第2話 デート
「聞いてくれよ、めちゃくちゃ可愛い子だったんだよ。ほら写真も可愛いだろ?」
僕は講義中にも関わらず太一に熱弁していた。
「こんな可愛い子が出会い系やってるわけねぇだろ。あれだな、きっと性格やべぇ奴だろ。」
太一は冷ややかだった。
太一とは高校時代には毎日のようにくだらないことをやって笑い合っていた。
男子校だったのでお互い彼女もいなかったし、下ネタやら馬鹿話をして大盛り上がりしていた。
しかし大学入ってから太一には彼女ができ、少し疎遠になっていた。
「20
高校の卒業式の帰り、俺たちは高らかに誓ってからもう何年かが経った。
太一は早々に目標を達成したにも関わらず、僕は…
しかしそんな僕にも圧倒的なチャンスがやってきた!
神はこのために僕に苦行を強いてきたんだ。
今ならそれがわかる。
「んで、どんなこと話したんだ?」
太一はスマホに目をやりながら聞いてくる。
「えーっと…魔界の話…とか…」
太一は目を輝かせながら
「そら、お前。とんでもねぇ電波ガールじゃねぇか!
そっかー、圭祐も魔界に手を出したかー」
太一は小馬鹿にしながら言ってくる。
「違うんだよ、きっとユーモアあふれる子なんだよ!
可愛くて面白いとか最高だろ?」
僕は必死に言い返す。
「まあ頑張れよ。魔界に連れていかれねぇよーになー」
☆ ☆ ☆
「それでね、魔法学校の教官は恐ろしくて、何か悪いことしたりとかすると24時間石にされたりとかしてたんだよー。」
2回目のデートにこぎつけたが、魔界トークが尽きることはなく、前よりも熱を増していた。
「そういえばルカさんは社会人なんですよね?お仕事は何やってるんですか?」
他の話題に移そうと試みるも
「へ?さっきから言ってるじゃないですか!魔女ですよ!魔界で一番大きい魔女会社で働いてるんだー」
とまあこんな調子だ。
せっかく映画に行ったのに映画の感想そこそこに続く魔界トーク。
「魔界トークはそろそろ終わりにして、まじめに話ししましょうよ!」
こう言えばいい、ただそれだけなんだ。
なのにその言葉が出てこない。
「お前、女の子と話すの下手くそだからなー」と太一に言われそうだが、僕だって女の子とそれなりに話してきたし、女友達だっている。
ハタチまでに童貞卒業を掲げて以来、テニスサークルに入ってみたり、合コンに行ったりしたこともある。
でもここまで可愛い子はいなかった。
無理だ…こんな可愛い子と話せるだけで幸せだもの。
魔界トークだっていいじゃないか。
そう自分に言い聞かせていた。
今日話せただけで、あと一ヶ月は幸せに生きれる。そうだ、そう考えよう。
「じゃあ、そろそろ帰ろっか、今日も楽しかったなー。また遊ぼうね!」
「う、うん。じゃあまた今度…」
今日も特に成果はなく、男らしいところも見せられないまま終わってしまった。
それでも彼女は屈託のない笑顔で手を振り続けてくれていた。
僕はモヤモヤした気持ちのまま、帰りの電車のホームへと歩いて行った。
続く・・・
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