第7話

試合の方は、高木と碓氷、左右の両エースによる投手戦だった。お互い走者もほとんど出さず、三塁を踏ませない完璧なピッチング。まあ、本来なら怪我しなかった俺がエースになるはずだったんだけどね・・・




そして0対0のまま、7回表、紅組最後の攻撃を迎えた。ここまで紅組2安打、白組3安打という試合内容。ちなみにこの試合は延長戦が行われない。7回終了で同点なら引き分けということになる。そして、紅組は4番の岩井から攻撃が始まる。


先頭の岩井はフォアボールで出塁したが、続く5番田中はショートゴロ。ゲッツーになりかけたが、田中は間一髪セーフとなりゲッツーとはならなかった。そして6番の中村はレフトへツーベースを放ち、1アウト2,3塁。岩井はホームへ突っ込もうとしたが、岩井の足が遅かったのか、それとも川口の肩が強かったのか、岩井は慌てて三塁に戻った。


続く7番加藤は空振り三振。2アウト2,3塁で8番横山に打順がまわる。横山は碓氷の140km/h前後の速球に苦戦し、なんとかファールで粘っていた。そして、粘ってフルカウントとなった10球目・・・


横山が放ったあたりは、レフトへの強烈な打球だった。2人が還り、最終回でついに紅組が2点を先制。打った横山も二塁まで到達した。そして、9番高木に代わって岡本おかもとまどかが打席に立った。




岡本おかもとまどか。このチームでは唯一の女子選手で、身長は160cmに満たない。それに、体力面も技術面も男子とはかなり差の開きがある。しかし、持ち前の明るさと可愛さでチームを盛り上げてくれる存在だ。




しかし、岡本は何とかバットに当てることができたものの、サードゴロに倒れ、紅組の攻撃は終了。紅組は代打の岡本がそのままセンターに回り、センターの須田はライトに、そしてライトの若林が7回裏のマウンドに上がった。


実は言うと、若林は小学校の時はピッチャーだった。理由は簡単。左投げだから。しかし中学校になってからは、俺がいたし、碓氷や高木もいたから、ほぼ外野手となり、投手としては3番手か4番手になってしまった。


大村コーチから投手での起用を告げられた若林はかなり動揺していた。そして投球練習で肩を作る時も表情がぎこちない。まあ、強肩の外野手で中学野球界では割と有名だったから、投球自体はそこそこ良さそうなのだが・・・




最終回、2点を追う白組の攻撃は5番の山本からだった。山本はデータがほとんどなく、しかも苦手な左投手である若林の投球に苦戦。結局空振り三振で倒れてしまった。しかし、続く6番鈴木がセンター方向に強い当たりを放つ。打球はセンターを守る岡本の頭を超え、岡本が必死に打球を追っている間に鈴木はベースを一周し、ランニングホームラン。白組が1点を返した。そして7番の石川が左中間に打球を飛ばし、スリーベース。これで1アウト3塁となり、一打同点の場面で8番の宮崎に打順が回る。しかし宮崎は初球、スクイズを決めようとしたが失敗し、飛び出していた石川が挟まれタッチアウト。これで2アウト、白組の攻撃はあと1人となった。ヤバい。


結局、宮崎はフルカウントまで持ち込んだ結果、センター前へヒットを放ち、2アウト1塁。そして9番の碓氷に代わって俺が打席に立った。

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