山掘りの老人
雄大な自然
山掘りの老人
あるところに山で何かを掘り続けている老人がいた
家族はとうの昔に彼に愛想をつかして去っている
それすら気にせずに山で穴掘りを続ける老人に、一人の男が訪ねた
「じいさん。何をしてるのだい」
「崖を掘っとる」
とりつくしまもない老人に、男はなおも食い下がった
「この山には何かあるのかい」
「お宝がある。掘り出せば遊んでくらせるわい」
もう彼はすでに老人なのだ。
さすがの男もこれには呆れて去っていった
山には誰も足を踏み入れたことはなく、誰かが宝物を隠したという話もなかったのだ
老人は一人きりとなり、山を掘り続けた
それっきり、老人のもとには誰も訪れなかった
しかしそれから何年も山を掘り続けたある日、老人は山に銅の鉱脈があることを発見した
その話はたちまちのうちに知れ渡り、老人のもとにはたくさんの山師が詰め掛けた
老人は山師どもに鉱脈の場所を教えるのと引き替えに遊んで暮らせるだけの金を手に入れた
老人のもとには彼のもとを去っていった家族や、彼に覚えのない親戚たちがひっきりなしに訪れた
それからしばらくして、老人はまた別の山を掘り始めた
その様子を聞きつけた男は再び訪れた
「もうお宝は見つけたのに、何故山を掘るのさ」
「わしは五十年、山を掘り続けてきた。他に何が出来るというのか」
男は呆れて去っていった
老人は再び一人きりとなり、山を掘りだした
それからしばらくして老人は足を滑らせ、自らが掘った穴に落ちて死んだ
やがて、雨土が流れ、山の中に埋められた老人は人々に忘れ去られた
そしてそれっきり、そこには誰も訪れなくなった
山掘りの老人 雄大な自然 @1103600834yuta
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