第16話 実力てすとっ!
「おい、真木瀬!こっちへ来い!」
ベイルート大佐がルカを呼ぶ。
「お前には適正訓練を受けてもらう必要がある。いいな?」
「はいっ!」
試験場はその洞窟の中にあり、少し整地してはあるものの
造りは荒いが、広さはかなり広かった。
天井もかなり高くなっていて、なんだか不気味な雰囲気があった。
明かりは真ん中にランプがあるのみで視界が良好とは言えないそんな場所だった。
試験の内容は、レベルが異なる魔獣と対峙して、ルカの魔力がどの程度のものなのかを調べるものであり、魔獣のレベルは3段階となっていた。
ここまでの説明を大佐は静かにルカへと話す。
「では早速最初の魔獣を呼び出す。準備はいいな?」
ルカは黙って頷く。
一番力のない魔獣が大佐に連れられて試験場へと入ってくる。
見た目は少し大きめのネズミのような姿で、凶悪なモンスターというよりは可愛げのある容姿をしていた。
「では、はじめっ!」
大佐の号令と共にネズミのような見てくれの魔獣がルカへと突っ込んでいく。
ルカは咄嗟に魔法でシールドを生成し、身を守る。
魔獣の突進が幾度となく繰り返されるが、ルカのシールドの前ではまったくの無意味だった。
「どうした?防戦一方か?少しギアを上げる!」
大佐は挑発するかのようにルカに言い放つ。
それに呼応する形で、魔獣は火炎放射のように口から火を放つ。
無論、シールドを張っているルカに攻撃は当たらない。
しかし長時間火を放たれ続ければ、シールドの効果は薄れていき、やがて火の粉がルカの体へと降りかかるようになる。
それでもルカは攻撃をすることなく、体を反転させ再度体勢を立て直し次の防御へと向かう。
「おい、貴様!!何故攻撃しない?」
大佐の怒号が洞窟内に響く。
「攻撃したいんですが、なんだか可哀想で…」
ルカの返答に大佐は呆れて何も言うことができなかった。
結局この試験は、個体値の低い魔獣が疲労困憊となり、魔法が使えない状態となったことで幕を閉じた。
第二段階の魔獣との対戦も同様の結末を迎えた。
大佐は苛立ちを
戦況が厳しい中で、能力の高い新人が入ってきた。
そう、期待していたからこそ苛立ちは大きかったのだ。
「いい加減にしろ!お遊びでやっているんじゃないんだ!貴様のような半端な奴を相手にしている暇はない!」
大佐のゲキが洞窟内にこだまする。
「いいか。次の魔獣は強力だ!次も同じようなふざけた真似をしてみろ。貴様は死ぬことになる。わかったな!」
大佐はそう吐き捨てると次の魔獣を連れてくる。
次の魔獣は先のガッフェ峠で戦った魔獣よりもサイズが大きく、凶悪な顔をしていた。
見た目はドラゴンに近いようなものだった。
大佐が合図を出すと魔獣は一気に攻撃を仕掛ける。
全長5メートルはあるかと思われる巨体がルカ目指して突進してくる。
ルカは落ち着いた様子で魔法を唱え、瞬間移動をし攻撃をかわす。
魔獣は向きを変え、更に攻撃を仕掛ける。
炎、氷、雷、あらゆるタイプの魔法攻撃を仕掛けるも、ルカはシールドを上手く使い防御をしていく。
ルカの戦闘パターンは変わらないが、前ニ戦とは異なり、長期戦の様相を呈し始める。
この魔獣はスタミナを強化するよう調教されているため、無尽蔵に魔法攻撃が可能である。
また一方のルカの防御もいまだ衰えることを知らなかった。
大佐は少し感心していた。
「(ほう…このクラスの魔獣の攻撃を完璧に防ぎきるとは…」
「(しかし…何故攻撃を仕掛けない…)」
大佐は不思議でならなかった。
防御のセンスは一流。演習も学校をトップで卒業してきた兵士。なのに何故だ…
大佐は悩んだ末、1つの推測を打ち立てる。
「よし、真木瀬。1つお前にはハンデを負ってもらう。」
大佐はそういうとベースキャンプにいるミーナを試験場へと呼び寄せる。
「真木瀬!お前はこれからこのミーナを守りながら、この魔獣と闘え。魔獣にはミーナを狙うよう命令を出した。さあどう闘う?」
大佐は不敵な笑みを浮かべながら、ミーナをルカの後ろに立たせた。
「(状況は先ほどのガッフェ峠での一戦と同じ。これでも変わらなければこやつの事は諦めよう。)」
仕切り直して、大佐が再度合図を出す。
魔獣が今度はミーナを目掛けて一直線で突撃してきた。
「んー…争い事は嫌なんだよなあ…」
ルカはそう独り言ように呟き、先程より少しだけ表情を強張らせながら魔獣の方を睨みつけた。
続く…
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