第4話 学生の本分は合コン


「圭祐、明日講義ある?」


突然太一からラインが届く。


「明日は4限で終わりだよ。どうした?」


「アプリで知り合った女の子とその友達で合コンやろうって話になってんだけど圭祐も来ないか?」


太一の誘いはいつも急だ。


「急すぎるわ!てか太一、前に彼女出来たって言ってなかったっけ?」


「ああ、付き合ってるよ。けど、今回のは魔界に連れていかれそうなお前のために開く合コンだから、浮気とかそんなんとは違うぞ。むしろ友情あふれるハートフル合コンよ」


わかっている。僕をアリバイ工作かなにかのために使い、僕以上に自分が楽しむことを。


これまで幾度となく合コンに誘われたが、ほとんど同じパターンだった。


多分、ツイッターかなんかに僕と飲んでる写真を投稿してアリバイ工作でもするつもりなんだろう。


そもそも彼女がいるのにアプリをやってること自体がおかしいんだ。


昔の太一は、もっと純粋な奴だったと思うんだけど…


まあいずれにせよ、僕にはルカちゃんがいるんだ。


太一よ、いつまでも僕は都合のいい男じゃあないんだぜ!


断りの連絡を入れて、就寝した。


週末、ルカちゃんと会えるのが楽しみだ。


俺にはルカちゃんがいる。それだけで良いんだ。





ー翌日ー


「かんぱーーーい」


「いやあ二人とも可愛いねー!圭祐も来てよかったろ?」


太一はご機嫌な様子で僕の方を見る。


くそぅ…またしても太一の口車に乗せられてしまった。



「圭祐の写真見せたら、めっちゃタイプって言ってたぞ。しかもその子さ…爆乳なんだよ…羨ましいぜ、圭祐」


合コン前にそんなことを言われ、まんまとそれに踊らされる形で参加してしまった…


俺にはルカちゃんという子がいるのに…


いやしかしあれだ。巨乳ぐらいなら行かなかったけど、爆乳となればもうそれは知的好奇心が湧いてしまう。これは男として仕方のないことなんだ、うん。


僕は自分に言い聞かせ、とりあえず合コンに行くことにした。


今日は3対3の合コンで、相手は女子大生。


そしてこっちのメンツは太一、俺、そしてサークルの後輩の林だ。


林というのは一見するとさわやかなスポーツ男子といった感じだが、とてつもないコミュ障で更には二次元やアイドルが好きというTHEオタクというような奴だった。


林の参加も僕が今回合コンに参加する大きな要因であった。


自己紹介を無事に終え、アルコールの入った太一のバカ話タイム。


いつもおきまりのパターンだった。


太一のバカ話に女性陣たちもツッコミを入れたり、笑ったりとそれなりに盛り上がっていた。


しかし俺にはどうしても気なることがあった。


「(おい…おい、太一。昨日言ってた、ば、爆乳の子はどうしたんだ?)」


「まったく圭祐はスケベだなあ…まあよく見ろよ。女の子たちはまだ2人しか来てないだろ?爆乳ちゃんはあとから遅れて来るらしいぞ。デザートは最後に来るものだってな!

まあ、楽しみに待ってろよ…」


太一はそう言うと不敵な笑みを浮かべて、バカ話へと戻って行った。


いまの不敵な笑みはなんだ…不安と期待に胸を膨らませながら、僕は太一のバカ話に適宜ツッコミを入れながら、その時を待った。


「すいません、遅くなりましたー。」


そう言いながら、見知らぬ女性が僕たちが飲んでいる席へと入ってきた。


「遅かったじゃーん、あゆみ。」


女性陣が遅れて来たあゆみという女性に声をかける。


間違いない。この女の子が三人目の、そう、爆乳の女の子だ。


そう思っている矢先に、太一が声を掛けて来る。


「(な?言った通りの爆乳だろ?)」


たしかに…あゆみという女性は非常にふくよかな胸を持っていた。

しかしそれと同じくらいふくよかなお腹も持ち合わせていた。


もはや胸に目がいく前にその全体のサイズ感に目が行くような非常に巨大な女の子だった。


「(お前なあ…あれはないだろ…)」


太一を期待した僕がバカだった。

巧妙な話術にまたしても騙されてしまった。


ふと隣を見ると林もうなだれていた。


かわいそうに…俺と同じ手口で騙されたのだろう。

しかも俺のように免疫がないからこれは堪えるだろうなあ…


「灰田さん、あとで太一さん殴っていいでしょうか?」


「ああ…好きなだけやってくれ。俺の分も頼むぞ…」


林は格闘技経験者だ。高校時代には、全国大会にも出たほどの実力者である林の一発を食らえばさすがの太一も懲りるだろう。


「二人ともグラス空じゃねぇか!もっと飲めよー!」


この後殴られるとも知らない太一はご機嫌だった。


「それでさー、圭祐が最近入れ込んでる女ってのが中々愉快な子でさー、なんと自分のことを魔女っ子と言っちゃうメルヘンな女の子なんだぜ?」


「おい、太一。やめろって!いや、違うんですよー、そういう妄想をするのが好きってそういう話をしただけでしてね。」


僕は必死に誤魔化す。


「あ、俺トイレ行ってくらぁー。圭祐、魔界の話詳しくしてあげろよー」


そう言うと太一は席を立ち、お手洗いへと向かった。


「いやーでもいろんな人がいて、面白いね」


「灰田さんはその魔界っ子とはいい感じなのー?」


酔っ払った女性陣の質問責め。

太一亡きいま、うちの戦力は瀕死の林と僕のみ。

僕が戦わなければ、この戦…負ける。


謎の使命感から、ルカとの出会いやどんな話をしたかなどを話した。


「なにその子、めっちゃヤバい系じゃん。灰田っち、それ付き合うの大変だよ〜」


出会ってまだ2〜3時間で灰田っちと言ってくるお前のがヤバい系だと思うぜ、あゆみちゃん。


しかしそんな僕の話を物凄く真剣な顔で聞いている子がいた。

あまり多くは語らず、太一のバカ話にも明らかに愛想笑いという感じで冷ややかに笑っていた女の子だった。


名前は、たしか…そうだ、真凛まりんちゃんだ。

太一がアプリで出会った子の友達とか言ってたはず。


この子…もしや、俺のことが…


そんなことを思っている間に太一が帰って来て、合コンは御開きとなった。



続く…

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