出会いは小説より奇なり

不知火 和寿

第1話 出会い

「はじめまして、灰田さんですか?」


花柄のワンピースに白い麦わら帽子をかぶった女の子が僕に話し掛けてきた。


夏も終わりに差し掛かり、なんとなくノスタルジックな空気が漂い始めたそんな季節だった。


「あ、はい…もしかして、ルカさんですか?」


僕は緊張し、声を震わせながらも答える。


彼女とは親友の太一に薦められたいわゆる「マッチングアプリ」で知り合った。


「写真と実物だと3割減くらいの人が来るからあんま期待するなよー」


親友の太一からアドバイスをもらってたが、とんでもない。想像以上だった。


彼女はショートボブにゆるくパーマをあてた綺麗な茶髪で、目は大きくはっきりとした二重で、20歳にしては幼さが残る顔立ちだった。


背はそこまで高くはなく綺麗というよりは可愛い系だった。


そして彼女が近づくと、ほんのり甘い香りがした。


「とりあえずお茶でもしましょうか?」


彼女は落ち着いた口調でそう促す。


「あ、はい…」


僕は従うことしかできない。

カッコ悪くて死にそうだ。でもこんな可愛い人前にしたら緊張してうまく喋れないよ…

もう帰りたい…



カフェに着いてから、ひとまず注文を済ませ、僕らは席に着く。


僕はよく分からなかったので『水出しアイスコーヒー』を緊張しながら、彼女は『キャラメルモカフラペなんとか』を挨拶をするかのごとく簡単に注文した。


席に着いてからも僕の緊張が収まることはなく、うまく喋れないままだった。


そんな僕を見かねてか、彼女は突飛なことを言ってきた


「そんなに緊張しないで…わたし、この世界の人間じゃないんですから。」


僕は意味がわからず、ただ黙ってしまう。


「あたし、実は魔法使いで魔界から人間界に遊びにきてるんです。

人間界の人が大好きだから、灰田さんとお会いできるのすごい楽しみだったんですよ!」


僕は困惑していた。多分それが顔に出てしまったのだろう。


彼女は慌てて訂正した。


「という妄想をよくするんですよー、あはは」


浮世離れしたジョークに思わず僕は吹き出してしまう。


「なんだよ、その話…」


「あっ、やっと笑ってくれたね!」


屈託のない笑顔で僕の方を見ながら彼女が言った。


その後も彼女の浮世離れトークは続いた


「魔界を脅かす悪の組織【ダークエメラルド】との魔界戦争は本当に想像を絶する戦いだったんですよ~」


「それは壮絶な闘いだったんですね。ダークエメラルドの黒魔術は強力ですからね。」



そんな話をしていると僕の緊張は嘘のように消え、その浮世離れした魔法トークに乗っかれるようになっていた。


ちょっと電波入ってる子だけど、めちゃくちゃ可愛いし、この子と付き合いたい。


僕は本気でそう思っていた。


僕の緊張を解くために奇妙なジョークで笑いを取るようなそんな優しさにも惹かれていた。



まさか作り話だと思っていた魔界トークが嘘偽りのない真実の話だとはその時の僕は一ミリも思っていなかった…


続く・・・

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