4 砂の天球街(てんきゅうがい)

 僕の先頭を歩くアルミは、ハンマーを肩に担いでどんどん先を歩く。


 お母さん。

 僕も同じようにハンマーを担いでみるけど、重くてちゃんと持ち歩くことが出来ず、フラフラしながら後をついていきます。


 流星打ちが使う仕事道具は、僕の身長と同じくらいの長さの棒に、鉄球が着いたハンマー。

 棒の先の鉄球で、降って来る隕石メテオを打ち替えします。


 流星打ちが守るこの町は、降ってきた隕石で、あっちこっち壊されて瓦礫がれきの山。

 それに4階建ての立派な建物は、外側だけが立っていて裏を見ると瓦礫で埋もれ、張りぼてみたいになってます。

 隕石が建物の裏に落ちて、壊してしまったからです。


 この町では建物は高いほど、隕石に当たりやすくなるので、4階より大きい建物はありません。


青空は無数の流れ星が飛んでいて、光の尾が輝く星と星の間を行き交い線で描かれた星座を形作り、さらには地平線から半分だけ姿を見せた惑星は、クレーターが顔のようで巨人が街を覗いているように思えます。


 それとこっちは――――


「くしゅんっ!」


 砂ボコリが鼻に入ってがムズムズします。

 風で砂が吹き上げられふのはもちろんですが、なにより隕石落下の後がヒドイです。

 空から降って地面に当たった隕石が、砂ボコリを舞い上げて空気を漂うので、目にも砂が入ってチクチクするし、肺に入いると息が出来なくなります。


 バディのアルミは、長いこと町に暮らすからか「じきになれる」と言いますが、それまで我慢するのは辛いです。

 歩いている間は僕もアルミも、首に巻いたバンダナで口と鼻を覆って、砂を吸わないようにしてます。


 砂ボコリも辛いけど、歩いている間のアルミの小言を聞くのも辛い。


「私とバディを組むなら、ちゃんと打ち返せないと困るのよ」


「ご、ごめん」


「簡単に打ち返すようになるには、フルスイングが1番ね」


 先頭を歩く彼女が後ろを振り返ってたので、僕は驚いて止まる。

 担いだハンマーの重みで身体がよろけた。

 ハンマーを持ち直すと、アルミが続ける。


「いい? まず隕石を真っ直ぐ見るのよ。そして腰を落としたら足場を固定して、身体のブレを抑える」


「腰を落とす?」


 やってみると、すぐさまアルミの手直しが入る。


「それじゃ、へっぴり腰じゃない。足を大きく開いて? そうすると、身体の軸が真っ直ぐになって上半身が安定するから」


「わ、わかった」


「身体の力を抜いてリラックス。ハンマーは力で振るんじゃないの。振る時の勢いで打つのよ? で、肩にハンマーを乗せてしっかり構えたら、1、2、3。で振る」


「1、2、3……」


「狙いを定めて、1で腕を振り出す。2で隕石に当てにいく。3で振り上げて、かっ飛ばす!」


「そんな簡単に出来たら苦労しないよ?」


「ほら? 実践、実践!」


 言われて通り、1、2、3と数えて担いだハンマーを振る。


 「がはぁっ!?」


 ハンマーの重さに振り回されて、身体がコマのように一回転。

 また尻もちをついた。


 それを見たアルミは肩を落としてため息。

 僕を置いて歩き始めたので、慌てて追いかける。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る