15 ピスヘルメットの少年

 どうしよう、どうしよう、どうしたらいいの?

 とりあえず、お母さんから貰ったピスヘルメットで防げるけど、あんな勢いのある火の玉を食らったら、頭が吹き飛んで――――頭。


 そうだ!

 無理に打ち返さなくていいだ。

 

 ひらめいた僕は、また赤赤と煮えたぎる雲を見上げて、隕石の位置と数を確認。

 大体の落下場所を予測して、その場所へあえて駆けていく。

 ピスヘルメットを両手で押さえたまま、僕は降ってくる流星に突っ込む――――。


 お母さん。僕を守って!


 太陽の光をまともに見たように、目の前が真っ白だ。

 今自分の身体がどこにあるのかを確認する。


 流星に当たった時に、吹き飛ばされて後ろへ倒れたんだ。

 ピスヘルメットに当たった衝撃で、めまいがする。

 頭のてっぺんが痛い。

 こめかみがズキズキする。

 脳みそが車輪みたいに回転してるような気分だ。

 ヘルメットから隕石にぶつかった音が耳に響く。

 叩いた鐘に顔を入れたようで、鼓膜を小人が激しくノックしてる感じだ。

 キーンと耳鳴りがした。


 僕のダメージは大きかったけど、上手くいったみたいだ。

 ピスヘルメットに当たった隕石が、すぐそばで転がっている。

 隕石は熱した鉄のように赤く、蒸発した水のように煙を噴いていた。

 生身の頭に当たったら悲惨だよ。

 立ち上がって、次来る流星を予測。


 来たぁ!

 

 駆け寄って、落下する岩石に頭を突き出す。

 隕石に当たった衝撃で身体は後ろへ転倒。

 でも倒れてもいられない。

 すぐに起き上がり、ピスヘルメットが外れないように抑えると、次に落ちてくる流星を探す。

 

 流星は空一面に広がってる。

 ヘルメットだけじゃ防げない。

 流星が止む前に僕の頭蓋骨ずがいこつがわれるかも?

 やっぱり素人同然の僕に、街を守りきるなんて出来ない


 隕石へ、ヘルメットごと頭を投げ出す。

 防いだ後すぐ、違和感が。

 なんか今、ひびの入る音がしたけど?


 すると――――ピスヘルメットが、くる実のように2つに割れて地面に落ちた。

 割れたヘルメットを見て、アゴが外れたように口が塞がらない。


 そんなぁ!?

 まだ流星が降って来てるのに、これじゃ防げない!


 アトム、ウランの兄妹の安全を確かめようと、首を回して背後を見た。


 泣きじゃくる妹のウランを抱きしめて、災厄から守ろうとする兄アトム。

 そのアトムも、恐怖で涙をこらえて震えている。

 流星打ちの先輩であるアルミは、ボロボロで起き上がれない。


 この災難を食い止められる人間は、ここにはいない。

 もう逃げられるだけの時間もない。

 

 だから――――――――やるしかない!


 地面に転がる自分のハンマーを見つけ、落下する流星のどさくさで見失わないように、しっかり両目で捉える。

 一歩づつ自分からハンマーへ歩みより、砂をかぶったもっとも身近・・相棒バディを自分の手で握りしめ、拾う。




 ――――目を開けて最後まで見ろ――――




 ハンマーを握ると、アルミの怒鳴り声が頭の中でこだました。

 目を開くと、隕石がパノラマを埋め尽くす。

 今までちゃんと見たことなかったから、解らなかったけど、隕石がどんな形をしてるか解った。


 大きな岩石の周りに、燃え上がる炎が羽衣のようにまとわりついている。

 真っ黒な煙は尻尾のように長く空まで続いて、蛇のように不気味だ。


 なにより、岩石の中心はいくつものヒビが入っていて、生き物の顔のように見える。

 大きな亀裂はカミナリみたいにジグザグで、その溝に小さな青い炎が灯っていた。

 怪獣の目玉のように見えるそれは、僕をエサだと思って見つけたように一目散で向かってくる。

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