9.私情Ⅶ

もう返らぬすべてのものの中にあの人はいる

今どうしているだろうかと 今もまだ元気だろうかと

そして やはり生きていてくれたならと願ってやまない


あの人の中に私はいない というよりもいらない存在

考えたくもなければ そもそも考えることもない存在


私があの人の愛憎から最も遠い存在となって久しい

その時間がどれほど無意味なものか 私には知る由もない

・・・そうか そうなのだ 私とは意味のない生き物なのだ

それが事実なのだ――死ぬことが悲観ではなくただの事実でしかないように


不変者としての私が もし変われるとしたらあの人のためだけだ

頑なに変わらないでいようとするのは 自分のためでしかない

変わっても変わらなくても 死んでも殺されても

それは やはりあの人にはどうでもいいことなのだろう(か)・・・


(2018.12.9)

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