第12話

「1年6組の石原紗奈です。マネージャーとして野球部に入りたいんですけど・・・」




入学式当日、紗奈が野球部のグラウンドにやって来て、小林監督にマネージャーをやりたいと直談判した。小林監督は「あなた・・・確か去年の文化祭で見た、伊藤くんの彼女でしょ!?」と紗奈に言ってきた。紗奈は「いや・・・違いますって!」と言ってきたが、俺はすぐに小林監督に呼び出された。そして、俺と紗奈と小林監督による三者面談が始まった。




「石原さんは今から行う面接に合格したらマネージャーとしての入部を認めます。伊藤くんも同席するように」


「監督!面接なんて聞いてませんよ!それに何で、俺も同席しなければいけないんですか!?」


「何でって・・・伊藤くんと石原さんはどんな関係なの?」


「え?どんな関係って・・・あいつとは、同じマンションに住む幼なじみです」


「そうなの?羨ましいわ・・・」


「羨ましいって・・・」


「な、何でもないわよ!これから石原さんと面接するから、伊藤くんは練習に戻って!」


「何でさっき、紗奈の面接に同席しろって言ったのに、すぐ戻らないけないんですか!?」


「・・・いい?これは監督命令よ。監督に逆らったら、あなたはこれからどういう扱いを受けるかわかってるわよね?」


「・・・はい」




俺は小林監督から言われた通り、練習に戻る。一方の紗奈は小林監督に連れられ、ネット裏にある監督室に入った。




◇ ◇ ◇




「では、これから面接を始めます」




私は小林監督に連れられ、ネット裏にあるプレハブ小屋に入った。ちなみに入り口には、『監督室』と書かれた札が貼ってあった。




「まずは石原紗奈いしはらさなさん、なぜ野球部のマネージャーになろうと思ったんですか?」


「元々野球が好きで、高校生になったら本格的に野球と関わっていきたいなっと思って、最短の近道である、マネージャーとして、野球部へ入部することを決断しました」


「わかりました。では、好きなプロ野球チームと選手を教えてください」


「好きなチームは東京スパイダースで、好きな選手はスパイダースの川原かわはら選手と山根やまね選手です。OBですと、宮森みやもりさんのファンでした」


「・・・名古屋でスパイダースのファンは珍しいですね。ちなみに、私はドジャースのファンです。では、家族構成を教えてください」


「両親と、小学6年の妹がいます」


「続いての質問です。野球部のマネージャーという仕事は体力的にも精神的にも大変ですが、3年間やり抜く自信はありますか?」


「はい」


「最後の質問です。本校の野球部は部内恋愛が禁止ですが、それを守り抜くことはできますか?」




え!?何それ、ちょっと聞いてないよ・・・そんなこと。大体私、優太のためにマネージャーになろうと思って入ろうとしたわけなんだけど。でも、別に他の男漁りにマネージャーになろうとしたわけじゃないから・・・




「はい、大丈夫です」


「・・・わかりました。しばらくは仮入部という段階になりますが、入部を認めます。石原さん、面接お疲れ様でした」




私が無事、マネージャーとして名古屋東高校野球部への入部が認められた瞬間だった。




◇ ◇ ◇




夕方、練習が終わると俺は早速スマホに手を出した。LINEを見ると、一足先に帰宅していた紗奈からメッセージが届いていた。




『優太、今から大切な話があるの!』


『私、マネージャーの入部面接受かった!』


『でも、まだ仮入部の段階なんだけどねー』


『それに、恋愛禁止だって言われた・・・』




俺は紗奈からのメッセージを確認し、『よかったな』というメッセージを送ったのは言うまでもない。そして・・・





それから数日後、紗奈の他に2人、女子マネージャーが入部し、俺たち野球部員は計3人の女子マネージャーのお世話になることになったことも書き足しておこう。

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