第20話
試合当日。愛知県大会1回戦、VS西海高校。わが名古屋東高校野球部の初陣だ。
主将のお仕事、じゃんけんに勝って、小林監督は先攻を選んだ。苦手とみられる守備を先にやらせよう・・・という作戦なのかもしれない。
西海の先発投手は、予想通りエースの藤井さんだった。対する名古屋東の先発は、小林監督が前日に予告していた通り、エースの水野だった。お互い左投手を先発に予想していたのか、両軍のスタメンは右打者が多い。そして、俺は練習試合で主に打っていた4番ではなく、1番センターとして試合に出場することになった。
◇ ◇ ◇
1回表、名古屋東の攻撃。まず俺は右バッターボックスに向かう。西海先発の藤井さんは3年生で左のサイドスロー。左打者は球の出所が見えにくく、かなり苦労すると思う。ただ、俺は右打者。左投手には・・・滅法強い。
とはいえ、藤井さんのカーブなりフォークなり、変化球を仕留めれば相手に相当なダメージを与えられそうなのだが、あいにく俺は変化球打ちは自信がなかった。次の松原や松村の方が巧いくらいだ。失敗したら相手に余計な自信をつけさせてしまう。ここは安全策で、素直にストレートを狙うことにした。
初球のカーブは見送り、次のフォークはボールとなった。3球目はストレートだったが、三塁側スタンドに入りファールボール。これで1ボール2ストライクと追い込まれた。そして4球目・・・
初球のストレートが甘く入ってきた。――これを見逃す手はない!強振する。
打球はレフト方向へぐんぐん伸びていった。そしてスタンドイン。文句なしのホームランだ。名古屋東、いきなり先制。
◇ ◇ ◇
その後も名古屋東は小刻みに点を加え、7回を終え5対2。名古屋東のリードは3点まで広がった。
名古屋東は1回裏に逆転を許したが、3回表、名古屋東は松村と平野の連続タイムリーで2点を取り、再び逆転。6回表にはこの回から登板した西海の2番手・安藤さんから上田が2ランホームランを放ち、2点を追加した。
何分、西海の守備が酷かった。少し難しいところに転がせばヒットになってしまうし、ファンブルもポロリも結構やらかした。ただ、さすが進学校と言うべきなのか、そういう守備に慣れているのか、いったんミスするとそれを取り返そうと無理せずに、被害を最小限に抑える術を持っていた。
そして、名古屋東の先発・水野は1回裏に西海4番の大塚さんに逆転2ランを浴びるが、その後は立ち直り、7回2失点でマウンドを降りた。
◇ ◇ ◇
8回裏、水野から変わった2番手の鈴村がピンチを作っていた。1点を返され、なおもノーアウト満塁。一塁ランナーが還れば逆転という場面である。そして迎えるバッターは西海の4番・大塚さん。名古屋東の内野は当然、ホームゲッツーを取りに行くというシフトだ。
初球、大塚さんの打球はレフト方向へ大きな当たりを運んでいった。しかし、わずかに左へ切れファール。そして、2ボール2ストライクとなった5球目・・・
大塚さんの打球はショート・松村の真正面に転がった。松村はホームへ投げまず1アウト。そして、平野が一塁に投げ2アウト。なんとか併殺に仕留めることができた。しかし、まだ2アウト2,3塁。一打同点のピンチである。そして続く西海の代打・
なんとかボールをキャッチすることができた。そして、一塁側に陣取っていた名古屋東応援席から大声援を受けることになった。
「伊藤くん、ナイスプレー!」
「優太、今のプレー最高だったよ!」
小林監督と、この試合で記録員を務める紗奈からもこのファインプレーを褒められた。
そして、名古屋東は9回表に2点を追加し、その裏を鈴村が締めてゲームセット。7対3で名古屋東高校は初戦を突破したのであった。
◇ ◇ ◇
STARTING LINEUP
名古屋東高校(先攻)
1番
2番
3番
4番
5番
6番
7番
8番
9番
西海高校(後攻)
1番
2番
3番
4番
5番
6番
7番
8番
9番
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