第21話
2回戦の相手は
啓城戦を前に、俺たちは1回戦の試合を確認していた。啓城は1回戦で
「エースの
「適度な荒れ球になると厄介・・・ていうわけね。で、総合的にはどうなの?」
「おおよそのプランはできています。バッティングは練習通りにボールをよく見ること。啓城の守備はエラーが少なく堅実ですが、外野の守備範囲が狭く、ヒットゾーンがやや広めですので、強振して外野に強い打球を放つと、長打になる可能性が高いです」
「・・・なるほど。次は打線の方を確認したいわね」
啓城の試合を観戦し、ビデオに録画した近藤さんが小林監督にこう言っている。
「次は野手の方を確認したいと思います。ベストオーダーは1番から9番まで左打者右打者を交互に並べたジグザグ打線です。打線はあまり強力ではありませんが、3番の
「なるほど・・・」
「ただ、特に足の速い選手はいない感じだったので、配球はなるべく低めに集めて、守備はオーソドックスなスタイルがベストだと思います。バントの構えが来たら内野は前に前進して、アウトを確実に1つ取る」
「ありがとう。近藤さんのデータはとても参考になったわ」
近藤さんは少し、照れるような表情をしていた。しかし、新聞で啓城のベンチ入りメンバーを確認したら、相手は全員3年生だ。しかもこっちは全員1年生。・・・正直言うが、勝てそうな相手ではない。で、
「しっかり打って、しっかり守って、そしてしっかり勝つ。いいわね」
小林監督の言葉で、ミーティングは終わった。
◇ ◇ ◇
試合当日の朝、俺は小林監督から耳を疑うようなことを言われた。
「あ、そういえば今日の先発、伊藤くんに任せるから」
俺は「何でですか!?」と監督に問い質す。すると小林監督は「できるだけ水野くんを休ませたいし、何より、このチームで一番球が速いのは伊藤くんなのよ」と言ってきた。そして、2回戦のスターティングオーダーが発表された。1回戦から打順を大幅に変更し、1番から9番まで左打者と右打者が交互に並んだジグザグ打線になった。そして俺は、先発投手ということを配慮してからなのか、1番から6番に打順が下がった。
・・・しかし、スタメンに左打者が多いということはおそらく、左腕エースの宮崎さんではなくて、右の大島さんか関口さんが先発だろうと小林監督は予想しているんだろうな。
◇ ◇ ◇
「佐野さん、今日はよろしくお願いします」
「おう。しかし、キャプテンが先発ピッチャーって大変だな」
ダグアウト裏で、啓城主将の
啓城の先発は小林監督の予想通り大島さんだった。背番号10の控え投手ながら、最速140km/hのストレートと、数種類のカーブが武器の本格派右腕だ。主将同士のじゃんけんには勝った。よし、幸先いい。じゃんけんでもなんでも、勝てるものには勝たなくてはいけない。
「監督、先攻ですか?後攻ですか?」
「後攻め」
監督と確認し合った結果、今回は後攻を選択した。しっかり守ってペースを掴み、裏の攻撃に繋げたい。・・・という意図なのだろうか。そして俺はブルペンで肩を作り、試合直前になると、平野と今日のゲームプランについて話し合った。
「じゃあ、さっきの打ち合わせ通りに行こうか」
「おう。じゃあ俺は初回から球数ケチらず、目いっぱい行くよ」
初回から全力で。それが今日の俺たちのゲームプランになった。俺たちの力がこの格上に通用するかどうか。うん、やってやるさ。
そして、俺たち東高ナインは全員で一斉に試合開始の整列に走っていった。
◇ ◇ ◇
STARTING LINEUP
啓城高校(先攻)
1番
2番
3番
4番
5番
6番
7番
8番
9番
名古屋東高校(後攻)
1番
2番
3番
4番
5番
6番
7番
8番
9番
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