第72話 フォレストボア討伐(1)

 フォレストボア討伐当日、ギルドで集合した『剣と杖』のみんなは、どうせ途中だからと、俺が借りている家に寄ってくれた。

 

「おい、ルーキーの癖に、ずいぶんいい所に棲んでるなあ!」


 玄関を潜ってすぐ、山賊おじさんトカレがそんな感想を洩らした。

 

「親切な人が貸してくれたんです」


「ふうん、まさか女性じゃないでしょうねえ?」


 整った顔つきの弓師ラズナは、何かを疑っているようだ。


「女性ですが、おばさんですよ」

 

 見てくれは少女なんですけどね。


「余計に怪しいわね」


 うーん、ラズナの疑いを晴らすのは難しそうだ。


「小さいとはいえ、王都でこれだけの家だと、一週間借りるのに銀貨二枚じゃ足りないわね」


 黒ローブの魔術師メイリーンが、周囲を見回してそう言った。


 ええっ? 週に二万円以上もするの、ここ?


「グレン、それより、その肩のはなんだ?」


 革鎧の剣士コウチャンが俺の肩にとまったピュウを指さした。


「俺の従魔です」


「ほう、テイマーでもないのに、そんなものを従魔にするとはな、さすがレベル43だ」


 これ、やばくない? テイムしてないと思うんだけど……まあいいか。


「そいつも連れていくのか?」


「ええ、戦闘でも役に立ちますから」


「連れていくのはいいが、ソイツは、戦闘に参加させないでくれ。連携の邪魔になってもいけないからな」

 

「分かりました、コウチャンさん」


「では、フォレスター魔術学院へいくぞ」


「えっ!? 確か、目的地って、『静かの森』じゃないんですか?」


 コウチャンは、腰に差した剣の柄を右手で叩きながら説明してくれた。


「フォレストボアが学院の敷地に入ってるなら、そこで討伐することになるからな。

 学院の許可を取っておくんだ」


「……そうですか」


 せっかく謹慎になったのに、こんなにすぐ学院を訪れることになるとはね。



 ◇


「グレンだったな、なぜ君がいるんだ?」


 俺が『剣と杖』のみんなと学院長室へ入ったとたん、部屋に一人だけいたハーゲル学院長から声が飛んだ。

 こうならないように、山賊おじさんの広い背中に隠れていたのに……。


「あれ? グレン、お前、学院長代理と知り合いか?」


「コウチャンよ、ワシはこの度、正式に学院長となったのだぞ!」


 ハーゲル爺さん、威張ってるねえ。


「俺、最近まで、この学院にいたんですよ」


「「「ええっ!?」」」


 なんか、『剣と杖』の四人がすっごく驚いてるんだけど……。


「そやつは、すでに無期限の謹慎になっておるがな、わははは!」


 ハーゲル……じゃなかった、ハゲ爺め。めちゃ、喜んでる。まあ、俺も謹慎になって嬉しかったから気にしないけど。


「おまえ、一体、何やらかしたんだ?」


 山賊トカレが、呆れたようにそう言った。

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