりさせてもらっていいかな?」


「ああ、済まなかったな。メイメイ、勇者殿がくつろげるよう手配いたせ」


 王様に言葉を掛けられて、羊っぽい人が頭を下げたけど、その前にチラリとミリネの方を見たような気がした。

 だけど、あの人って、間違いなく羊さんだよね。名前も「メイメイ」だし。


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