第3話 魔界の掟

「この前出会った子はどうなんだい?」


ルカの使い魔のメドルサが問いかける。


ルカはデートから帰ってくると、自分の部屋でくつろぎながら、スマホをいじっていた。


スマホは人間界に詳しいメドルサが買ってきてくれたもので、使い方からなにから全てメドルサが教えてくれた。


「灰田さん?すっごい優しいし、面白い人だよー!しかも魔法界の話をしても全然バカにしないで聞いてくれるしね」


さっきまでのデートを思い返し、にやけるルカ。


ルカは幼い頃に両親を魔法大戦争で亡くした。


その両親の事が知りたくて、遺品や両親と親しかった人などから、どんな人だったのか、どんなものが好きだったのかを調べた。


その結果、両親は人間界が大好きで、度々人間界へと旅行をして色々な物を買って魔法界に持って帰ってきていたということが分かった。

両親の部屋からは人間界のCDや雑誌などが沢山出てきて、ルカはそれらに聞いたり見たりするのが本当に好きだった。


人間界のものに触れていれば、両親と繋がることが出来るそんな気がしていた。


いまは亡き両親と自分を繋ぐ人間界にルカはすがらずにはいられなかった。


そういった思いからなのか、ルカは異常なまでに人間界に固執していた。


結婚相手も絶対に人間界から探すと言って聞かなかった。

魔女になったのも、人間界へ自由に行き来する事が出来るというのが大きな理由だった。


周りからは変人扱いされても関係なかった。

ルカにとっては人間界が全てであり、周りの意見などどうでもよかった。


「そういえばメドルサー。人間界の人達はどうやって結婚したりしてるの?」


「それはまず交際をして、そのあとプロポーズされてから結婚という流れよ。

私が若い頃はお見合い結婚が主流だったけどね。」


「そっかー。マンガで読んだことあるけど、告白とかして付き合うんだよね?よーし次会ったら告白しちゃうぞー!」


ルカは無邪気にはしゃいでいた。


「ルカ、いいかい?人間と結婚するってなったら、あんたは二度と魔界には戻れないんだよ?記憶は消されて人間として生きて行くしかないんだ。友達や両親の記憶もなくなるんだよ。わかってるのかい?」


「わかってるよー。わかってるけど…」


ルカにとって友達はどうだってよかった。

というよりルカには友達がほとんどいなかった。

しかし両親の記憶を失うことは、なにより辛かった。


「ねぇ…メドルサ…どうしたらいいかな?」


さっきまで無邪気に笑ってたルカだったが、今度は泣きそうな顔で聞いてきた。


「記憶をなくさないで人間と結婚する方法はあるけど、それはあまりオススメできないね。」


「なになに?教えてよ、メドルサー!」


ルカは食い気味に問い詰める。


「それは人間の方を魔界に連れてきて、結婚することだよ。

しかしそうなるとその人間は二度と人間界には戻れないし、人間界にいた時の記憶も消される。

また、魔界での適性試験によって身分が振り分けられて、例えば使い魔とかになれば結婚することは出来なくなる。

記憶も消され、人間界にも帰れないで一生奴隷として生きていく道をあんたの趣味趣向で歩ませる。それでもあんたはいいのかい?」



「そんなことあたしには出来ないよー…

うぅ…どうしたらいいの、あたし…」


ルカは遂には泣き出してしまった。



「いまは色々な事を経験だと思いなさい。

結婚とかそういうことは考えないことね。

そうだ!明日は職場に新人さんが来るんだろ、それならそろそろ寝たほうがいいわよ?」


「そういえばそうだった!メドルサありがとね。それじゃあ明日のために今日はもう寝るね」


「うん。おやすみなさい、ルカ。」


メドルサにとって、彼女は最低ランクの使い魔の自分を拾い上げてくれた命の恩人だった。だからこそなんとか幸せにしたい。


人間界のことを自分が話したからこんな辛い選択を強いられているのかもしれない。


いずれにせよ、選択をするのはルカ自身なんだ。

どんな結末が訪れようとも、そばにいてあげよう。


メドルサはそう決心し、部屋の明かりを消した。


続く…

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