第5節:Ⅱ【激白――グラディオ❷】
「確かに、運はねぇな。だって、やっと抽選に当たった日に仲間を失っちまうんだから」
薄暗いダンジョンの中、グラディオの激白は続く。
「普段と同じ様にダンジョンの抽選に行く前に、皆で鍛錬に森へ出てた時だった。仲間たちがやられた。そいつは魔王と名乗った。仲間はあいつの力で一瞬にして消えた。ブラックホールにでも飲み込まれたみたいに、一瞬だった。俺は仲間の助けで何とか危険地帯からは抜け出せたが、戻った時には何も残ってなかった。走る為に捨てた装備諸共何もかも吸い取られてた!」
グラディオが拳を壁に叩きつけ、その衝撃で土が降った。
「その日の抽選結果が当たりだった事も、仲間は知らない。もし知ってたら、夜は宴会でも開いてただろうに!」
グラディオが再び壁を殴り、彼はその痛みで我に帰る。
「悪いな、驚かせちまった。本題に戻ろう。このパーティには入れられたってのが一番正しい表現だろうな。仲間を失ってすぐに、ギルドから知らせが届いた。このパーティには入れってな」そこで、先ほどまでとは打って変わり、彼の顔つきが少し柔らかくなる。「まぁ、メンバーはいい奴だし、良いんだが」
「何言ってるのよ」とインチーナが照れ、グラディオが笑顔を浮かべる。
「やっぱり、馬鹿な奴は良い奴だ。」
それはかつての仲間に対していったものの様に思えたが、インチーナはそれに気付かず怒った。そして、ピロフォリアが適当にそれを宥めた。
しんと静まり返ったダンジョン内で、唯一の光源であったカンテラの明かりが消える。
「俺は、あいつらの敵討ちがしたい。今の俺の夢は、それだ」
グラディオは少し涙声になっていた。
彼の痛みはきっと僕たちには知る事は出来ない。分かるなんて絶対に言ってはいけないとも思う。
ただ、触れてはいけないと思っていたグラディオの過去に触れ、それでも、僕らを信じてくれるなら――
暗闇の中で、僕らは手を繋いだ。
「まずは、このダンジョンをクリアしましょう」僕は言った。「クリアして、グラディオさんの仲間たちの第一の夢を叶えるんです」
何故、そんな事を言ったのかはこの時はあまり考えなかった。
「そうね、しょうがないから私も付き合ってあげる」インチーナも言う。
「私もです」ピロフォリアも言う。
「第一の夢を叶えたら、その後の事を相談しましょう、皆で」
全員で約束をして、僕らはダンジョン探索を再開した。
ピロフォリアの魔法で光の戻ったカンテラに照らされた僕らの顔は、とても良い顔をしていたに違いない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます