第6話

秋。




日が暮れるのがめっきり早くなり、朝晩は特に涼しくもなった。10月に入ると制服も冬服に変わり、俺たち中学3年生は高校受験に向け、残り少ない中学生活を送っている・・・




というのは、俺以外のヤツら。




野球推薦で名古屋東への入学が早々と内定した俺は、塾通いの紗奈たちを横目に、暇を持て余していた。元々、シニアチームも秋の大会が終わると、3月初めまでシーズンオフになる。これは高校野球でも同じだ。その間、俺たちは何をしていたかというと、夏に向けての体力作りである。


そんなわけで、金はない。遊び仲間はいない。暇だけは存分にある。という結構な身分の俺は、さりとて怠けるわけにもいかず、余った時間を体力強化に使っていた。




いつも通り朝6時に起床すると、朝食の前にストレッチと約10kmの走り込み。これで大体1時間くらい。そして朝食をとって学校に行く。


で、学校を終え帰宅すると、夕方の4時くらいから夕食まで、素振りと筋力トレーニング、走り込みを繰り返し続けるという練習をしていた。で、夕食を食べたら風呂に入って夜の10時か11時には寝る。


そして土日は東名シニアのグラウンドに出向き、3年生同士で朝から夕方までみっちり練習をする。そんな生活を俺は送っていた。




そして11月も下旬となり、シーズンオフに突入すると、東名シニア3年生の引退試合が行われた。




◇ ◇ ◇




東名シニアの練習時間は、通常は土日祝日の朝9時から夕方の5時まで。それと平日に自主練習がある。監督もコーチも優しい人ばかりで、怒号が飛び交うことは、まずない。反面、別の意味で大変厳しく、練習で手を抜くとその時点で退場。その日は参加させてもらえない。遅刻やサボりは当然、厳禁。さらに言葉遣いや練習態度が悪い、そして学校での成績が追試になるほど悪いと、どんなに実力があっても、どんなに大事な試合でも使ってもらえない。




『チームの勝ち負けよりも、選手への人間教育を徹底し、一人前の人間として扱う。そして、指導者も自らを律する事を要求する』




それが東名シニアの方針だった。




◇ ◇ ◇




朝の9時までには、チームの全員が集まっている。遅刻するとレギュラーといえども試合に出られないので、みんな必死だ。そして、監督が全員集まっていることを確認すると、全員で一礼をし、準備運動をみっちり行う。




そして準備運動と、試合前のウォーミングアップが終わると、3年生の引退試合が始まった。日曜日ということもあって、父兄の数が多い。当然俺の両親もいる。そして紗奈も。


ちなみに今年度は、3年生が20人いるので、3年生同士での紅白戦となった。引退までの1年間を丸々リハビリに費やした俺は、白組でベンチスタートだった。そして、両チームのスタメン発表が行われる。紅組は大村おおむらコーチが、白組は西田にしだコーチが指揮をとる。




そしてこの試合、球審を務める青山監督の「プレイボール!」という掛け声とともに、3年生の引退試合が始まった。




◇ ◇ ◇




STARTING LINEUP


紅組(先攻)

1番 須田すだ 左/左 センター

2番 井上いのうえ 右/右 ショート

3番 若林わかばやし 左/左 ライト

4番 岩井いわい 右/右 ファースト

5番 田中たなか 右/左 レフト

6番 中村なかむら 右/右 サード

7番 加藤かとう 右/左 セカンド

8番 横山よこやま 右/右 キャッチャー

9番 高木たかぎ 左/左 ピッチャー


白組(後攻)

1番 内田うちだ 右/左 セカンド

2番 近藤こんどう 右/右 ショート

3番 川口かわぐち 右/左 レフト

4番 安達あだち 右/右 サード

5番 山本やまもと 右/左 ファースト

6番 鈴木すずき 右/右 センター

7番 石川いしかわ 右/左 ライト

8番 宮崎みやざき 右/右 キャッチャー

9番 碓氷うすい 右/右 ピッチャー

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