第31話 パーティ体験(下)

「一匹抜けるよ!」


 ルークが叫ぶ。

 前衛の二人、ルークとリンダの間から、スモールバットが飛びだしてくる。 

 

「オイラにまかせて!」


 長身のコルテスが短槍を繰りだす。

 槍の穂先がコウモリの翼をかすめた。

 通路の端に落ちたスモールバットが、バタバタしている。

 

「ストーンバレット!」


 魔女帽子をかぶったイニスが杖を振ると、拳大の石が勢いよく飛んでいく。

 それは見事スモールバットに当たった。

 動かなくなったコウモリが、声も出さず消えていく。


「凄いね!」


 俺の声に、みんなが振りかえる。


「そんなことないよ」


 ルークはあくまで謙虚だね。


「今のが連携?」


 気になったことを尋ねてみる。


「うーん、連携っていうほどじゃないけど。だいたい、盗賊役のリンダが前衛をしてたりするから、ウチはまだまだだよ」


「盗賊が前衛したらいけないの?」


「そうだね、盗賊は前衛に出ないのが普通なんだ」


「だから、後衛にしてって、前から言ってるじゃない!」


「ごめん、リンダ。ボクたち四人だと、どうしてもこういう編成になっちゃう」


「ルーク、なんなら俺が前衛してみようか?」


「ありがとう、グレン!」


 リンダが俺に駆け寄り、笑顔を見せる。


「リンダ! まだそうと決まったわけじゃないよ!」  


 パーティリーダーのルークは腕を組んで考えている。


「どうして悩んでるの?」


 俺の質問に答えたのは、魔術師のイニスだった。


「後衛の私が攻撃魔術で援護する時、前衛の動きが予測できないと、間違ってその人を撃っちゃうかも知れないでしょ?」


「なるほど。じゃ、俺一人で前衛を試すから、こっちの動きに慣れるまで援護はしなくていいよ」


「あんた、そんなこと言ってもねえ――」


「イニス、一度グレンに任せてみようよ。ここは第一層だし、試すなら早いほうがいいでしょ?」


「まあいいわ。グレン、援護は期待しないでよ」


「ああ」


「おいらが援護するから安心するんだな」


 ノッポのコルテスが短槍の石突きで、とんと地面を突いた。


「じゃ、コルテス、何かあったら援護は頼むよ」


 俺は中衛のコルテスに声を掛け、前へ出た。

 ルークとリンダが後ろへ下がったので、前衛は俺だけになった。

 

「さっそく来たわよ!」


 盗賊のリンダがみんなに注意を促す。

 二十秒くらいして、羽音と共に三羽のスモールバットが姿を現した。


 俺はその場で待たず、前へ飛びだし短剣を振る。

 最初の一振りで二匹、二度目の一振りで残りの一匹を切りすてる。

 この短剣は今日買ったばかりのもので、手に馴染んでいるとは言えないが、それでも動きが遅いコウモリくらいなら、なんとかなりそうだ。

 研ぎに出しているドロップ品の短剣なら、もっと簡単に対処できただろう。


 振りむくと、ルークたちがぽかんと口を開けている。


「あれ、どうしたの?」


「「「……」」」


「今のダメだった?」


「あんた、本当にレベル1なの?」


 眉をひそめ、イニスが尋ねる。


「ええと、この前、調べた時はそうだったよ」


 そういえば、テラコスの冒険者ギルドで最初に確認してから、冒険者カードをチェックしてなかったな。

 俺はポケットに入れていた冒険者カードを手にした。


 ダンジョンの薄暗がりの中、ステータスが浮かびあがる。

 

************************

名前:クロダ グレン

年齢:16

レベル:36

職業:無し

犯罪歴:無し

スキル:言語理解、言語伝達

ユニークスキル:【中二病(w)】(レベル2)

称号:竜の落とし子

************************


 ええっ!

 なんでレベルが36?

 これ、まちがいなく壊れてるよね。

 それに、中二病スキルがなぜかレベル2になってるし?

 このスキル、ますます意味不明だな。

 

「冒険者カードが壊れてるみたいだよ。うまく表示されない」


「へえ、そんなの初めて聞くけど。ダンジョンから出たら、すぐにギルドで調べてもらうといいよ」


「ありがとう、イニス。そうするよ」


 

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