第71話 ギルドからの頼み(下)


「グレン君、ここにいる皆さんは、ギルド所属の冒険者です。今回の依頼は彼らのサポート役よ」


 テーブルの脇に立つ受付のお姉さんが説明してくれる。


「ええと、サポートって、俺の仕事は荷物持ちですか?」


「ええ、それもあるけど――」


 お姉さんの言葉に剣士が続ける。


「俺たちのパーティには、盾役もいるんだが、そいつがちょっと体調を崩しててな。だから、本当なら盾役を代れるヤツがよかったんだが、レミィのオススメだからな。手伝ってくれるか?」


 受付のお姉さんは「レミィ」という名前らしい。

 それより、何を手伝うんだろう?


「今回の依頼はフォレストボアの駆除だ。場所は、帝都の西にある『静かの森』だ」


 山賊おじさんトカレが疑問に答えてくれた。

 

「森の一部が魔術学院の敷地だから、国からギルドに依頼が来たそうだ」


 そう言って剣士コウチャンが、ため息をついた。


「盾役さえいれば、何の問題もなかったのだがな」


 俺には分からないけれど、フォレストボアの討伐に盾役が必要なのだろう。


「ええと、俺、盾なんてやった事ないんですが?」

 

「グレン君、君、フォレストボア倒したことがあるでしょ」


「まあ、あるような無いような?」


 あの時は、無我夢中だったから、よく覚えていないんだよね。


「それにレベル43だから、きっと大丈夫よ」


「「「ええっ!?」」」


 レミィの言葉に、『剣と杖』のみんなが驚きの声を上げる。

 俺自身も驚いたけどね。


「おい、いってえどうなってる!? お前、エルフか?」


 トカレから尋ねられるが、質問の意味が分からない。

 エルフならレベルが高いのかな?


「グレン、君、年は?」


 魔術師のメイリーンが、驚いた顔のままそう言った。


「ええと、多分十六才です」


 卵から生まれた時を基準にしたら、ゼロ歳児だから。


「なんで自分の年に自信ないのよ。とにかく、十六才でそのレベルっておかしくない?」


 メイリーンはそう言ったが、何がおかしいんだろう?


「ええと、失礼ですが、みなさんのレベルは?」


「38だ」

「35」

「36よ」

「私なんか、まだ29」


 ええっ!? それってどういうこと?

 なんでみんな、俺よりレベルが低いの?


「そうなのよ、グレン君。レベル40って普通じゃないの。伝説のパーティ『剣と盾』のメンバーでも50ほどだったのよ」


 ど、どうなってるの、これ?


「ピュウピュウ」


 肩伝いにピュウが、テーブルの上に降り、俺の右手甲にある紋章をクチバシでつついた。

 もしかして、ドラゴンの卵から生まれたってのが関係してるのかな。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る