第23話 出会い

 ピュウが元気になったので、ダンジョンに行くことにした。

 初心者セットを買ってあるから、五階層までは無料だしね。

 ミリネは、やっぱり一緒に来てくれなかった。


 この前、ダンジョンで馬鹿馬鹿って凄く怒ってたからね。

 でも、なんであんなに怒ってたんだろう?


 ◇


 カンテラを持ってきていないから、今日はずいぶん動きやすい。

 スライムも、スモールバットも、ショートソード一振りでやっつけられるし。

 なんか、絶好調って感じだね。

 おや、人が集まってる。

 何だろう。


「こんにちはー!」


「こんにちは!」

「おっす!」

「おー!」

「ちわっす!」


 俺よりまだ年下っぽい男女四人が地面に直接座っている。

 少年二人、少女二人でダンジョン攻略してるんだね。


「グレンと言います。みなさん、ここで何してるんですか?」


「ボクはルーク。知らないの? ここ、ボス部屋だよ」


 頭に赤いバンダナを巻いた、ことさら幼そうな少年が目の前にある壁を指さす。

 そばかすがあからか、よけい幼く見えるよね。

 胸とお腹に金属製の防具を着けている。


「えっ、壁しかないけど?」


「ダンジョンは初めて? ボス部屋は、他の冒険者パーティが攻略中だと、閉まってるんだ。各階層のボスを倒して初めて下の階層へ降りられるんだよ」


 革鎧が胸ではちきれそうな、ぽっちゃりタイプの女の子は気さくな感じだね。


「下の階層へ降りられる方法って、他にありませんか?」


「初心者だと、他にないね。上級者は『帰還の玉』を使うけど、それも十階層までは出ないし」


 座っていても背が高いと分かる、痩せぎすの少年が首を振る。


「みんな、相手が名前を教えてくれたんだから、こちらもそうしないと。ごめんね。私はイニス。頭に布を巻いてるのがパーティリーダーのルークよ。それから、体格がいいのがリンダ、のっぽはコルテスだよ。私たちのパーティは『きずな』って名前なの」


 彼女は黒いつば広の帽子をかぶり、黒いローブをまとっている。

 壁に白い杖を立てかけているから、魔術師かな。


「もう、なんで私が『体格いい』なのよ!」


 革鎧の女の子、リンダがその発言に噛みつく。


「じゃ、ぽっちゃりって言って欲しかった?」


「イニス! いい加減にしなさいよ!」


 ごめんなさい、俺もぽっちゃりって思ってました。


「二人ともやめなよ! ダンジョン内での喧嘩は命に関わるって、先生から教わっただろう?」


「そ、そうだった」

「うん、ごめん」


「ボクたちは、『クレタン冒険者学校』の二年生なんだ。

 実習と実益を兼ねてダンジョンに来たってわけ」


 バンダナの少年、リーダーのルークが教えてくれる。


「へえ、冒険者の学校があるんだ」


「うん、勇者様が王様にお願いしてできたらしいよ。ところで君はソロ?」


「ソロ?」


「一人で攻略してるのかってこと」


「ああ、本当はもう一人いるんだけど、今日は来てないんだ。でも、この子がいるから一人じゃないよ」


「まあっ、かわいい!」


 ローブの少女イニスが、俺の肩に乗ったピュウに手を伸ばす。


「つつかれるよ」


「そんなことないわ。ほら、いい子ねえ」


 頭を撫でられ、ピュウは目を細めている。


「えーっ、俺が撫でようとすると、つっつくのに……」

 

 イニスに対するピュウの態度は、俺にとって地味にショックだった。


「ボクにも撫でさせて!」

「私にも!」

「おいらも!」


 結局、残りの三人もピュウの頭を撫でた。

 せっかくだから、俺も撫でようとする。


「痛っ!」


 やっぱり、つつかれるんだよね。

 飼い主なのに、なんでだろう。


 ゴリゴリゴリ


 そんな音をして、前の壁が横にずれる。

 その向こうは、まっ暗で何も見えない。


「じゃ、一回層のボス攻略いくよ!」

「「「おー!」」」


 ルークの合図でパーティから歓声があがる。


「灯りは要らないの?」


「入ると、明るくなるよ。じゃ、またどこかで」


 ルークが振りむいてそう言った時、扉が音を立てて閉まり、彼の姿はその向こうへ消えた。


「へえ、階層ボスを倒さないと次の階には行けないんだね」


 そう言いながらピュウを撫でると、またつつかれた。


























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