第108話 勇者たちの会合

 太い腕を胸の前で組んだゴリアテが、ミリネが教会から狙われるきっかけになった「奇跡」について触れた。

 ルシルは、ミリネが冒険者学校に入ってからのことを話す。

 クレタンダンジョンで現れた、紅い目の化け物については、ことさら詳しく説明している。

 あの事件って、ルシル自身が緘口令かんこうれいを敷いたんじゃなかったっけ?

 

「次に、グレンが『黒狼』に狙われることになったきっかけだが……」


 ルシルから秘密にするよう念を押されていた『三つ子山事件』についても、全て話すよう言われる。


「ほうほうほう! 嬢ちゃんから聞いていたが、少年、お主は面白いのう!」


 俺の話を聞いたマール老が、なぜかやたらと興奮している。

 この人、ちょっと危ない人じゃないのか?


「念のために言っとくが、グレンはすでに私の弟子じゃぞ」


 ニヤリと笑ったルシルが強い口調でそう言うと、白ヒゲの老人が泣きそうな声を上げた。


「そ、そんな殺生な~」


 マールが、その細い両腕をルシルに向け、プルプルと伸ばす。

 なんか、マールって格好は賢者っぽいのに、中身グダグダだよね。


「問題は、これからどうするかだが……」


 勇者が、右手の人差し指と中指を揃え、それを自身の額に当てる。

 考えるポーズまで決まってるなんて、嫌味以外のなにものでもない。


「まずは、『夜明けの光』の力を少し削いでおこうかの」


 賢者マールが、そんなことを言った。


「じじい、あんた『黒狼コクロウ』の事は大丈夫って言ってたけど、ホントなんでしょうねえ?」


 ルシルが疑いの視線をマールに送る。


「ホント、ホント、マジもんのホントなのだよ、嬢ちゃん」


「だからー、私は嬢ちゃんじゃない!」


「ふむ、だが、そのつる~んぺた~んな体形はやはり――」


「ジジイ! あと一言でも言ったら殺す!」


 おいおい、ルシルとマール、どうなってるの!?

 犬猿の仲ってやつ?


「仲がいい二人のことは置いといて、話を本題にもどそうぜ」


 ゴリアテの発言に、ルシルとマール、二人が同時に喰いつく。


「「仲良くない!」」


 この四人、伝説のパーティじゃなかったの?

 なんか、変なのを通りこして面白いぞ。


「グレン、何を笑っておるのじゃ! お前のことも話してるのじゃぞ!」


 必死に笑いをこらえていると、ルシルに突っこまれてしまった。


「どーも、すみません(笑)」


「ぐぬぬ、こやつ、弟子の癖しおって!」


 いや、勝手にルシルが自分の弟子を名乗るようにって言っただけだから!


「師匠は選ばんとのう。どうだ、ワシの弟子にならんか?」


 えー?

 へんてこ爺さんの弟子ですか~?


「お主、いま、ワシのこと、変なジジイじゃと思わなんだか?」


 な、なんでそれをっ!?

 マールって、変なのか凄いのか、ますます分からない。


「とにかく、マールに策があるようだから、それでいこうか」


「そうだな」

「それでいいよ、ラディク君!」


 ゴリアテ、ルシルがラディクの発言に同意する。

 勇者スゲー!

 このパーティまとめるって、マジ尊敬する。

 カッコ良すぎてムカつくけど。





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