第6話 とある魔法界の日常
いつもと同じ時刻に目が覚める。
起きたい時刻に目が覚めるように、自身に魔法をかけているから魔法使いに遅刻という概念はない。
今日もいつも通り準備をして、会社へと向かう。
人間界でも魔法界でも新入社員というのは朝早く行って会社の雑用をするものだ。
ルカも例に違わず、誰よりも早く出勤する。
しかしそんな新入社員生活も今日で終わる。
新しい部下が入ることになっているからだ。
意気揚々と会社へ行き、準備を進める。
自分用にコーヒーを淹れながら、他の社員の到着を待つ。
ルカが一番好きな時間だった。
ほどなくして上司と見知らぬ女の子が入ってきた。
「おはようございます!」
真新しい制服に、初々しい顔で元気に挨拶をする見知らぬ女の子。
どうやら見知らぬ女の子が新入社員の女の子のようだ。
今日からいよいよ先輩なんだなあ。しっかりしないと!
そう思いながら服装を正して、背筋を伸ばす。
「では、レイナさん、先輩の真木瀬瑠夏さんに付いて、色々とこの世界のことを勉強してください。」
上司が私の方を指差しながらそう言った。
「真木瀬瑠夏です。わたしもまだまだ新米だけど、わからないこととかあったら気軽に聞いてね!」
「わかりました!よろしくお願いします、ルカ先輩!」
ルカ先輩!!その響きにときめいてしまう。
「じゃあレイナちゃん、とりあえず外出よっか!色々案内するね!」
「はい、ルカ先輩!」
先輩と言われたことでより一層テンションが上がる。
「じゃあかるーく外を飛んでパトロールをしながら、色々とこの世界のこととか仕事のことを説明していくね!」
「はい!よろしくお願いします!ルカ先輩」
二人は会社を出て、上空から街のパトロールに当たる。
これはルカの一日の最初の仕事であった。
「じゃあまずなにから話そうかな〜。とりあえず魔法界のお話しからしよっかー!」
そう言うとルカは、この魔法界についての説明をしはじめる。
この世界には魔法界以外に複数の世界が存在している。
存在しているといっても陸続きで繋がっていて、誰でも行ったり来たり出来るというわけではない。
空間上に存在していて、特別な魔法によって移動可能だが、その移動も資格が有るものしかできない。
更にそれぞれの空間の間には
魔法界以外にも複数の空間が確認されている。
歴史が一番長いのは人間界。
人間は魔法が使えないので、基本的に他の世界に干渉をすることはない。
その人間界の中で魔法を使えた者達が自分たちの世界を作りたいと思い、魔法界を創造した。
魔法界が繁栄していくと、その中で異端児となったダークエメラルドが、魔法界とは別の世界を創造した。
大きなものだとその3つの空間が存在している。
その他にもカルト魔法集団や現役を退いた老魔法師集団などの空間も確認されている。
空間周辺の警備や異空間同士の戦争時などに活躍するのが魔女である。
幸運なことに異空間戦争はここ数年は起こっていないので、非常に平和な時代が続いている。
しかしダークエメラルドの人々は魔法界を乗っ取る計画を下に集まった集団なので、必ずやまた侵攻してくるだろう。
ここまでの話をひと息でルカは説明する。
新人のレイナは目を回しながら、「明日までに覚えて来ます…」というのが精一杯だった。
「あ、ごめんごめん。一気に話過ぎちゃったね!でも異空間同士の魔法戦争は数年おきてないし、レイナちゃんの主な仕事は書類の整理だから安心して!ねっ!」
「はいぃ…」
新人レイナはもう泣きそうな顔をしていた。
「そーだ!レイナちゃんは彼氏とかいるのー?」
ルカは新人の気持ちを切り替えさせようと、話を変えてみることにした。
「えっ!?私ですか?いないですよー。ルカ先輩はどうなんですか!?」
「私はねー、彼氏はいないけど良い感じの人はいるんだよー!しかもお相手は人間の男の子なんだよー」
「えっ!人間とお付き合いするつもりなんですか!?ルカ先輩は変わってますね…」
「そうかなー?灰田くんっていう人なんだけど、すっごくかっこいいんだよ!もし付き合ったらレイナちゃんにも人間界の男の子紹介してあげよっか!?」
「いやあ…あの…私は間に合ってるので大丈夫です。」
レイナは若干引きながらも先輩への配慮をした結果、新聞の勧誘を断るような奇妙な断り方をしてしまう。
「そっかー。どうしてみんなこの良さに気付いてくれないのなー、不思議ー!」
レイナは心の中で「(いや、あんたが一番不思議だよ!やっぱりこの人噂通りの変人!)」と思っていた。
その後会社に戻り、事務処理の仕事のやり方を教えた。
「基本的には一人で事務処理をやるんだけど、一日大体五億冊くらいの書類を処理すると終わりーっ!って感じ!」
「サラッと言ってますけど、五億冊の処理って1日じゃ絶対無理ですよね?」
「え?そう?魔法使えば速攻終わっちゃうよー?」
ルカは涼しい顔で言ってのける。
「先輩は魔法学校も首席で卒業のエリートだから出来るんですよ!私なんて成績は中の下のコネ入社なんですからね。」
「ええー?あたしってそんな有名なの〜?にゃははー!照れるなあ!」
「笑い事じゃないです!」
「ごめんごめん。慣れるまでは私も手伝うからさ!許して!」
「手伝ってくれなかったらほんと泣きますよ!」
「じゃーあー、手伝う代わりに私の恋の悩み聞いてもらうからねー!」
「あー…それはあまり気乗りしませんが、仕事のためなら仕方ないですね…」
「ちょっとなによそれー!」
ルカはむくれながら不満を言う。
レイナはその顔がおかしくて思わず吹き出してしまった。
コンコンッ
そんな時だった。
突然ドアがノックされ、上司が部屋へと入ってきた。
「真木瀬さん、少し話があるんだが良いかな?」
神妙な面持ちでルカにそう告げた。
「はい!なんでしょうか〜?」
「部屋を別に用意したから、そこまで来てもらってもいいかな?」
上司は表情を変えなかった。
「ん〜、なんだろうなー!とりあえず行きますね。じゃあレイナちゃんあとよろしくね〜!」
そうレイナに言い残し、部屋を後にした。
続く…
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