覆面作家~ストーカーからの手紙

 秋山大翔さん。久しぶりね。春山つばさよ。

 今は、冬山つばさで有名かもしれないわ。

 やっと貴方を見つけた。貴方は私のことなんて、覚えていないかもしれない。

 私は覚えているわ。だって、あんなに熱く愛し合っていたじゃない。

 なのに貴方は、私を棄てて、海外に留学。何度か忘れようと思った。

 けれど、忘れられなかった。私は大学を卒業後、様々な仕事を転々としたわ。

 憂さ晴らしに書いた推理小説が賞を獲ったのよ。その後、「冬山つばさ」としてデビューしたわ。 

 毎日、原稿を書いたわ。貴方に会えることを願ってね。

 そして、貴方を探す為にね。

 やっと今年の夏に貴方を見つけたわ。けれど、貴方には女がいるなんて。残酷よね。

 でも、大丈夫。そうね、今日の七月七日の金曜の貴方の行動を羅列するわ。


午前六時半に起床して、朝の身支度。

午前七時四十五分ごろ、自宅マンションを出て、秋山グループに出勤。

午後一時頃、商談の為、秘書の女性と共に料亭「河野」に向かう。

商談が上手くいったのか、貴方はご機嫌。そして、会社に戻る。

午後六時まで、会社で仕事をした。

その後、婚約者の真田有希子と共に、カールトンホテルで一夜を過ごす。

どう?当たっているでしょう。

さて、今度は貴方を誑かしている真田有希子さなだゆきこに制裁しないとね。

これを止めてほしいって?

無理な話よ。 

 冬山つばさより。


覆面作家~ストーカーからの手紙 (了)

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