第114話 試し撃ち(下)
俺は、
マールは、少し離れた所にある、波に洗われ丸くなった岩にちょこんと座り、こちらを見ている。
目が白い眉毛に隠れているから、居眠りしてるのかもしれないけどね。
口ヒゲの辺りに魔法陣が浮かんでるから、たぶん起きてるんだろう。
俺は息を整えると、二つしかない呪文の一つを唱えた。
「ぶっ飛べ!」
ゴウッ!
海面が白く切りさかれる。それは五十メートルほど沖まで続いていた。
なんかおかしいぞ。
これ、威力上がってないか?
まさか、この前見たステータス、正しいなんてことないよね。
……ナイナイ、レベル131とかあり得ないから。
気を取りなおして、もう一度試してみるかな。
今度は、ステータスを出したままにしておき、右腕に左手を添える。
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スキル:【言語理解】、【言語伝達】
ユニークスキル:【中二病(w)】(レベル7)
派生スキル:【ファッション(虚)】(レベル3)
派生スキル:【ポーズ(痛)】(レベル2)*100
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あれ?
以前は、確か「*10」だったのに「*100」になってる。
なんでだろう?
姿勢は前と変えてないんだけど。
もしかして、【中二病(w)】のスキル自体がレベルアップしたから、それが派生スキルにも影響してるのかな?
とにかく、思いついたことをやってみるか。
右腕から左手を放すと、もう一度最初の姿勢を取る。
ただ、いつもは開いている右手を今回は握ってみた。
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派生スキル:ポーズ(レベル2)*30
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「ぶっ飛べ!」
ゴゥ
おっ、明らかにさっきより、海の切れ方が少ない。
よし、次は……。
人差し指と親指を伸ばし、右手で銃の形を作る。
「ぶっ飛べ!」
ゴゴウッ
スゲー! 海より少し上を狙ってるのに、百メートルくらい白い線がついてないか?
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派生スキル:ポーズ(レベル2)*500
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おー、ポーズに「*500」がついてる!
次は、人差し指と中指を伸ばして……。
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派生スキル:ポーズ(レベル2)*1000
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うわっ、「*1000」になってるじゃん!
「ま、待て!」
マールが叫んでいるが、もう遅い。
「ぶっ飛べ!」
キュゴゴゴゥッ
何かが潰れるような音がすると、遥か向こうまで海が大きく割れた。
「波が来るぞ!」
いつの間にか、マールが俺と海の間に立っている。
彼は、沖の方へ向くと呪文を唱えた。
「全てを守る堅き盾よ、水を友とし、ここにそびえたて!」
初めて聞くマールの呪文は、俺たち二人を覆う水のドームを作った。
ズシーン
そんな音がすると、水の防壁を通して届いていた陽光が急に暗くなる。
少し時間がたつと、再び、明るくなったが、また音がして暗くなる。
それが何回か繰りかえされた。
ドームが消えると、周囲の景色が見えてくる。
海がざわざわと波立ってるほか、特に変わりはないように見える。
後ろを振り向くと……。
「えっ!?」
さっきまで白かった砂浜が、土色になっている。
どうやら、入江の一番奥まで海水が押しよせたようだ。
砂浜に打ちあげられ、ピチピチ跳ねている魚を手ですくい海へと返す。
コツン
「痛っ!」
振りかえると、杖を振りあげたマールがいた。
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