第14話 調査部隊出動
ベッカー少佐と共に、調査部隊10名がガッフェ峠へと向かう。
新人のルカに気遣い話しかけてくる者もおらず、みな一様に無言で戦地へと向かう。
そんな緊迫した雰囲気がルカの不安を更に深めていった。
出発してから一時間ほど移動した頃、ようやくガッフェ峠が見えてくる。
ガッフェ峠が近付くと、より霧が深くなり、陽の光が入らないせいかどんどんと薄暗くなっていく。
空気は重く、物音一つしない異様な不気味さは新人のルカにより一層の恐怖心を与える。
ダークエメラルドの偵察隊が目撃されたポイントに差し掛かると、ベッカー少佐が手で合図を出す。
部隊はその場に止まる。
それに呼応する形でベテランの魔女が魔法詠唱を行う。
眩ゆい光の海が周囲を包む。
ベテラン魔女がベッカー少佐に耳打ちする。
ベッカー少佐はまた手で合図をし、調査部隊は西へ向かい更に移動をする。
5キロほど進んだところで、ベッカー少佐の足が止まる。
少佐は若手兵士を呼び寄せ、耳打ちをする。
呼び寄せられた兵士は、ミーナという名前だった。
ミーナはルカと同じくらいの年で透き通るような白い肌で背は小さく、丸眼鏡を掛けた兵士だった。
そんなミーナが魔法詠唱を行うと、天空に光の矢が浮かび上がる。
その光の矢が、目で追えないほどの速度で、敵の方へ一直線で襲いかかる。
「ウギャアアアア」
ダークエメラルドの魔獣のものと思われる悲鳴が、無音の峠に響き渡る。
その悲鳴を聞くか聞かないかのタイミングで、調査部隊は一斉に敵の方へと飛び出していく。
ルカは呆気にとられて、出遅れてしまう。
ルカが慌てて向かおうと思った時には、もう他の兵士たちの背中は見えない距離にまで進んでいた。
ベッカー少佐を筆頭に光の矢の刺さった魔獣たちに一斉に攻撃を仕掛ける。
ルカがその場に辿り着いた時には、二頭の魔獣は戦闘不能状態になっていた。
その
さすがはダークエメラルド方面隊だ!とルカは能天気に感激していたが、ベッカー少佐は厳しい顔を崩していなかった。
「あと一頭いるはずだ。警戒しろ。」
そうだった。目撃情報は三頭。しかしここで戦闘不能になっているのは二頭のみだった。
先陣を切って、魔法を唱えたベテラン兵士が少佐に言う。
「私の光の網にかかったのは、二頭だけでした。元々二頭だけだったのでは?」
「偵察隊は三頭を確認している。多いことはあっても少ないことはない。必ずもう一頭はいるはずだ。」
少佐は冷静に回答する。
「この魔獣どもは、
少佐の指示を受け、他の隊員たちはそれぞれ最後の一頭である魔獣を捜索しに出掛ける。
二頭の魔獣の見張り役は、新人のルカと先程遠距離魔法を行なったミーナの二人が担うこととなった。
残された二人。ミーナも緊張を解いていないため、無音の状態が続く。
気まずいなぁ〜。
そんな事をルカが考えていた瞬間、激しい音を立て、地割れが起きる。
地中から魔獣が飛び出してきた。
ちょうどルカの真後ろでの出来事だった。
ルカが振り返ると、先ほど倒した魔獣とは比べ物にならない大きさの魔獣が、ミーナに迫ろうとしていた。
遠距離魔法を得意とするミーナは打つ術なく、立ち尽くしている。
魔獣の鋭い爪がミーナの頭を引き裂こうと振り下ろされる。
ベッカー少佐や他の隊員はいない。
「(私がやるしかない…)」
ルカは覚悟を決め、その魔獣と対峙する。
続く…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます