隣の人は・・・
勝利だギューちゃん
第1話
「ねえ、私の事覚えてる?」
「うん」
「ありがとう。で、私の名前は?」
「君の名は・・・」
夢を見た。
懐かしいような・・・新鮮なような・・・
人はいずれ去る。
すると、記憶は薄れていく。
それでいいし、そうあるべきだと思う。
でも、その子は忘れかけた頃に、現れる。
まるで、子供の頃に遊んでいたおもちゃを見つけた時のような、
・・・そんな、無邪気な時代だった頃を、思い出させてくれるような・・・
小学生の頃に、親の都合で転校をした。
といっても、同じ市内。
高校で、当時の旧友と再会するのを、楽しみにしていたが、
それは、ならなかった・・・
「忘れろ・・・」
ということか・・・
しかし、運命とは時に皮肉。
いつどこで、離れた路線が、巡りあうかわからない。
「やあ、元気?」
「うん」
「君は、相変わらず暗いね」
「君が明るすぎるんだ」
「私たちが、足して2で割ればいいかもね」
「いい子が、生まれそうだ・・・」
「確かにね」
高校も卒業すると、地元を離れる人が多い。
社会人となると、なおさら・・・
そうなると、望む望まないにかかわらず、1人暮らしをする人も多くなる。
そしてわかる。
家族のありがたさを、そして、1人の寂しさを・・・
僕はその日、アパートへ引っ越しをした。
正直、わくわくよりも、不安が多い・・・
≪秋深し、隣は何をする人ぞ≫
松尾芭蕉の有名な句だ。
誤解している人も多いが、本来の意味は、
【隣の人は今何をしているのかな?】
そう気にかけるのが正解。
気になると、確かめたくなるのが、クセ。
なので、引っ越しの挨拶をする事にした。
まず、隣の部屋のインターホンを押す。
ピンポーン
同時にドアが開いた。
「今日、隣に引っ越してきた、○○です。よろしくお願いします」
顔を見上げて、隣人の顔を見て驚いた。
懐かしいあの子の顔が、そこに会った。
間違いない。
「××です。こちらこそ、よろしくお願いします」
そして、2人の声が重なる。
『また、会えたね』
隣の人は・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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