第121話 スキルゲージ

 カッペーリの街での滞在三日目。

 勇者たちは、揃ってどこかへ出かけていった。

 ミリネもそれについて行ったので、だだっ広い部屋にキャンと俺二人だけという事になった。

 一人で街へ出ると、獣人に何をされるか分からないし、ルシルからも宿から出ないよう言われている。

 やることがないから暇を持てあますことになった。


 キャンの世話?

 この小さな三角耳の生きものは、やたらと寝るんだよね。

 今もベランダの椅子に座る俺の膝で寝てるんだけど、横向きでお腹を俺の太腿に載せ、手足と尻尾しっぽををぶらんと宙に浮かせている。まるで猫のひざ掛けといった感じ。

 足が暖かいので眠くなるけど、昨日も部屋で一日中ごろごろしていたから、寝るところまではいかない。

 せっかくだから、スキルでもチェックするか?


************************

名前:クロダグレン

年齢:16

レベル:145

職業:無し

犯罪歴:無し

装備:無し

スキル:言語理解、言語伝達

ユニークスキル:【中二病(w)】(レベル8)

  派生スキル:【ファッション(虚)】(レベル3)→

  派生スキル:【ポーズ(痛)】(レベル3)→

称号:竜の子

   山を喰らいし者

   海を割りし者

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 そう、称号が増えてるんだよ。【海を割りし者】ってやつ。これはスキルを海に向けて撃ったとき手に入ったんだろう。

 レベル? 

 賢者マールに調べてもらったところ、ギルドカードは壊れていないとのこと。

 彼の話によると、以前「ぶっ飛べ!」で山を消しとばしたとき、急にレベルが上がったのは、そこに住んでいる魔獣も一緒にやっつけちゃったからだろう、って。

 今回レベルが上がったのも、海でスキルをぶっ放した時、海にいる魔獣を巻きこんでしまったからだろう、とのことだった。


 でも、頼りないおじいちゃんだよ? 彼が言う事を百パーセント信じるわけにもいかないよね。

 あれ?

よく見ると、派生スキルの【ポーズ(痛)】ってのが、レベル2からレベル3へ上がってるね。それに比べ、【ファッション(虚)】はレベル3のまま。

 なるほど、入江でスキルを使った時、【ポーズ】は使ったけど、【ファッション】は使ってないもんね。

 魔獣を倒すとき使っていない派生スキルは、どうやら上がらないらしいね。


 あれ? 

 派生スキルの右側に「→」がついてるぞ。

 これ、昨日マールに相談した時は、無かったはずなんだけど。

 視点を【スタイル】の右にある「→」に固定すると……おっ、なんか出てきたぞ。


 補助スキル:スキルゲージ 

 0…………………………50……………………100


 なんだこれ?

 お、よく見ると、「100」のところが点滅してる。

 もしかして、これってスキルの強さを調節できるんじゃないか?

 もし、そうなら、スキルを使うたび、街が消えるんじゃないかって心配をしなくて済むかもしれない。

 願望だけどね。


 さすがにこの部屋で試すことはできないから、マールが帰ってきたら、またあの入江へ連れていってもらおう。

 ひざ掛けと化したキャンの毛を撫でながら、俺はそんなことを考えていた。



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